ブックレビュー 

日隅一雄弁護士
  『マスコミはなぜ 「マスゴミ」 と呼ばれるのか』
補訂版 現代人文社

梓澤和幸(NPJ代表)


  ネットやシンポでの発言が、ある種カリスマ的な熱を帯びた人気を呼んでいる、日隅一雄弁護士(NPJ編集長)が、マスゴミ本の増補版を出した。
  原発報道でマスコミへの信頼を失ったという声は、少なくない。購読している全国紙をやめたという話も聞く。なぜこんなメディアなのか。 日隅弁護士は、ただ、記者のやる気や、経営者の姿勢を糾弾してもだめという。
  日本にメディアの独立性を担保する仕組みがないところをついた。堅実な本だが、すでに三刷を重ねたという事実に驚く。 加えて、増補版が出た。そのポイントは、東電福島第一原発事故報道の批判、特に東電記者会見の模様と、その批判的解明である。 なるほどそうか! と、膝を打つ。
  1,890円(税込)で溜飲が下がり、そればかりでなく、メディア改革の見通しまで伝授されるとなれば、ヤスイ。おすすめ本だ。
  なお私は、NPJの代表であって、「おいおい、内輪褒めか。」 と言われるかもしれない。でもそんなことは関係なく、いいものはいいのである。 少し付け加えると、日隅さんは、ブログでも書いているが、闘病中。軽くはない病である。 「でも、原発への自分の闘いは弱かった。福島で苦しんでいる人に申しわけない。その人たちの辛さ、悲しさに比べれば、自分の病など小さなことだ。」 と、 日隅さんはインタビューで語った。その想いを込めた発言の記録と思えば、きっと書店で本書に手をのばしていただけると思う。