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助けてください ! 田中裁判の東京高裁公判(10/14)の傍聴席を満席にするために

2026年9月3日

  野原 光 (広島大学・長野大学名誉教授、長野大学元学長)

 田中さんは、長野大学で起こった不正の解明を当局に求めて、逆に処分されました(2022)。内部告発者の処分です。処分を不服とした訴訟は長野地裁で敗訴し (03/27) 、控訴して最初の公判が10/14に東京高裁で開かれます。専門家によると、大学教員処分の裁判で、この地裁判決は、最悪の三つに入ります。またあるベテラン弁護士によると、10/14法廷は、裁判官に本気でこの事案に取り組むように働きかけるラストチャンスです。

 現代の社会制度は会社や役所など、様々な組織の組み合わせですが、このうち大学だけは、上命下服の官僚制ではなく、構成員の討論と合意に基づく意思決定という民主主義を、たてまえ上、組織の原則としてきた珍しい組織です。だがこうした異質な組織を内部に抱えていることは、命令一下、日本経済の地盤沈下の回復—軍学協力による防衛産業の急速な拡大等—に向かって、社会全体が突き進むうえで、大きな障害になります。だから何としても大学を他と同じ上命下服の官僚組織に作り替えなければならない。

 こうして国立大学独立法人化(2004)以降、学校教育法改正 (教授会自治の否定2014)、国立大学法人法改正 (大学の上に新しい最高意思決定組織を新設 2023)と、国は着々と大学の統治構造を変えてきました。日本学術会議法の改正 (2025) もその一環です。他方で内閣府に設定された科学技術イノベーション会議 (CSTI) は、科学技術政策推進の「司令塔」と自称しています。この下に全国の大学・研究機関を階層的に組織して、命令一下一元的に突き進む、これが政府と経済界の描くグランドデサインです。

 この大学秩序はまだ誕生期にあるから安定していない。しかもこの秩序の活動原理は、上命下服の官僚制の原理です。ですから、執行部外からの内部告発という自発的な動きは、これに反するものとして、どんな些細なものでも、始まりにおいて潰しておかなければならない。だから田中裁判は、地方大学でのローカルなトピックにとどまりません。

 もう一つ、田中裁判の地裁判決の顕著な特徴は、争点の問題 (内部告発の当否) には全く踏み込まず、手続き問題に視野を限定して、その当否だけを論じるという点です。手続きだけでなく、問題そのものの当否にまで踏み込んでもらうことが、裁判官に本気になってもらうということです。ですが、問題が重要であればあるほどこれは難しい。

 少し前ですが、パリ・コミューン (1871) は人類史上初の、市民自治の共和国です。短命でしたが、その残党狩りの裁判を見ると、市民自治の理念・実践の当否は、一切裁判の主題になりません。パリ・コミューンを、もっぱらならず者の騒乱と見なし、抗戦中の「火つけ」や「窃盗」に視野を限定して裁いています。現代では、障碍者施設「やまゆり園」の事件(2016)です。この裁判でも、大量殺人を生んだ植草被告の動機・背景を争点化することは回避されました。なぜなら、被告に行動を促した優生思想は、私達を捉えている暗黙の社会通念で、厄介だからです。

 こうしてみると、田中裁判も、高裁で手続き論に終始しては、先行きが暗い。しかし、問題そのものを取り上げることは、市民的正義の守り手たる裁判官にも、とてもエネルギーのいることです。だからこそ、裁判官への後方支援として、高裁の傍聴席を満席にしたい。皆さんのご支援をお願いします。

註:田中裁判の10/14は、東京高裁にて、13:30より東京地裁・高裁ビル825号法廷で開かれます。傍聴はどなたでもできます。

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