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いま 改憲問題のポイントをつく
―― 9条自衛隊明記と緊急事態条項の真実――

2022年7月31日


※音声が聞きづらくなっております。下記のレジュメを参考にしてください。
 

国分寺 市民憲法教室 補講

いま 改憲問題のポイントをつく

―― 9条自衛隊明記と緊急事態条項の真実――

2022年7月31日 梓澤和幸 弁護士 国分寺市民連合共同代表

第 1 章 はじめに

第 2 章 9 条自衛隊明記
1. 9 条の禁止内容
 ◎現行の日本国憲法第9条

第 9 条

① 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 

三つのことを禁止しています。
 戦争を放棄 ( ① 戦争の禁止)
 ② 戦力保持の禁止
 ③ 交戦権の禁止

 「 ③ 交戦権」とは交戦国に国際法上認められる権利 (たとえば、敵国の兵力、軍事施設を殺傷破壊したり相手国の相手国の領土を占領したり、中立国の船舶を臨検し、敵性船舶を拿捕する権利のことです。(芦部信喜「憲法」第六版 岩波書店67ページ)。

< 9 条が存在してきた意義>
 海外派兵への障壁  イラク戦争の事例
 専守防衛という抑制 田中角栄答弁
 集団的自衛権を行使しない。 岸信介答弁

2. 2012年自民改憲草案

第 9 条 (平和主義)
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

 第 9 条の 2 (国防軍)
1 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前 2 項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。

第 9 条の 3 (領土等の保全等)
国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

その特徴は次の通りである。
1. 9条 2項の削除 戦力の放棄、交戦権の放棄削除
2. 国防軍の設置
3. 軍法会議の設置
5. 徴兵制への足掛かり
6. 集団的自衛権の容認 自民党のQ&A 9問の回答

3. 9 条自衛隊明記はいつ登場したか。
・日本会議系シンクタンク機関誌「明日への選択」2016年 9月号伊藤哲夫論文
・その後2017年 5月 3日日本会議系集会への安倍元首相のメッセ―ジ
  自衛隊明記論のデビュー
  自衛隊を合憲化したい。
※自民党の中から保守層の意見を集約して出てきたというよりも右翼系の団体である日本会議から提案が出され、安倍首相 (当時) がそれを党内外に喧伝して2018年の党大会で 7つの案の中で素案としてまとめたのが以下の条文であると推察する。
 

<自民党憲法 9 条改正案>

第 9 条の 2

(第1 項) 前条の規定 (注 9条 1項 2項のこと) は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

(第 2 項) 自衛隊の行動は,法律の定めるところにより,国会の承認その他の統制に服する。

※第9条全体を維持したうえで、その次に追加

 

4. 自民党大会素案の検討
 憲法 9条の下では自衛戦争を含め一切の戦争はできないし自衛隊の軍事力も保持できない。
 そこで編み出されたのが専守防衛論集団的自衛権の否定論です。
 専守防衛の答弁でよく知られているのは1963年 9月23日の
田中角栄総理 (当時) の参議院本会議の答弁であり、集団的自衛権行使否定の答弁は1960年衆議院日米安保条約特別委員会における岸信介首相 (当時) の次の答弁です。

「集団的自衛権で典型的なものは──自分の締約国であるとか、友好国であるとかいう国が侵害された場合にそこへでかけていってそこを防衛する場合でありますけれどもそういうことは我々の憲法の下では認めておらないという解釈を私は持っております」

(岸信介首相は安倍晋三議員の祖父です。)

ところが自衛隊明記をするという改憲素案は次のようになっています。

<自民党憲法 9 条改正案>

第 9 条の 2

(第 1 項) 前条の規定 (注 9条 1項 2項のこと) は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

(第 2 項) 自衛隊の行動は,法律の定めるところにより,国会の承認その他の統制に服する。

※ 第 9条全体を維持したうえで、その次に追加

 すなわち、国の一切の軍事行動を禁じた9条1項2項があっても「必要な自衛の措置をとることを妨げない」というのが改憲素案の自衛隊明記条文です。
 いままでの政府解釈であれば田中角栄、岸信介答弁のように専守防衛、集団的自衛権行使禁止であるところ、必要な自衛の措置を妨げないというのです。
 必要な自衛の措置―自衛権―には、集団的自衛権を含むとするのが2012年改憲草案の解説につけた自民党見解です。

Q 9 戦力の不保持や交戦権の否認を定めた現行 9 条 2 項を削って、新 9 条 2 項で自衛権を明記していますが、どのような議論があった のですか?

