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「兵器を買わされる日本」 東京新聞社会部

2020年1月24日


                         評者:飯室 勝彦


 
 社会部記者たちが税の流れを追い、無駄遣いや政財界の利権を追及している調査報道キャンペーン「税を追う」のうち、防衛費の闇に切り込んだ部分の書籍化である。
 「税を追う」では、沖縄県辺野古における新しい米軍基地建設のための工事、東京五輪予算、医療費など幅広いテーマを取り上げ、納税者の目線で批判的に検証してきた。キャンペーンはいまも続いているが、2019年の日本ジャーナリスト会議 (JCJ) 賞を受賞した。書籍化にあたり追加取材し改稿した。

 第2次安倍政権の発足以来、日本の防衛費は右肩上がりで5兆円を超えた。なかでも際立つのが首相官邸主導による巨額な米国製兵器の購入だ。この本では、自動車に関する関税引き上げの脅しで兵器購入を迫るトランプ米大統領の戦略、軍事上の必要性よりもトランプ氏のご機嫌取りのため官邸主導で兵器を爆買いすることで現場では何が起きているか、に肉薄する。
 高い買い物をしながら支払いを先送りする「後年度負担」という事実上の “兵器ローン” は積もり積もって5兆3000億円、メーカーではなく、米政府が購入の交渉相手となる「対外有償軍事援助」(FMS) では相手の言うなりの価格で文字通り「買わされ」ている。
 次々と高額兵器を買わされる一方で防衛省の台所は火の車。取引先の国内メーカーや商社に代金の支払い延期要請をしたこともあるという。
 兵器には市場価格というものがなく、いまや聖域化している防衛費の使い手にはコスト意識がない。だから米軍が銃1丁あたり46万円 (ドルから換算) で調達している機関銃に327万円も払ったりするという、驚きを通り越して怒りがわき上がる例も紹介されている。
 粘り強い、緻密な取材、調査で掘り当てた事実の数々は「戦争のできる国」を目指して安倍首相が打っている布石とも言えよう。「日本のいま」を考えさせる本だ。ジャーナリストの手になるだけに文章が平易なのもいい。
  (文春新書 850円+税)

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