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【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

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この時代、私たちに活路はあるか~安倍内閣を倒すしかない

2017年3月15日

一安倍政権打倒の大集会?一

 総がかり行動実行委員会は2月14日、稲田防衛相の辞任要求行動、2月21日、稲田防衛相、金田法相の辞任要求行動を国会議員会館前で開催した。いずれも議会開催中の国会議員がいるであろう昼の12時から午後1時までの開催だった。集まりにくい時間帯の行動であるにもかかわらず、14日は400名、21日は「秘密保護法」廃止へ!実行委員会と共催で450人があつまり、市民の怒りが高まっていることを実感した。
 行動の最中、1人の年配の女性が私を呼び止めて、自分の持っているプラカードを示して「これで大集会をやりましょうよ」と声をかけてきた。みると「安倍政権打倒」と書いてあった。とっさに私は「いまもやっているじゃない」と答えたが、彼女は首を振って、「いろいろ問題を言うんじゃなくて、安倍打倒1本に絞った大集会」だという。
 この女性の気持ちは良くわかるが、いま、「安倍政権打倒」と銘打って、どれだけ情勢に影響力ある集会ができるだろうか。問題はどうしたら安倍政権を追いつめ、倒すことができるかだ。
 韓国のパククネ政権退陣要求の大運動などを見ていると、日本でもそうした運動ができないものかとは思う。首相の妻の安倍昭恵がらみの大阪の森友学園などにまつわる疑惑は韓国のパク政権の疑惑に匹敵するほどの問題なのかも知れないとも思う。
 この通常国会での稲田朋実防衛相、金田勝年法相の答弁のデタラメぶりは、両閣僚の即刻辞任に値する大問題であるし、安倍首相の任命責任にも関わることだ。南スーダンの自衛隊に関する資料隠しや、共謀罪問題で右往左往した答弁にはあきれ果てる。安倍政権の国会審議における対応はこのところ、全く緊張感がない。両院で与党が3分の2以上確保している奢りから来る「なんでもあり」の緩んだ政治姿勢が反映している。
 これらを糾弾する大きなたたかいをつくることが必要だ。

一安倍首相の際限ない対米追従と悪政一

 米国のトランプ政権の誕生に際して、安倍首相のとったスタンスは国際的には笑いものになっている。
 ヒラリー当選の読みが外れて、あわてて当選直後に駆け付け、大統領就任後にもいの一番に訪米し、ゴルフに興じた今回の日米首脳会談のさまは、どうみてもトランプの「アメリカ ファースト」に追従した「日米同盟 ファースト」だ。欧州各国はもとより、保守党が政権を握ったイギリスのテリーザ・メイ政権と比べてさえ、安倍首相の対米追従ぶりは際だっている。安倍首相は米国の司法当局すら認めなかったトランプの「イスラム7カ国からの入国制限」を「アメリカの内政問題だ」といって、事実上擁護した。
 従来、安倍晋三政権が売り物にしてきた「価値観外交」は米国で大統領が交代してその政治的価値観が大きく転換した現在、どうなるのか、聞いてみたい。「軍用機の価格を下げて頂いてありがとう」とトランプに礼を言ったとか。安倍首相は恥を知らない。自分は昔から「アメリカ ファースト」だったとでも言いたげだ。
 しかし、トランプ政権は早々とTPPからの離脱を表明し、これをしゃにむに推進しようとした安倍政権は窮地に立たされた。対中国包囲網の形成を柱とした安倍政権の対アジア外交も容易ではない。韓国との関係でも「少女像」問題に絡んで駐韓大使を引き上げたまま間もなく2ヶ月に及ぼうとしている。日露交渉はデッドロックにのりあげたように停滞している。日米共同声明で安倍首相が固執した「尖閣」の問題では台湾が抗議している。ミサイルを提供しようとしたフィリピンには断られたという話も広まっている。
 経済問題でもアベノミクスがうまくいっているという話を信じる人はあまりいないだろう。あるのは格差と貧困の拡大と一部富裕層への富の集中だ。日経平均株価がジグザグしながら2万円近くになっても経済に好況感は全くない。アメリカのトランプ政権の不安定な自国第1の経済外交政策がどう影響してくるのか、社会に不安は増大している。

一改憲に本格的に踏み出す安倍自民党一

 自民党は3月5日に党大会を開き、そこで「平成29年度運動方針」を決める。メディアによると、その中で憲法改定については「憲法改正原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」と明記され、従来にもまして改憲着手に踏み込んだ方針になっている。報道では「発議」とまで踏み込んだ文言は安倍晋三首相(党総裁)の意向で盛り込まれたといわれ、首相の改憲実現に向けた強い意志を反映したものといわれる。
 方針には憲法施行70周年を踏まえ、「次の70年に向けて新しい憲法の姿を形作り、国会の憲法論議を加速させ、憲法改正に向けた道筋を国民に鮮明に示す」と明記された。方針では、その具体化にあたり「これまでの衆参憲法調査会以来の運営理念を継承し、議論を尽くし、幅広い合意形成を目指す」とし、改憲問題での野党との対話を重視する姿勢を特記した。その一方で、世論や民進党などの反発を考慮し、前年の運動方針では触れていた「自民党憲法改正草案」に言及していないことも特徴だ。こうした一部野党への「配慮」は、自民党がいよいよ改憲発議の現実的な方針をとりだしたことの現れでもあり、極めて危険な動きでもある。
 この運動方針のスタンスは、第193通常国会の安倍首相施政方針演説の最後の部分が基礎になっている。そこで安倍首相は「憲法施行70年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる70年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか。未来を拓く。これは、国民の負託を受け、この議場にいる、全ての国会議員の責任であります。世界の真ん中で輝く日本を、1億総活躍の日本を、そして子どもたちの誰もが夢に向かって頑張ることができる、そういう日本の未来を、共に、ここから、切り拓いていこうではありませんか」と自己陶酔した大仰な演説をした。
 行政府の責任者が、国権の最高機関である国会に向かって、改憲へのとり組みを要求すること自体が大問題だが、安倍首相にとっては、「3権分立」や「立憲主義」などはどこへやらだ。
 すでに明らかにされている自民党の改憲項目の論点整理では、野党を改憲論議に引き込むために従来の自民党の改憲項目を絞り込み、野党が主張する論点も盛り込んで議論を進めようとしている。自民党が主張する「大災害などに備える緊急事態条項」や「9条への自衛隊の明記」などに加え、公明党に配慮した「環境権など新しい人権」、維新の主張である「教育の無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置」などをならべ、さらには民進党などが首相の解散権濫用を批判していることに乗って「衆院解散権の制限」や、先の参院選で批判があった「合区の解消」などまで並べている。自民党が野党を取り込んで本格的に明文改憲に着手しようとしてきたことで、改憲問題が現実化してきたことに注意をはらう必要がある。