 また、集団的自衛権については、どう考えていますか?

答え
 今回、新たな 9 条 2 項として、「自衛権」の規定を追加していますが、これは、 従来の政府解釈によっても認められている、主権国家の自然権(当然持っている権利)としての「自衛権」を明示的に規定したものです。この「自衛権」に は、国連憲章が認めている個別的自衛権や集団的自衛権が含まれていることは、言うまでもありません。
 また、現在、政府は、集団的自衛権について「保持していても行使できない」という 解釈をとっていますが、「行使できない」とすることの根拠は「 9 条 1 項・ 2 項の全体」 の解釈によるものとされています。このため、その重要な一方の規定である現行 2 項 (「戦 力の不保持」等を定めた規定) を削除した上で、新 2 項で、改めて「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と規定し、自衛権の行使には、何らの制約もないように規定しました。もっとも、草案では、自衛権の行使について憲法上の制約はなくなりますが、政府が何でもできるわけではなく、法律の根拠が必要です。国家安全保障基 本法のような法律を制定して、いかなる場合にどのような要件を満たすときに自衛権が 行使できるのか、明確に規定することが必要です。この憲法と法律の役割分担に基づいて、具体的な立法措置がなされていくことになります。

   日本国憲法改正草案 Q&A (増補版)
   https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/kenpou_qa.pdf
   自民党 憲法改正推進本部
   初版 平成24年10月発行、増補版 平成25年10月発行

① 自衛隊の合憲化 自衛隊の憲法的地位
 専守防衛、集団的自衛権行使の抑制というバリアをとる
② 集団的自衛権のフルスペックでの容認
③ 自民党12年改憲草案への第一歩とみるべきではないか。

<台湾有事と南西諸島の自衛隊ミサイル基地>
 南西諸島ってどこでしょうか。
 小学生の地図帳から地図を引用します。

    2022-05-18軍事基地化する南西諸島 ハンギョレ新聞社
   (http://japan.hani.co.kr/arti/international/43494.html)

第 3 章 緊急事態条項――いまの状況の中であらためてこの提案を見直したい

第 1 2018年 3月24日自民党大会でまとめられた素案は次のものです。

【緊急事態の条文案要旨】

73条の 2 (新設)
① 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体および財産を保護するため、政令を制定することができる。
② 内閣は、前項の政令を制定したときは、速やかに国会の承認を求めなければならない。

 自然または人為的原因による災害のときに内閣に立法権を与える国家緊急権の発動である。
 緊急事態条項とは国家緊急権発動であり憲法の一時停止です

 「戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置を取る権限を、国家緊急権という」

(「憲法」第 6版芦部信喜岩波書店376ページ)

 

第 2 ここで言われていること
① 大災害のときは、内閣が法律に代わる政令を定めることができるということである。
 まず災害とは何か。広辞苑では「異常な自然現象や人為的原因によって、人間の社会生活や人命の受ける損害」との定義がある。
 自然災害に限らないことに注意。
 立法例でも原子力災害対策特別措置法 2条一号の例
 「原子力緊急事態により、国民の生命、身体または財産に生ずる事態をいう」
国民保護法 2条 4項の事例
 「この法律において「武力攻撃災害」とは、武力攻撃により直接又は間接に生ずる人の死亡又は負傷、火事、爆発、放射性物質の放出その他の人的又は物的災害をいう。」
② 内閣は一夜の 政令で表現の自由、人身の自由、財産権を制限できる。
③ 国会の事後承認だけで事前の承認を要求しない。

