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安倍首相の「新国立計画は白紙」発言の波紋
安倍晋三首相は7月17日、2020年東京五輪・パラリンピックでメーン会場となる新国立競技場の建設計画について「白紙に戻し、ゼロベースで見直す」と述べ、巨大なアーチ構造を特徴とするデザインを含め、抜本的に見直す方針を表明した。19年秋のラグビー・ワールドカップ日本大会までの完成を目指していたが、同大会での使用を断念。新たな整備計画を早急にまとめ、20年春の完成を目指す。
安倍首相は見直しの理由について「コストが予定より大幅に膨らみ、国民、アスリートから大きな批判があった。このままではみんなに祝福される大会にすることは困難だと判断した」と説明。「1カ月ほど前から計画を見直せないか検討してきた」と明らかにし、「間違いなく完成できると確信できたので(計画白紙化を)決断した」と強調した。
首相は17日、首相官邸で五輪組織委員会会長で日本ラグビー協会名誉会長も務める森喜朗元首相と会談し、見直しへの協力を要請した。
政府は、女性建築家ザハ・ハディド氏による2本の巨大な「キールアーチ」構造を特徴としたデザインを採用したが、建築技術上の難しさから総工費が14年の基本設計時を約900億円上回る2520億円に膨らむ要因となっていた。政府は同デザインを白紙に戻して半年以内に国際コンペを行い、新たなデザインを決める。
支持率低下の歯止めになるか・・
下村博文文科相は官邸で記者団に、「ハディド氏の案を見直しても大胆なコストダウンは難しかった」と語った。総工費の見通しに関しては「今後検討したい」と述べるにとどめた。
首相の「白紙」発言の背景には、支持率低下をこれ以上増幅させないようとの思惑が垣間見える。果たして人気浮上につながるだろうか。
池田龍夫 (いけだ・たつお) 毎日新聞OB
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