一なぜ、安倍政権の支持率は高いのか一

 しかし、問題なのは、このような対米追従と改憲の安倍政権がマスメディアの世論調査では高支持率を得ていることだ。
 一部のメディアの調査では支持率の上昇傾向さえ見られる。朝日の最新調査でも支持率は52%で、不支持の25%を大きく上回っている。支持の理由は「他よりよさそう」が48%だ。日米会談については「評価する」が54%だ。自民党の支持率も37%で、民進党の7%を大きく離している(共産党は3%)。
 このような状況の中で、今年、秋かも知れないと言われている総選挙で、私たちはこの安倍政権を退陣に追い込むことができるだろうか。
 何よりも必要なことは、閉塞した社会の中で、政治を託せるのは「安倍政権しかない」「安倍がそれなりに頑張っている」と思いこまされている有権者に、それに代わる「希望ある」勢力の登場を示すことができるかどうかだ。

一活路はどこにあるか一

 活路は2つの課題での前進だ。
 1つは安倍政権の悪政に反対する市民運動の大きな盛り上がりをつくることだ。
 本稿の冒頭に書いたある女性の意見もこうした闘いをつくり出すことへの願いだ。必要なことは単に「安倍打倒」を叫ぶことではなく、安倍政権の悪政の1つ1つに反対する具体的な闘いを発展させ、それらを大合流させ、文字通り総がかりで安倍政権に反対することだ。
 もう1つはこの市民運動の高揚を背景にして、総選挙で安倍与党の改憲発議可能な議席である3分の2を阻止し、自民党の過半数割れをつくり出し、安倍政権の政治的敗北を実現し、退陣に追い込むことだ。

 昨年の参議院選挙の32の1人区の11勝の経験は、「希望」ある「敗北」だった。
 これらのところではいずれも野党4党(最近では維新などの与党亜流と区別して「立憲野党」と呼ぶことが多い)が候補者を1本化して、市民と一緒に闘った。これらの選挙区のいたるところで野党4党+市民の構図がつくられ、市民が支持できる政策協定がむすばれ、与党に対抗して闘った。野党4党の支持率を合計しても、与党の支持率にとうてい追いつかないのに、選挙戦においては野党4党が推した候補者が勝利し、あるいは接戦を演じ、健闘した。これは人びとから見て、自公の候補に代わるもう一つの「力ある政治勢力」が登場しつつあるように映ったからだ。実際、市民が加わって闘った選挙は、従来の選挙戦と比べて、新鮮で、魅力があった。安倍政権与党の候補が「他よりよさそう」と見えなかったのだ。
ここに「希望」がある。

一次期総選挙で勝利すること一

 この「希望」ある運動を次期総選挙で実現するかどうかだ。
 総選挙は475議席(うち比例代表は180、小選挙区は295議席)だ。2014年の総選挙では小選挙区で立憲野党4党は48議席で、自民党は222議席、公明党9議席だった。
 報道機関の調査では、もしも立憲野党4党が統一候補を立てることに成功するなら、野党4党の合計が自民党、公明党を上回るのは61選挙区になる。
 野党は109議席で、比例区が前回どおりと考えても、自公は265議席で3分の2に届かず、うち自民党単独では233議席で過半数を割ることになる。他の調査では1万の差程度も含めれば立憲野党は90選挙区で勝利できる可能性があるという。当然、これらの動向は比例区にも反映するので、比例区が前回どおりということはありえない。
 この野党が安倍自民党に勝利するためには候補者1本化は絶対条件だ。
 「本気の共闘」ということが言われているが、野党各党が市民と連携して候補者の1本化、統一を実現することだ。いま、それをめざして、全国各地の小選挙区においては野党との共闘をめざす「市民連合」が誕生しつつある。この新しい市民運動の流れを促進することが重要だ。その上で、立憲野党4党+市民連合によって、従来なかったような市民自身が選挙運動の主体になった市民的な選挙戦を展開し、野党候補を勝利させることだ。
 まず、与党の3分の2を阻止する。そして自民党の単独過半数割れをつくり出すことだ。これが実現すれば安倍政権の政治的敗北であり、重大打撃を与えることができる。まさに倒閣の可能性がうまれる。
 市民運動の高揚と総選挙での躍進、このたたかいを車の両輪のように推進することにこそ活路がある。
(許すな!憲法改悪・市民連絡会会報2月25日号所収 高田健)

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