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【NPJ通信・連載記事】憲法9条と日本の安全を考える/井上 正信

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2022.1.7 日米安全保障協議委員会 (2 + 2) 共同発表文を読む

2022年1月26日


1 2 + 2 共同発表文の重要なポイント
 2022年 1 月 7 日、日米安全保障協議委員会 (日米の外務・防衛の閣僚協議、いわゆる「2 プラス 2」) は、共同発表をまとめました。
 この共同発表はわが国の安全保障・防衛政策の大きな転換点になるものです。ただ、これまでの日米間での積み重ねを踏まえたものですから、どのような意味があるのかにつき、私が理解している限りの解説をしましょう。

 共同発表文は 3 頁半の比較的短い文章ですから、ぜひお読みください。軍事用語については、太字体にしているものを末尾の用語解説でまとめて説明していますので、必要に応じて用語解説を見ながらお読みください。

2 重要な合意内容を以下にピックアップします。
〇国家戦略レベルから部隊戦術レベルに至る日米軍事一体化の深化
 これについては以下の段落が重要です。

 第 2 段落 いまだかつてなく統合された形で対応、戦略を完全に整合
 第 8 段落 日米でそれぞれ作成される戦略文書を、相互に調整しながら作成
  双方の戦略文書とは、米国側は国家安全保障戦略 (ホワイトハウスが作るとこれを踏まえて国防総省が作る) 国家防衛戦略です。
  日本側は、今年の12月に閣議決定されると見込まれている新しい国家安全保障戦略と防衛大綱、新中期防 (中期防衛力整備計画) です。

 第 8 段落 台湾有事を想定した対中国共同作戦計画の策定
  台湾有事を想定した日米共同の軍事態勢について、ここまで踏み込むことができた背景は、日米共同演習での積み重ねがあります。これについては後述します。

〇対中国軍事態勢の構築
 これについては以下の段落が重要です。
 第 9 段落 平時での日米共同の抑止 (軍事的威嚇) 態勢の構築
  アセット防護、共同の情報収集、警戒監視活動、柔軟に選択された抑止選択 FDO を行う
  南西諸島を含めた地域 (南西諸島に限らない) での、日米の施設の共同使用

 これは、奄美大島や沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島などの島嶼部で、海兵隊の遠征前方基地作戦 EABO、米陸軍の多領域作戦 MDO と陸自領域横断作戦を連携して行い、南西諸島を中国との武力紛争の最前線にする合意です。

第 4 段落 台湾有事では共同で対処
  必要であれば対処するために協力
  日米で台湾有事へ日米が一緒になって軍事的関与をする (中国と武力紛争を戦う) という、これまではなかった、かなり踏み込んだ合意です。

〇我が国の敵基地攻撃は、日米共同作戦の中に位置づけられることを明確に
 これについては以下の段落が重要です。

第 8 段落 戦略見直しのプロセスを通じて、ミサイルの脅威に対抗するための能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意の表明
 戦略見直しプロセスは、日米が「同盟としてのビジョンや優先事項の整合性を確保」しながら行われますので、その中へ日米双方の敵基地攻撃作戦が組み込まれることになります。
 
〇宇宙分野での日米の共同軍事行動を合意 (宇宙は戦場)
  これについては以下の段落が重要です。
 第12段落 衛星コンステレーションについての議論を継続、宇宙状況監視SSA (衛星の) 機能保障,相互運用性、宇宙空間での脅威に対して共同対処
 日米間で衛星コンステレーションについての議論がすでになされていたことを物語っています。衛星コンステレーションは、車載移動式発射弾道ミサイルや極超音速ミサイルのように、こちらからは攻撃しにくいか、或いは現在のミサイル防衛技術では撃ち落とせないと言われているミサイルを破壊するためのものです。詳しくは用語解説をお読みください。

 政府は2020年 6 月30日に閣議で決定された宇宙基本計画において、衛星コンステレーションの開発を米国と連携するとしていますので、これに沿った日米間の協議です。2021年度防衛予算では、衛星コンステレーション技術の研究予算が計上されています。

 宇宙状況監視のために、自衛隊に宇宙作戦隊が既に作られています。2022年度中には第 2 宇宙作戦隊が作られ、二つの部隊を合わせた宇宙作戦群として、その司令部も設置します。

