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接待、会食・・・根底に特権意識

寄稿:飯室勝彦

2021年4月10日


 高額な接待を平然と受けたり、国民が忍耐を強いられているコロナ禍の中で深夜まで宴会をしたり・・・・・・官僚たちの不祥事が次々発覚している。支持率低下に悩む菅政権は「公務員のモラル低下」と対応に慌てふためいているが、“モラル” という中途半端なとらえ方に惑わされてはいけない。根底にあるのは官僚の「特権意識」だ。

◎一ヵ月の食費と同額
 総務省、農林水産省、文部科学省など官僚が豪華な接待を受けたり、“自粛破り会食” をしたりして続々報じられている。
 なかには驚くほど高額な接待もある。放送に関する権限を握る総務省幹部が放送関連会社である東北新社から受けた接待は一人あたり最高 7 万4000円の費用だったと伝えられている。この金額は総務省の家計調査による、3 人暮らしサラリーマン家庭の食費 1 ヵ月分とほぼ同じだという。当事者は目の前に並んだ豪華な料理、高級アルコール飲料などにためらいを感じなかったのだろうか。

 「応分の負担はした」と弁明した官僚もいるが、その金額は 5,000円とか 1 万円。「接待」との批判をかわすための取り繕いであり、かえって後ろめたさの表れと言えよう。企業が許認可権を握られている官僚を招いたのである。学生のコンパ代 + α でまかなえるような酒食のはずがない。それは本人も十分知っていて一種の「アリバイづくり」をしたと言えよう。

◎感染防止策を無視し
 多人数による会食を避ける、あるいは飲食業の営業時間を短縮するなど、新型コロナウイルスの感染防止対策を無視した会食も各地で明らかになった。なかでも驚かされたのは厚生労働省の職員23人が居酒屋で深夜まで人事異動に伴う送別会を開いていたケースだ。

 その日は東京都が飲食店に営業を午後 9 時までにするよう時短要請している最中だった。しかし職員側は午後11時まで店が開いていることをわざわざ事前に確認して予約し、仕事を終えた後、入れ替わり立ち替わり訪れて送別会に参加したという。なかには店を閉めようとした店主を制し、深夜まで残った職員もいたという。
 厚労省はコロナウイルス問題に関して最も敏感であるべき立場だ。大勢で深夜まで会食することへの疑問を抱き、反対する職員はいなかったのだろうか。指導力を発揮して中止させるべき課長がむしろ主導的だったというのだからあきれる。

◎素早い処分で世論沈静?
 一連の問題で目立ったのは政府側の対応の早さだ。東北新社やNTTによる接待などを最初に報じた週刊誌側に確かな証拠を握られていたせいもあるが、これまでなかった素早さで関係者を懲戒処分したり更迭したりした。武田良太総務相は接待の実相の徹底調査を言明せざるを得なかった。そうした政府側の作戦が奏功したのかマスコミ報道も世論も沈静化した観がある。

 だが処分は基本的に倫理規定違反が理由であり、途中経過でわかった東北新社の放送法の外資規制違反の真相も不明なままだ。東北新社に務める菅義偉首相の長男が接待に関して担った役割も曖昧なままだ。携帯電話の料金などをめぐって総務行政と密接な関係があるNTTの頻繁接待の思惑などにも政権側はあまり関心を示さない。
 つまり問題をあくまでも「モラル違反」に封じ込めることを目指しているように見える。まして高額接待の裏にある疑惑をえぐり出そうとする意欲は感じ取れない。
 
◎おごり、高ぶりは御法度
 しかし「モラルの低下」ですまそうとするのは問題の矮小化だ。彼らの振る舞いからは「権限、地位に対する当然の対応だ」とか、「自分たちには許される」などといったおごりや高ぶり、特権意識がうかがえる。それらの払拭なしで小手先の改革をしても、倫理規定をいかに厳しくしても、不祥事はなくならないだろう。
 行政の仕事は何のため、誰のためにあるのか、自分の権限、職務は誰から何のために与えられたのか・・・・・・一人ひとりの官僚が公務の、そしてそれを担う公務員としての原点に立ち返らなければならない。

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