気がかりな 「アベノミクス」 の動向

ジャーナリスト 池田龍夫 2014.2.17
目次

  為替変動、金利操作などが複雑に絡む景気動向の判断は極めて難しい。エコノミストの見方もまちまちで、素人は戸惑うばかりだ。

  黒田東彦日銀総裁の金融緩和政策に注目
  安倍晋三首相は昨年3月、アジア開発銀行総裁の黒田東彦氏を日銀総裁に起用した。アベノミクス推進のためと観測されている。 日銀には総裁と2人の副総裁のほか政策委員が6人いる。

  政策委員の一人が、先行きを懸念
  日経新聞2月1日付朝刊に掲載された 「日銀政策委員インタビュー」 は興味深かった。 日銀の木内登英委員がインタビューに応え、消費税率引き上げを控え市場でくすぶる追加緩和について 「経済や物価が多少下振れする程度では、追加策による副作用が効果を上回る」 と慎重な姿勢を示した。 また昨年4月に導入した量的・質的金融緩和は、2015年春をメドに 「緩和継続や縮小の是非を慎重に判断すべきだ」 と語った。
  木内委員の提案は日銀内では少数意見のようだが、黒田総裁ら中心メンバーも追加緩和はひとまず不要との認識を示しつつも、 2年過ぎても物価上昇率が2%で安定するのに必要な時点まで緩和を続けたい考えという。

  米国の経済政策が世界に影響
  真壁昭夫信州大教授は講談社の電子書籍 「現代ビジネス」(1月23日号)で、 「黒田総裁が追加緩和策は不要と言い切った背景には、追加策というカードを温存しておきたいとの意図がありそうだ。 4月に消費税率が引き上げられて、景気が大きく落ち込むようなケースで、そのカードを切らざるを得ないとの読みも考えられる。 あるいは、中国や欧州などの海外経済のリスク要因が顕在化して、金融市場全体がリスクオフに傾き、円高が進むときにも、 日銀は追加緩和策を求められることは明らかだ。その時、日銀は追加緩和策を切り札として使うことができる。 もう一つ気になるのは、米国のルー財務長官が、円安傾向の進展に懸念を表明したことがある。 米国が、円安・ドル高を真剣に懸念する段階ではないと見られるものの、 財務長官とすれば、ドル高のスピード調整をしておきたいと考えていることだろう」 と分析している。

  消費税アップ後の庶民の生活は?……
  米国のサジ加減が、世界の経済に大きな影響を与えていることは、まぎれもない事実。 この変化をどう読み取るか、金融当局にとって難しい局面が当分続きそうだ。今のところ円安誘導の効果もあって株価上昇など景気は上向きだ。 4月からの消費税3%アップ前の駆け込み需要がかなり認められる。しかし、各企業・商店は4月からの対応に腐心している。 特に庶民の生活がどうなるか先行きが心配だ。政府の適切なカジ取りが望まれる。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。