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【NPJ通信・連載記事】憲法9条と日本の安全を考える/井上 正信

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拝啓、安倍晋三様

2014年7月7日

拝啓、安倍晋三様。

今回の閣議決定はあなたの大いなる間違いではなかったでしょうか。

あなたはとにもかくにも閣議決定に徹底的にこだわりました。しかもその中に「集団的自衛権」という言葉を入れることにこだわりました。その挙げ句、閣議決定は、集団的自衛権だけではなく、国連の集団的措置(軍事的措置)、国際平和協力での自衛隊の行動を拡大(警護活動や治安維持活動)、武器使用権限の拡大(任務遂行のための武器使用)、グレーゾーン事態での自衛隊の有効活用など、これまでの自民党が議論してきた防衛法制の改正メニューがほぼ全部出揃っています。

ところで、これまで防衛法制は内閣法制局(公明党ではありません)がブレーキ役になり憲法9条の制約を意識しながら、それをわずかずつでもその制約を取り払ってきました。最近ではほとんど目立たないくらいの条文の改正が行われました。あなたが初めて総理大臣になってから自衛隊法第3条を改正したことや、みじめな政権投げ出しでいったんは政治生命を失ったあなたが生まれ変わって二度目に総理大臣になり、さっそく昨年自衛隊法第84条の3,第94条の5を改正したのはその典型的な例です。本当に「ちょこっとした」改正なので、マスコミも世論も問題性をほとんど意識しなかったのです。

ところがあなたは、大仰な閣議決定にこだわったため、「ちょこっとだけよ」というカモフラージュが出来なくなってしまいました。これからあなたが国の姿を変えるため何をしたいのかを天下に知らしめたのです。あなたは「国民の命と平和な暮らしを守りぬくのだ」と力説しました。でも私も多くの国民も「眉に唾をつけて」あなたの説明を聞いたのです。あなたが力を入れれば入れるほど、私達は引けてしまうのです。

あなたはとても自分のこだわりに執着する人だと思います。あなたが初めて総理大臣になった時に、あなたは6つのことにこだわりましたね。自分の任期中に総理大臣として靖国神社へ参拝すること、自分の任期中に憲法を改正すること、憲法解釈を変更して集団的自衛権を行使すること、教育を「改革」すること、日本版NSCを創設すること、秘密保護法を制定することでした。憲法改正手続法、教育基本法改正はやり遂げましたね。ここまではずいぶん無理をなさったのだと思います。そのためかあまりにもあなたが短命で総理大臣のいすを投げ出したため、せっかく作った安保法制懇はあなたに報告書を出せませんでしたし、せっかくあなたが出した日本版NSC法案は廃案になりましたし、秘密保護法は法案作成作業にすらかかれませんでしたし、靖国神社へ参拝もできませんでしたね。たぶんこれがあなたにとって一番残念無念な出来事だったと拝察します。

あなたのこの強いこだわり、執着心は、あなたが二度目の総理大臣になってから現在までのあなたの行動を支配しているようです。教育委員会制度を改正しましたね。昨年12月26日に靖国神社へ参拝しましたね。秘密保護法と日本版NSC法を制定しましたね。同じメンバーの安保法制懇を同窓会のように再結集して、報告書をご自分へ出させましたね。国民投票法を改正して施行しましたね。そして閣議決定・・・・。

あなたのこの強い執着心は、日本の周りの国のことすら見えなくしているのではないかと思います。日本にとって中国と韓国は今までも、これからもずっと大切な隣人です。あなたが靖国神社へ参拝すれば、中国・韓国との外交関係は絶望的になるのは、あなた以外の誰もがわかっていたことです。あなたの側近といわれる人は誰もやめなさいとは言わなかったのでしょうか。人間は5歳くらいになれば、周りの人のことを考えて行動できるようになるものですが、あなたの強い執着心は、幼児的でもあります。あなたが成長できなかった一人の大人なら、何も問題はありません。でもあなたは内閣総理大臣なのです。

あなたは異常なくらい物事を急いでいます。あたかもあなたが初めて総理大臣になって1年で内閣を投げ出したことにトラウマを負っているように。デマまでふりまいて強引に物事を進めようとしています。そう、あなたは私がこれまで知っている日本の政治家の中で最もひどいデマゴーグ政治家です。