 米国は陸・海・空・海兵・沿岸警備隊に加えて、6 番目の軍種である宇宙軍を作っており、宇宙領域での軍事作戦を分担する機能統合軍である宇宙軍も作っています。自衛隊の宇宙作戦隊からは、米国宇宙軍司令部へ一人の連絡要員 (連絡将校) が派遣され常駐しています。

 また、わが国独自の準天頂測地衛星である「みちびき」の衛星本体へ、米国の宇宙監視センサーが組み込まれています。
 共同発表文の第12段落は、既に日米とも宇宙を戦場と位置づけた軍事活動を共同で積み重ねており、その結果を反映させています。

〇ゲームチェンジャーとなる最先端軍事技術の共同研究、共同開発、共同生産などの合意
 これについては以下の段落が重要です。
第13段落 日米交換公文作成
 米国は極超音速ミサイル開発に、中国とロシアが先行したため、その遅れを取り戻そうとしています。我が国も2021年度防衛予算で極超音速巡航ミサイル開発予算を計上しており、2022年度防衛予算でも計上しています。今後は日米がタッグを組んで、中国とロシアに後れを取っている極超音速ミサイル開発を促進させるのです。

1 以上ご紹介した 2 + 2 共同発表文をどのように見てゆくことができるでしょうか。
 まず、全体として、中国との武力紛争を想定した、日米の軍事的一体性を一層深めるものになっています。日米の軍事一体化の下で行われる共同軍事行動は、南西諸島の島嶼部での海兵隊・米陸軍と陸自との共同軍事作戦を行うというものです。その結果南西諸島が武力紛争の最前線に立たされることになります。そこに住んでいる住民は、この武力紛争の直接の被害を受けることになるでしょう。

 1945年 4 月 1 日から始まった沖縄本島での米軍と旧日本陸軍との地上戦闘は、本土決戦を可能な限り遅らせて、天皇を中心とした当時の国家システム (国体)を護持するためでした (国体護持のための「捨て石作戦」)。日米同盟を維持するために台湾有事で日米が共同して中国との武力紛争を戦うことは、「日米同盟=国体」護持のための現代の「捨て石作戦」になるのかもしれません。

2 脅威の対象が北朝鮮から中国へと明確に転換したことを確認することが重要 
 2021年 3 月の 2 + 2 共同発表文と、2022年 1 月 7 日共同発表文とを読み比べると、北朝鮮について書かれたことは、ほとんど同じ内容です。北朝鮮の脅威に対する危機感は全く読み取れません。これは北朝鮮の脅威はコントロール可能との認識が反映していると思われます。

 北朝鮮がいまだ核兵器を開発している、ミサイル技術を向上させているといっても、米国から北朝鮮を攻撃しない限り、朝鮮半島での武力紛争はもはや発生しません。
 我が国の安全保障・防衛政策は、長年にわたり北朝鮮脅威を前提にして作られてきました。マスコミも北朝鮮の脅威を一方的に強調するだけでした。そのため私たちの脅威認識も北朝鮮に集中していました。

 ここではっきりと、我が国の安全保障・防衛政策における脅威の対象が、北朝鮮から中国へと転換したことをしっかり確認しておくことが求められます。

3 専守防衛との関わり
 日米同盟では専守防衛は完全に無視されています。以下の段落を読めばその点はお分かりいただけるでしょう。
 第 8 段落 ミサイルの脅威に対抗するための能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意の表明

 「国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する」ことを米国に決意しているのですから、選択肢を制限する専守防衛は、日米同盟の中には存在を許されないということでしょう。

 12月に閣議決定される予定の国家安全保障戦略 (改訂)、新たな防衛大綱、新中期防で、専守防衛がどのように扱われるか注目すべき点となります。専守防衛の用語解説をお読みくださればわかるように、既に30大綱の書きぶりは、専守防衛を否定する動きが始まっていること予想されるのです。

4 私たちにとっての「脅威」とは何かを考える必要。
 中国の軍事的脅威は台湾にとっては本当の脅威ですが、日本政府や私たちにとってどこまでのものか、冷静に考えることが重要です。
 中国の軍事的脅威が我が国へ向けられる場合は、台湾有事において、我が国が米国と共同して台湾防衛のため中国と武力紛争となる場合です。

