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政治家の影を徹底的に

寄稿:飯室勝彦

2022年7月27日


 安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件の捜査は、山上徹也容疑者の精神鑑定、鑑定留置という新段階に移った。鑑定実施は捜査当局の慎重な姿勢の表れとみられるが、この問題における “政治家の影” は十分解明されていない。

◎全財産の寄付で破産
 報道によると容疑者はおおむね次のような供述をしているという。
 「幼いときに父親が自殺し、母親は宗教団体・世界平和統一家庭連合 (旧統一協会) にのめり込み、1 億円以上も寄付して破産、家庭は破綻した。「自分は進学できなかった」「安倍氏が団体関連の組織に寄せた動画のメッセージを見て『自分の家庭をめちゃめちゃにした団体を安倍氏の影響力で広めた』と考え安倍氏を狙うようになった」
 統一協会をめぐっては、高額の寄付要求、宗教活動と称して壺などを高額で売りつける霊感商法、本人の意思とは無関係に教祖の決めた相手と結婚させる合同結婚式など反社会的活動が指摘されてきた。

◎弱すぎるメディアの追及
 安倍氏の事件後、一連の報道をみていると、こうしたことに大手メディアはあまり触れない。一部週刊誌が報じても話題風な報道で切っ先は鈍い。特に事件直後は、平和憲法を形骸化した安保法制、国会でのウソ答弁、「さくらをみる会」など各種疑惑、国民分断など安倍政治の負の部分は無視してまるで安倍礼賛の大合唱だった。そして国葬である。

 統一協会との接点がある政治家は安倍氏に限らない。集会、会合に議員が出席したり、挨拶したりする、団体に政治資金パーティ券を購入してもらう、選挙の際のボランティア運動員を派遣してもらう・・・・・・一部メディアによると形はさまざまだが統一協会と関係ある、あるいは関係あった政治家は自民党安倍派の議員を中心に十指に余る。実際はもっと多いはずだ。

◎反社会的集団と政治家の接点
 問題は統一協会のような反社会的組織が政治家と接点をもったという事実である。双方にとってどんなメリットがあったのか、政治家はどんな役割を果たしたのか明らかにしなければならない。
 集会などに参加することで統一協会の活動にお墨付きを与えたり、少なくとも協会の看板としてその信用性維持に寄与したりしたのではないか。その意味では、山上容疑者の動機形成を安倍元首相の動画とは無関係、筋違いと退けるわけにはいかない。安倍氏の事件に限らず、統一協会と政治家の影を解明することは事件の核心なのである。
 捜査が進むにつれ、山上容疑者が「安倍氏は真の攻撃対象ではなかった」「安倍氏を銃撃したのは間違いだった」などの供述もしている、との報道も出てきた。しかし「犯行動機は筋違い」との印象を与えるために捜査側が誘導して得た供述を意図的にリークしたとの疑いも残る。

◎矮小化は許されない
 白昼公然と行われた山上容疑者の犯行は重大であり許されるものではない。徹底的に調べて厳正な刑事手続きのもとで裁かれなければならないが、同時に統一協会の問題における政治家の影を解明することも大事である。

 懸念されるのは、捜査当局が政治的影響を怖れ、政治・政治家の影について十分調べなかったり、調べて得た情報を隠蔽したりすることである。特に精神鑑定や刑事手続きで得た情報であることを口実に情報が隠されることのないようメディアは厳しく監視しなければならない。
 日本の民主主義にかかわる事件である。刑事事件として矮小化しないようにしたい。

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