安倍首相 「靖国参拝」 の波紋収まらず

ジャーナリスト 池田龍夫 2014.2.24
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  パフォーマンス過剰か、「アベノミクス」 の追い風≠ノ乗っていた安倍晋三政権に、やや陰りが見えてきた印象が強い。 昨年末の靖国神社参拝が国際的批判を浴び、国内でも首相は釈明に追われ、自民党内の批判も顕在化して先行きの展望は難しい。 4月からの消費税引き上げが国民生活にどう影響するか、ここ2、3カ月の動向が気になる。

  2月21日付本欄・磯村順二郎氏の 「壊死が進行する社会」 との痛烈な指摘に、全く同感である。 安倍首相の独断と偏見に 「殿ご乱心」 と諌める人物がいないばかりか、権力をバックに側近が暴言・放言する時代風潮が嘆かわしい。
  中でも、2月16日の衛藤晟一首相補佐官(自民党参院議員)の放言は言語道断だ。 「米国が(首相の靖国参拝につき)『失望』 と言ったことに我々の方が失望だ。米国は同盟関係の日本を大事にしないのか」 と言ってのけた。 19日、菅義偉官房長官の指示で発言を取り消したものの、日米関係の溝はさらに深まりそうだ。

  首相側近発言 自省なき批判通らない
  北海道新聞2月21日付社説は、「首相の靖国参拝は近隣国との関係を悪化させ、国益を損なうものだった。 その反省もないまま、他国の見解を批判するとは見当違いだ。
  衛藤氏は 「米国は同盟関係にある日本をなぜ大事にしないのか」 とも述べた。 『米国は日本が何をやっても擁護するのが当然だ』 と言わんばかりのおごりと甘えがある。 首相を含め、政権幹部らは自らの立場をわきまえ、国内外に与える影響をよく考えて発言すべきだ。 (中略)日米同盟の有無にかかわらず、米国は自らの国益に沿って行動するものだ。日本の動きが米国の国益に反するなら自重を促すだろう。 首相の靖国参拝はアジアの国際関係を不安定化させ、米国にとって不利益であるから支持できない。 それが 『失望』 の真意だと理解できなければ、安倍外交はあまりに拙い。
  原因は首相の認識の甘さだ。首相は靖国参拝を 『私人の立場』 と説明している。 トップが公私を都合良く使い分ける態度をとれば、周囲への影響も避けられない。 首相は第1次政権で、自分に親しい 『お友達』 を周囲に集め、批判を浴びた。その教訓が生かされていない。 首相周辺の軽率な発言は、緊張感のなさの表れとも言える」 と論評していたが、その通りだ。安倍政権の失政は果たして収まるだろうか。

  「保守的な国家主義者」 と、米国の世論は厳しい
  オバマ大統領や米国の世論の反発を強めている。朝日新聞2月20日付朝刊によると、ワシントン・ポスト紙は17日、 論説副委員長の記事で安倍首相を 『保守的な国家主義者』 と表現。多くの国に存在する 『保守勢力』 ではなく、 より批判的で愛国主義的な意味合いが強い言葉を使い、『靖国参拝は日米の関係をひどく損ね、 米中の間よりも意思疎通のギャップが大きくなった』 とした。題名は 『日本の挑戦的な動き』 だと、従来になく厳しく論評していた。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。