 そのように考えると、2 + 2 共同発表文で合意されたような日米同盟の実態こそが私たちにとっての「脅威」ではないのかを議論しなければならないはずです。南西諸島の住民や、在日米軍基地の周辺住民に戦争の直接被害が及ぶ可能性のある中国との武力紛争を、台湾防衛のために本当に是認できるのでしょうか。私はこのようなことを容認することはできません。

5 このように述べると、では台湾へ武力侵攻が現実となった場合にどうするというのか、と必ず反論されるでしょう。
 私の答えは次のようなものです。

 万一台湾有事が発生し、我が国が米国と共同して台湾防衛のために中国と戦うことになると想定した場合、南西諸島の住民を犠牲にしてまで台湾を防衛するだけの国益があるとは思えません。むしろ日米安保体制をフリーズ (事前協議に同意しない) して、中立の立場を表明するべきです。

 日本戦略研究フォーラムが2021年 8 月に実施した台湾有事でのシミュレーションを、NHKスペシャルが2021年12月26日放映しており私も見ました。その時最後あたりのシーンで、外務大臣役の前インドネシア特命全権大使石井正文氏がこのように発言したことは、とても印象に残りました。「このようになれば負けだ。」。仮に中国の台湾進攻を阻止できたとしても「このようになれば負けだ。」という意味に理解しました。
 
 
用 語 解 説

専守防衛政策
 「専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう。」(2018年度防衛白書より引用)

 憲法 9 条の下でも自衛隊が合憲であることを担保する防衛政策。安保法制制定以前から現在まで作成された防衛白書でも、全く同じ文言で専守防衛政策を規定している。安保法制で存立危機事態が定義されたことから、「相手から武力攻撃を受けた時」の被攻撃国を、安保法制制定までは「我が国」に限定していたが、7・1 閣議決定と安保法制制定により、我が国のみならず「我が国と密接な関係にある他国」にまで拡大した。その結果、同じ文言で説明する専守防衛政策であっても、その中身は再定義されたと言える。

 そのような専守防衛政策について、30大綱は次のような記述となっている。
「我が国は、国家安全保障戦略を踏まえ、積極的平和主義の観点から、我が国自身の外交力、防衛力等を強化し、日米同盟を基軸として、各国との協力関係の拡大・深化を進めてきた。また、この際、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本方針に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守ってきた。今後とも、我が国は、こうした基本方針等の下で、平和国家としての歩みを決して変えることはない。」(7 頁)と、専守防衛政策に徹することを過去形にしている。

 前大綱 (25大綱) は専守防衛につき次のような記述である。
「日本国憲法の下、専守防衛政策に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本方針に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備する。」と述べて、専守防衛政策に徹することを現在の防衛政策に位置づけている。

 安保法制制定後の防衛白書 (2016年度~2018年度) の専守防衛政策の記述は次のような同一の記述を繰り返している。
「これまでわが国は、憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備してきている。」

 25大綱や30大綱策定までの防衛白書における専守防衛政策についての記述と30大綱の記述を比べると、30大綱は専守防衛政策との間で距離をとっていることが見て取れる。

アセット防護
 2015年 4 月の日米防衛協力の指針 (新ガイドライン) で合意された軍事活動。新ガイドラインを実行するため制定された安保法制の中で、自衛隊法第95条の 2 で、新たな自衛隊の活動として認められた、他国軍隊の武器等防護活動がこれに該当する。

 他国軍隊の武器等防護とされているが、その活動の実際は、他国軍隊の部隊を防衛することである。この活動は、平時、情勢緊迫時、重要影響事態において行われるものである。

衛星コンステレーション
 コンステレーションとは星座の意。現在の偵察衛星は、地球の低軌道を周回するため、特定の地域を偵察する能力が、例えば 1 日の内 2 回、それぞれ15分程度と限定されているため、目標を探知できない。そのため、低軌道上に多数 (米宇宙開発庁の構想では約1200機 図 9 ) の小型衛星を周回させて、地球上の任意の地点を常時偵察監視する構想。

