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「希望の裁判所~私たちはこう考える」

2016年12月5日

飯室さんから「日本裁判官ネットワーク」による新著のご紹介文を寄せて頂きました。
司法改革の評価、今後については様々の議論があるところです。
その議論のわかれは念頭においた上で、現役裁判官の発言には注目したいところなので、
飯室さんの書評をここに掲載します。
                                     編集部

 
 
                                   飯室 勝彦

 現職の裁判官、裁判官OB、趣旨に賛同した市民である、いわゆるファンらにより「日
本裁判官ネットワーク」が設立されたのは1999年だった。目的は「開かれた司法の推進と
司法機能の充実強化に寄与する」ことが目的で、「もの言う裁判官の誕生」と注目された。
 それだけにネットワークによる前2作、「裁判官は訴える~私たちの大疑問」(講談社)
「裁判官だってしゃべりたい~司法改革から子育てまで」(日本評論社)は「裁判官がやっ
と声を上げた」とのニュアンスで受け取られがちだったが、今度の本は司法改革で変わり
つつある司法の現場を見つめた報告である。
 
タイトルから「司法に対する希望表明、あるいは注文」と受け取りがちだが、編集・出版
の趣旨はむしろ逆であり、司法改革を肯定的にとらえているのが特徴だ。前書きに記され
ているように、「裁判所をはじめとした司法が希望であり、希望は司法改革によってもた
らされたものであることをアピールし、希望が今後も大きくなるように、さらなる司法改
革を心から訴える」のが狙いだという。
 人事制度の改革で裁判官の人事がかなり可視化されたこと、裁判員制度の導入で刑事裁
判が劇的に変わったこと、法科大学院教育の導入、法曹人口の増加で弁護士と市民の間の
距離が縮まったこと―など内容は広範で多岐にわたるが、総じて裁判所、裁判が「激動」
といえるほど変わったと認め、現職判事の一人は「裁判官の職業としての魅力がとみに高
まっている」と言い切っている。
 
 問題は若い裁判官や司法修習生の多くが今の制度、運用を当たり前のようにとらえてい
ることである。長期間にわたる先人の改革努力があってこそたどりついた改革であり改善
だが、若い法曹が現在の司法を所与のものと思っていてはさらなる改革は生まれない。

弁護士増加に対する弁護士の抵抗で司法試験合格者が当初の計画のようには増えず、それ
が大きな理由で法曹を目指す人たちが減っていることも不安材料だ。将来の司法を担う法
曹がもっと増えなければせっかくの司法改革が中途半端になりかねない。

 この本の狙いの一つはその点にもあり、法曹を目指す法科大学生、大学生らに司法の魅
力をもっと感じ取ってもらいという。

 もちろん改革はまだ途上にあり制度上も実務上も残された課題は多い。その意味で本書
の内容には異論もあるだろうが、ネットワークのメンバーはいまの司法の変化を前向きに
とらえており、「絶望してはいられない。さらに前へ」という思いが本のタイトルに結び
ついたという。

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                    編集・日本裁判官ネットワーク
                    発行・弁護士会館ブックセンター出版部LABO
                    発売・大学図書
                    定価・2500円+税

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