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ダニエル・エルズバーグ著 「国家機密と良心」 書評

2019年6月17日

                       日本人への忠告
                                                 飯室 勝彦

 ダニエル・エルズバーグ氏と言えばベトナム戦争の闇をめぐる秘密文書、いわゆるペンタゴンペーパーズを暴露したことで知られている。その本人が、刑事罰を覚悟の上で不正告発に踏み切るまでの葛藤、決断を語った『国家機密と良心』を読むと、告発が単なる思いつきに基づく跳ね上がり的行動などではなかったことがよく分かる。
 彼が少年時代から培ってきた論理的思考力、鋭い洞察力、正義感、そしてそれらの蓄積の結果としてたどり着いた非戦・非暴力の思想が、国家権力の威嚇をはね返す原動力になった。彼が唱えるのは空理空論ではない。具体的に明らかにされる、国際的な政治・軍事情勢、とりわけ核をめぐる豊富な情報は、世界の危機が決して抽象的未来などではないことを読む者をして納得させる。

 厳しい目は日本にも向けられ、憲法第9条に関する情勢分析は鋭く正確だ。その背景に世界一の軍事、いや核大国であるアメリカの存在を見出しているのはもちろんであり、日本もアメリカの核戦略に巻き込まれていることがはっきりする。「平和国家でないどころか、核の超大国であり、隠然たる帝国としての存在があまりにも明白なアメリカとの密接な関係によって、非暴力の理念は価値を切り下げられ、弱体化される一方だった」という指摘は正しい。
 残念なことにそのアメリカに迎合、憲法を空文化しようとする政治勢力が日本の内閣を構成し、各種世論調査によれば内閣支持率も一定の高さを維持しているのが現実だ。
 それだけにエルズバーグ氏は巻末で日本の人たちに対する忠告を綴っている。
 「日本がめざすべき道は、憲法第9条から託されているように、紛争の非暴力的な解決を基本として、あらゆる不測の事態の解決に立ちむかう国々の一員になること」
 「日本の皆さんは、自分たちの憲法に書かれたその条項を誇りに思う権利がある」
 「第9条の存続に向けて懸命に奮闘する、これが愛国心の基本的なありかたであるはず」

 「第9条を誇りに思う権利」に異議はないが、さらに一歩進めたい。第9条を守り実現することは、唯一の被爆国民の”義務”だと考える。著者が言う通り「いまならまだ方向を反転させ、大多数の日本人が半世紀をこえて支えてきた憲法の諸原則に立ち戻ることも可能」だ。

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