 これにより、通常の衛星では探知できない敵国の車載ミサイル発射機を探知したり、極超音速滑空ミサイルの飛行経路をリアルタイムで探知して、攻撃できるとしている。

領域横断作戦 (クロス・ドメイン・オペレーション)
 新日米防衛協力の指針 (2015年 4 月) において初めて登場した新しい作戦概念。新指針の中では「日本に対する武力攻撃への対処行動」の「作戦行動」の中の、陸・海・空・弾道ミサイル対処の各戦闘場面に次いで、領域横断的な作戦を説明している。しかしその定義は「複数の領域を横断して同時に効果を達成することを目的とする。」と記述するだけで、詳しい定義はなされていない。

 30大綱では、「領域横断作戦」は全体の記述の中でも群を抜いて分量が多く、作戦構想、それに必要な装備、自衛隊の体制の変革に及ぶものとなっている (17~20頁、24頁)。

 マスコミ等で注目を集めた革新的装備 (F35Bといずも型護衛艦の空母化、スタンド・オフ・ミサイル、サイバー防衛部隊・宇宙領域専門部隊の設置、無人水中航走体、高速滑空弾、電磁波領域での能力強化、総合ミサイル防空能力 (別項で説明) ) などは、すべて「領域横断作戦」に位置づけられている。その意味de
、30大綱を理解するキーワードと言える。

 ドメインとは作戦領域のことで、領域横断作戦とは、従来からある陸・海 (海
中を含む) ・空の外に宇宙・サイバー空間・電磁波領域を統合した作戦概念を表す。現代武力紛争では新しいドメインが軍事作戦の成否を分ける重要な分野として登場している。30大綱はこの点を強調する内容である。
 これは現代武力紛争の特徴を踏まえた概念と思われる。その特徴とは、コンピューター・電磁波 (電磁スペクトラム)、宇宙空間の様々な機能の衛星とその中継インフラ (地上基地、水上艦、潜水艦、ステルス戦闘機、早期警戒機、等) を繋ぐ戦闘ネットワークが戦闘の優劣を決する分野となっているということ。その戦闘ネットワークを活用し、長射程、精密誘導、無人攻撃を組み合わせて、敵の射程距離外から、敵レーダーに探知される前に攻撃 (スタンドオフ攻撃) を行う。

 中国が採用しているとする接近阻止・領域拒否 (A2 / AD) に対抗する目的で米軍が開発している作戦概念がJASBC (統合空海戦闘構想) で、その中核概念が領域横断作戦 (クロス・ドメインOP) である。中国との武力紛争では、中国軍による米軍の戦闘ネットワークに対する先制攻撃 (衛星攻撃、サイバー攻撃、電子戦)、在日米軍基地への先制攻撃を想定する。

 そのため宇宙アセット (人工衛星) の防衛と電子戦能力 (敵のレーダーや通信網を無能力化する軍事作戦) の向上が重要で、30大綱の内容にもなっている (宇宙領域専門部隊・サイバー防衛部隊の創設、スタンド・オフ電子戦機開発、F15改修による電子戦能力の付与等)。

柔軟に選択される抑止対処 (措置) (Flexible Deterrent Options FDOと略)
 米軍が採用している作戦概念。新日米防衛協力の指針 (2015.4) において、初めて日米の軍事的合意となる。「Ⅳ日本の平和及び安全の切れ目のない確保」において、平時から緊急事態までのいかなる段階でも切れ目のない形で、同盟調整メカニズムを活用して、(日米の軍事的共同により) 日本の平和と安全を確保するための措置をとると述べ、政府全体に亘る同盟調整メカニズムを活用する目的の一つに「柔軟に選択された抑止措置 (中略) の方法を立案すること」を挙げている。
 FDOは新日米防衛協力の指針において、日米の共同軍事行動における重要な作戦概念として位置付けられている。

 30大綱「Ⅲ我が国の防衛の基本方針」の「 1 我が国自身の防衛体制の強化」の中の「 ( 3 ) 防衛力が果たすべき役割」の「ア平時からグレーゾーン事態への対応」において記述 (10頁)、「2 日米同盟の強化」の中の「 (1) 日米同盟の抑止力及び対処力の強化」において、(日米間で)各種の運用協力及び政策調整を一層深化させるとし、特に重要な領域の一つに「日米共同による柔軟に選択された抑止措置」を記述 (13頁) するなど、30大綱 (2018年12月閣議決定) においても、重要な防衛概念として位置づけられている。

