「集団的自衛権の行使」 を認めるべきでない

ジャーナリスト 池田龍夫 2014.2.14
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  安倍首相は2月10日の衆院予算委員会で、集団的自衛権に関し 「例えば北朝鮮が米国を攻撃し、 国際社会で経済制裁を行う時に北朝鮮に武器弾薬が運ばれている(とする)。 (日本が)輸送を阻止できるのに阻止しなくていいのか」 と述べ、行使容認に向けた憲法解釈見直しの必要性を改めて訴えた。 同時に首相は、政府の 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」 で進む議論について、 「相当限定的になされている」 とも強調、憲法上の問題がクリアされた場合でも、運用は抑制的になるとの認識を示した。

  秋の臨時国会で関連諸法規改正を企図する政府
  政府の安全保障政策に関わる重要な意思決定で、これに伴い法改正も予定しているため、拘束力の強い形で政府見解を確立する狙いからだ。 ただ、閣議決定には全閣僚の署名が必要で、行使容認に反対する公明党の太田昭宏国土交通相の対応が焦点になりそうだ。
  首相は2月5日の参院予算委員会で、集団的自衛権の行使容認に向け想定する手順について、 @ 憲法の解釈変更 A 行使のための根拠法の整備 B 行使するかどうかの政策的判断――の3段階と説明した。 具体的には、政府の有識者会議が4月にまとめる提言を踏まえ、与党内調整を経て6月22日までの今国会中に解釈変更を閣議決定。 秋の臨時国会で自衛隊法など関連法の改正を目指すとみられる。

  法制局長官に外務官僚……異例の抜擢に驚く
  安倍首相は2013年8月8日、外交官出身の小松一郎氏を内閣法制局長官に抜擢した。 従来法務畑の人材が起用され、内閣の法制の事務を担当してきた。 小松氏が外務省国際局長などを歴任したとはいえ、異例の人事と批判する声が強い。 安倍首相が集団的自衛権容認のために起用したのではないかとの疑念からだ。 小松局長は検査入院中といわれ、2月12日の衆院予算委員会には横畠裕介次長が参考人として代理出席。 「政府の憲法、法令解釈に関し、一般論としては 『従来の解釈を変更することが許されないというものではない』 と説明、 『集団的自衛権の問題も、一般論の射程内だ』 と答弁している。長官の考えを代弁したもので、安倍首相擁護の姿勢が感じ取れる。

  自民党総務会でも批判相次ぐ
  東京新聞2月12日付夕刊によると、「内閣法制局は(これまで)解釈改憲による集団的自衛権の行使容認には否定的だった。 1983年2月の衆院予算委では角田礼次郎長官(当時)が 『憲法上認めたいという考えがあり、それを明確にしたいということであれば、 憲法改正という手順を当然探らざるを得ない』 と答弁している」――解釈改憲≠ナ強引に押し切ろうとする安倍首相の意図が垣間見える。
  2月13日付 JIJIcomは、「自民党総務会で、集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈変更をめぐる安倍首相の国会答弁に批判が相次いだ」 と特報した。 それによると、「村上誠一郎元行革担当相は 『首相の発言は選挙に勝てば憲法を拡大解釈できる。 その時々の政権が解釈を変更できることになる』 と非難。村上氏の主張を、野田毅党税調会長が 『正面から受け止めるべきだ』 と支持し、 船田元・憲法改正推進本部長も 『拡大解釈を自由にやるなら憲法改正は必要ないと言われてしまう』 と指摘した。 自民総務会大荒れの様相だった。野田聖子総務会長はこの後の記者会見で 『誤解を招くことがないよう(首相に)提案したい』 と述べた」 という。

  注目される公明党の対応
  これに対し、与党の公明党も 「現状の憲法解釈を今直ちに変えなければいけないという認識は持っていない」 (井上義久幹事長)などとして解釈変更に反対する構えを崩していない。国民の多くも 「解釈改憲への動き」 に警戒を深めている。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。