あなたは昨年9月ブエノスアイレスで開かれたオリンピック招致委員会へ乗り込んで、福島原発事故は完全にコントロールされている、放射能は港湾内に封じ込められていると、日本人ならだれも信じない嘘を世界中に向かって言い放ちましたね。昨年春には、国民に憲法を取り戻すのだと、突然憲法96条の改正を言い出しましたね。たった3分の1の国会議員が反対すれば、国民は憲法改正の機会を失うのだという理由で。でも今度の閣議決定ではあなたは「私が最高責任者だ」と言いながら閣議決定をしました。国民の大半は反対しましたし、ほとんどの国民は国民を置いてきぼりにしたと考えました。これは憲法を国民の手から奪ったのではないでしょうか。「憲法を国民の手に取り戻すのだ。」というあなたの主張は、その場限りの言葉の綾に過ぎなかったのでしょうね。

6月15日の記者会見、7月1日の記者会見で、日本が戦争に巻き込まれないための集団的自衛権だと力説しましたね。私にはなぜそうなのか理解不能です。集団的自衛権は、日本が攻撃されていないにもかかわらず他国間の戦争に参加することなので、どうしてそう言い切れるのでしょうか。あなたは7月1日の記者会見で、「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからもけっしてありません。」とか「日本が再び戦争をする国になるということは断じてありえない。」と文字通り断言しました。あなたが総理大臣をおやめになった以降も「決してありえない」とどうして言えるのですか。

あなたは閣議決定後の記者会見では、一番肝心な質問にお答えになりませんでした。閣議決定を説明するあなたのお話は、私たち国民を「平和と安全の受益者」と描こうとしました。それに続く記者会見では、北海道新聞の記者や、AP通信の記者から、自衛隊員も血を流すことになるのではないか、もしかすると犠牲を伴うかもしれない、国民にはどのような覚悟がいるのか、と質問しました。この質問は、総理大臣のあなたにもそれ相応の覚悟があるのですか、という質問でした。しかしあなたはこの質問には何も答えませんでした。

私は閣議決定を、あなたの断言したこととは逆の読み方をします。閣議決定にはあまりに嘘とごまかしが多いからです。「恐れ」を「明白な危険」と変えてどれだけの違いがあるのでしょうか。なぜ「自衛権発動の三要件」をわざわざ「自衛の措置の三要件」と言い換えるのでしょうか。これではあなたが大見えを切って否定した国連の集団的措置へ武力行使で参加できることになるでしょう。現に閣議決定についての想定問答集では、この三要件に該当するなら参加できると説明していますよ。「自衛の措置」などと、いかにも自衛権行使だと国民に思わせたい魂胆が見え透いていますね。

閣議決定のどちらが正しい読み方なのかは、国民が判断するでしょう。私はあなたが大ウソをついていると思いました。

私が許せないのは、憲法が制定されて67年間で営々と先輩たちが築いてきた日本の国のかたちを、このような嘘とごまかしでつくりかえようとしているあなたのあさましい魂胆です。

安倍晋三様、あなたは閣議決定を実行するための多くの法律を改正したり、新しい法律を作る準備を進めていることでしょうね。閣議決定がこれまでの政府憲法解釈と基本的なことは何ら変わらない、海外派兵は一般的には許されないとの原則は変わらないと、あたかもこの閣議決定は「ちょこっとだけ」変わるかの印象を振りまいたあなたのことですから、いきなり大幅な改正をせず、「ちょこっとだけ」の改正から始めるのかもしれません。しかしあなたがそのような姑息な方法をとったとしても、閣議決定で大騒ぎを起こしたのですから、どんなに「ちょこっとだけ」の法律改正と見せかけようとしても、私たち国民はその狙いに気づかないとお思いでしたら、いささか国民をなめていると思いますよ。

私たち国民は、あなたが閣議決定したことが大きな戦略ミスであったと思い知らせてあげるでしょう。多くの国民はすでに気づき始めているのですから。

いささか長文になりましたが御容赦を。

井上正信 拝

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