第 3 ドイツ現代史から学ぶこと
 日本会議、統一協会と一部自民党政治家の関係を念頭にいれるとドイツのワイマール憲法のたどった歴史を再考する必要があると考えます。
 すなわち緊急事態条項―国家緊急権を組み込んだ憲法を持ったドイツの現代史を学ぶことの重要性を強調したい。

ワイマール憲法の国家緊急権規定
 経済的な困難と武装した元軍人の私兵組織があった。
 この私兵組織がナチスの親衛隊となる。

 ワイマール憲法は国民主権、男女平等、普通選挙権、生存権をうたう先進的憲法だったが、国家緊急権をうたう48条の規定が命取りになってナチス、ヒトラーの独裁への道を開いた。緊急事態条項は265回も発動された。(拙著改憲189ページ以下参照)

<ワイマール憲法 第48条。

 ドイツ国内において、公共の安全および秩序に著しい障害が生じ、またはそのおそれがあるときは、ライヒ大統領は、公共の安全および秩序を回復させるために必要な措置をとることができ、必要な場合には、武装兵力を用いて介入することができる。この目的のために、ライヒ大統領は一時的に第114条 (人身の自由)、第115条 (住居の不可侵)、第117条 (信書・郵便・電信電話の秘密)、第118条 (意見表明の自由)、第123条 (集会の権利)、第124条 (結社の権利)、および第153条 (所有権の保障) に定められている基本権の全部または一部を停止することができる。

 最大の痛恨事は1933年 2月27日の国会放火事件 (総選挙 3月 5日の直前) とワイマール憲法48条による大統領緊急令による共産党の禁止、共産党員1万人の逮捕である。
 選挙では それでも共産党は81人の当選をした。
 その後全権委任法の制定。

<全権委任法(1933年3月22日ドイツ国会可決)>

 前文 : 国会は以下の法律を議決し憲法変更的立法の必要の満たされたのを確認した後、第二院の同意を得てここにこれを公布する。

1. ドイツ国の法律は、憲法に規定されている手続き以外に、ドイツ政府によっても制定されうる。本条は、憲法85条第2項および第87条に対しても適用される。

2. ドイツ政府によって制定された法律は、国会および第二院の制度そのものにかかわるものでない限り、憲法に違反することができる。ただし、大統領の権限はなんら変わることはない。

3. ドイツ政府によって定められた法律は、首相によって作成され、官報を通じて公布される。特殊な規定がない限り、公布の翌日からその効力を有する。憲法68条から第77条は、政府によって制定された法律の適用を受けない。

4. ドイツ国と外国との条約も、本法の有効期間においては、立法に関わる諸機関の合意を必要としない。政府はこうした条約の履行に必要な法律を発布する。

5. 本法は公布の日を以て発効する。本法は1937年4月1日と現政府が他の政府に交代した場合、いずれか早い方の日に失効する。

 

ナチスのポーランド侵略は1939年 3月 1日である。

第 4 章 この困難な時代に憲法をどう考えて生きるか。
 私個人の家族史とウクライナで起こっていること
 何千万人の「忘れないで」という訴えに応えようとするとき、力が湧いてくる。

鄭香均 (チョン・ヒャンギュン )さんの言葉
 (東京都管理職試験国籍条項訴訟の原告)
※「差別の痛みを知る者として差別する側には立たない」。日本国籍がないことを理由に管理職試験受験を拒んだ東京都を相手取り、憲法違反だとして1994年に提訴した。在日韓国人 2世。10年余りに及ぶ裁判は一審敗訴、二審勝訴をへて最高裁で逆転敗訴した。最高裁では「憲法前文を読み、自殺から救われた」と話した。

 私は母の国を恨み、韓国人である父を恨み、何故結婚したのかと心の中で両親を絶えず攻撃し、私は混血の子どもはつくるまいと決意し、自殺することばかりを考えていました。
 しかし、中学二年生の時に憲法の前文を読み、違う考え方を持つことができるようになりました。
 全文を読んで私は侵略戦争による膨大な犠牲者への鎮魂歌であると思いました。

上告審 被上告人 (鄭さん) 意見陳述より
2004年12月15日大法廷

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