 「柔軟に選択された抑止措置」(FDO) とは、米統合参謀本部作戦文書によると、「相手に適切なシグナルを与え、相手の行動を抑止するために事前に綿密に調整・計画された選択肢」「危機の切迫に際し、大規模紛争を回避するために相手に段階的な圧力を加える選択肢として意思決定者に提供されるとともに、FDOを実施して状況を解明しつつ、相手の意図や能力に関する情報も収集する。」と説明されている。

 国際紛争が軍事的緊張にまで深刻化した際に、相手の軍事的行動に対して、対抗的な軍事的措置をとりながら相手を抑止し、事態の深刻化を防止するというものだが、一歩間違えば軍事的な挑発となりかねず、本格的な武力紛争に発展するリスクもあると思われる。

遠征前方基地作戦(Expeditionary Advanced Base Operation EMBO)
 中国との武力紛争を想定して海兵隊が進める新しい戦闘方法。
 2021年 4 月に海兵隊司令官が発表した海兵隊改編構想である「フォース・デザイン2030」の中で、海兵隊の新たな戦闘概念として「遠征前方基地作戦」と「沿岸海兵連隊」の編制が示された。

 「遠征前方基地作戦」は、第一列島戦場の島嶼部へ事前配備された、歩兵、ミサイル部隊、防空・対空監視・兵站 (弾薬、燃料など) 部隊を備えた比較的小規模部隊により、中国軍との戦闘領域内で中国軍の海上、航空戦力を攻撃し、味方による海上・航空優勢確保を図り、中国軍によるA2ADを突破する。

 「フォース・デザイン2030」は、「EMBOの眼目を『海において、海から、また、地上から海に対して戦い』、かつ、『敵の長射程火力の射程内で作戦し、残存し続ける』ことにある」とする (以上引用個所は、「米海兵隊の作戦構想転換と日本の南西地域防衛」-笹川平和財団論文 山口昇著-より)。

 EMBOを担う海兵隊部隊は沿岸海兵連隊で、沖縄に司令部がある第三海兵遠征軍の下に新たに 3 個連隊が編成される予定で、その内1個連隊が沖縄へ配備されると予想されている。

 EMBOは米陸軍のMDBと共同した作戦になり、陸自が奄美大島、宮古島へ現在配備し、2023年度までに石垣、沖縄本島勝連駐屯地へ配備される対艦、対空ミサイル部隊とも敵基地攻撃を含む共同した作戦行動をとる。

多領域作戦(Multi-Domain Operation MDO)
 中国軍との戦闘で米陸軍が採用する新しい戦闘概念。これまで陸軍は敵の地上兵力を相手にしていたが、MDBでは、対艦ミサイル部隊、対空ミサイル部隊、中距離ミサイル部隊、電子戦部隊を伴って島嶼部に前進配備される比較的小規模部隊が、敵衛星機能を阻害、中国本土をミサイル攻撃、中国海上戦力を攻撃、中国空軍機を攻撃、敵のレーダー、通信を妨害するなど、海・空・宇宙・電磁波という多領域 (マルチドメイン) での戦闘を行い、味方による海上・航空優勢を確保する作戦に寄与するもの。

宇宙状況監視(Space Situational Awareness )
 宇宙空間での宇宙ゴミ (衛星の破片等宇宙デブリ)、キラー衛星の動きを、光学望遠鏡、レーダーなどで常時監視し、人工衛星を攻撃や宇宙ゴミとの衝突から保護したり、機能を維持するための宇宙空間の監視活動。

 我が国を含め、現代の軍事活動は人工衛星による宇宙空間の利用(通信、偵察、早期警戒、測位に利用)が不可欠である。各国は「宇宙は戦場」と位置付けており、宇宙利用の妨害は軍事作戦の成否に決定的な影響を与える。

 米国は陸・海・空・海兵・沿岸警備と並んで、第 6 番目の軍種として宇宙軍を編成して、宇宙に関する軍事作戦を担当させている。フランスも宇宙軍をすでに編成している。
 我が国でも既に自衛隊に一個宇宙作戦隊を編成し、今年度には第二宇宙作戦隊と、この二つを合わせた宇宙作戦群を編成する予定。
 SSAは、宇宙での軍事活動の基礎的な情報を得るための軍事活動である。

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