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森友学園…幕引きは許されない

寄稿:飯室 勝彦

2017年3月15日

 学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる疑惑追及は、2017年3月10日に法人が小学校設置認可の申請を取り下げたことで新たな節目を迎えた。
 ちょうど同じ日、政府が南スーダンの国連平和維持活動(PKO)からの陸上自衛隊撤退を発表したのは、まるでメディアと国民一般の関心の矛先をかわし、疑惑追及の幕引きを図るため“見えざる手”が働いているかのようだ。
 他方で大阪府の松井一郎知事は小学校の設置認可を条件付きで「認可適当」としたことについて「国の要請を受けたものだった」との認識を示している。

 前近代的、超国家主義的な教育を目指す学園が破格な優遇を受けてきたのはなぜなのか-疑惑は深まるばかりだ。追及を中途半端で終わらせてはならない。国会とメディアに課された責任は重い。

 国有地を借り手の言うなりに近い安い地代で貸し、転じて売却となると前例より大幅に安い価格にし、さらに地中からゴミが出たからと8億円も値引きしてただ同然で払い下げた。買い主がなすべき割引のためのゴミ撤去費算定は経験もないのに役所が肩代わりした。

 森友学園への国有地売却では財務省などがさまざまなサービスを行った。まさに特別扱い、いずれも普通の民間人には思いもつかない手続きやルールが駆使されている。役所が積極的に知恵を提供したのだろうと考えるのが普通だ。
 小学校の設置認可手続きも異例だった。大阪府の私学審議会は2015年1月の臨時会で「条件付きで認可するのが適当」という答申をまとめたが、松井知事は17年3月13日「当時、国からは国有地の売り渡しを審議会に諮るため小学校の認可の見込みを発表してくれと言われた」と語り、「国有地売却を早く進めたい国の要請を受けたものだった」という認識を示した(3月14日NHK NEWS WEBhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20170314/k10010910151000.html)。

 「民間人に対してはふだん素っ気ない官僚がなぜそんなに親切だったのか」という疑問が浮かび、「背後で大きな力が働いていたのではないか」と推測するのも自然だ。

 役人の間では「○○案件」という言葉が使われることがある。役所として無視できない政治家○○の意向に沿って対処することが求められる案件を指す。森友学園に対する国有地売却の経過をみると○○案件だったのではないかと思わざるを得ない。
 
 民進党など野党は「政治家の働きかけがあったのではないか」「少なくとも役人が政治家の意向を忖度するような状況があったのではないか」と追及している。
もしそうだとすれば行政の中立性の逸脱であり、国民に対する裏切りである。

 森友学園の籠池泰典理事長が安倍晋三首相と思想的に近い団体の有力メンバーであり、新設予定の小学校でも超保守的なその思想に沿った教育を目指していることはよく知られていた。首相夫人の昭恵さんは学園経営の幼稚園で講演し、教育方針を高く評価した。「主人も素晴らしいと思っている」と語ってもいる(「風評に配慮 価格非公表」=3月3日付朝日新聞朝刊等)。

 財務省が言うように政治家による口利きは本当になかったのか、あったとすればどの政治家なのか。いまだ事態の真相は分からない。しかし新設予定の学校に予定された「安倍晋三記念小学校」の名称とか昭恵夫人の講演映像など一連の報道から首相との関わりでとらえた人も少なくない。

 だが、財務省は「政治家の働きかけはなかった」「一連の売却手続きは適法だった」と言い張るばかりで、「書類は残っていない」という。これでは検証のしようがないではないか。「誰かを隠している」「誰を守ろうとしているのか」という疑問が浮かぶのは当然だ。

 見逃せないのは安倍首相が「疑惑があるという側に立証責任がある」(3月1日、参院予算委の答弁など)という態度で、解明に積極的姿勢を見せないことだ。首相は「(疑惑不存在の)証明を求めるのは悪魔の証明を求めるものだ」という趣旨の答弁(同)もしている。
 これでは逆である。行政は透明でなければならない。説明責任を負っているのは政府の側であり、国民が納得できるよう資料を残しておかなければならない。未解明な点を積極的に調査する責任もある。

 「政治家などの働きかけはなく、手続きは適正だったが関連文書は残っていない」との答弁を繰り返す財務省理財局長の態度は、やましさを自認しているとみられても仕方あるまい。

 「妻は私人なんです。まるで犯罪者扱いするのは不愉快です」という首相答弁(同前、参院予算委)で火がついた、昭恵夫人の公人、私人論争では、役人が首相を懸命にかばおうとするかのようだった。
 幼稚園での講演に首相官邸職員が同行したことを「勤務時間外の私的行為」と説明した(3月3日、衆院国土交通委での土生栄二内閣審議官の答弁)。「妻は私人」という首相の主張に辻褄を合わせた形だが、さすがに無理があり、後に政府見解を改め「公務」と認めざるを得なかった(菅義偉官房長官に同月8日の会見)。

 昭恵夫人は首相夫人とはいえ公的地位についておらず公人とは言い切れない。しかし、首相夫人としての影響力は大きく、しかも夫人の活動は公務員によるチームにサポートされている。純粋な私人とは言えない。

 公的地位になくても、その職業、立場、地位、活動などによって社会に対して一定の影響力を有する人は、「公的人物」「公的地位者」として純粋な私人とは異なった評価、扱いを受ける。公人に近いモラル、節度ある言動を求められることもある。
 首相夫人としての高い知名度ゆえに多数の団体、イベントの名誉職を引き受け、活発に活動している昭恵夫人はまさに公的人物といえよう。その言動がメディアや国会で議論されるのは当然だ。

 真相は依然として闇の中だ。むろん予断は慎まなければならない。しかし、校舎建築契約書の偽造、補助金の不正受給、計画を推進する理事長の経歴詐称など次々新たな疑惑が浮上し、「こんな怪しげな法人に、なぜ国有地の格安売却が急いで行われたのか」と国民の不信感は高まるばかりだ。

 その矢先の小学校設置認可の申請取り下げで、盛り上がった追及の動きに水を差され、肩すかしを食わされた観がある。小学校新設は森友学園の籠池理事長が長年心血を注いできた事業だけに、あっさり撤退したのは多くの人にとって予想外だった。疑惑解明の勢いをそぐための何らかの圧力がなかっただろうか。

 加えてこれまた突然、南スーダンから自衛隊撤退の発表である。韓国の憲法裁判所による大統領罷免のニュースも重なって、この日の報道では森友学園問題のニュース価値は相対的に低くなり、事態は沈静化に向かうかのような空気も出てきた。

 これらはまったく偶然なのか。それとも何らかの“見えざる手”が関係しているのか。これまた謎である。

 森友学園をめぐってはさまざまな疑惑が浮かんでいるが肝心の点は何ら解明されていない。むしろこれからだ。
 政府が責任ある調査をすべきなのはもちろん、メディアの責任も重大だ。粘り強い、強力な取材報道で国民の信頼に応え、権力チェックの使命を果たさなければならない。
 幕引きは許されない。

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