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戦争のできる国目指すのか

寄稿:飯室勝彦

2023年1月5日


 「抑止力」と称して、軍事力の増強路線を走る岸田國雄政権は「戦争のできる国」を目指しているように見える。故安倍晋三氏の敷いた路線を継承し推進するものと言えよう。平和憲法を持つ国の政権に求められる、「戦争をしない国」を目指す政治の実現へ向けて、いまこそ日本人の見識が問われる。
 
◎禁じ手も構わず
 岸田首相は防衛費の安定した財源が必要だと主張し2027年には防衛関連経費をGDP (国民総生産) の 2 %にすると表明した。早速23年度予算案では過去最大の 6 兆8000億余円となった。装備費が大きく、巡航ミサイル「トマホーク」など巨額の米国製兵器を買うことになる見通しだ。
 政府側によると、抑止とは「やられたらやり返すぞ」と威迫してやめさせるだけでなく実力でやり返すことも含み、そのために将来は相手の領域内で軍事行動をする「敵基地攻撃能力」を自衛隊に持たせるという。

 首相の発言、政府・与党の税制調査会での議論によると、問題の財源に関しては増税まで持ち出した。これまで消費的経費には使わなかった国債の使用も容認するなど禁じ手にまで踏み込んでいる。かつて戦費調達のため国債を乱発した挙げ句に国家が破綻したことなど忘れたかのようだ。

◎抑止力で抑止できるか
 政府・与党が防衛力を「飛躍的に増強する」根拠として念頭に置いているのが中国、北朝鮮の著しい軍拡であることは言うまでもない。
 しかし、軍拡は抑止の対象として想定している相手の緊張をかえって招き、危険ないたちごっこに陥るのではないか。現に急ピッチでミサイル、核兵器の開発を進める北朝鮮の動きを見ていると暴発のおそれを否定できない。
軍事には軍事でという対応は逆効果だろう。

◎平和憲法下の政治は
 戦争、軍備を放棄している日本国憲法のもとでの政治は「戦争をしないための政治」でなければならない。 
 岸田政治は逆方向を向いている。

 納得できないのは、「内閣支持率30%台」と厳しい評価を示しながら、軍拡路線の防衛政策には比較的寛容な世論である。中国、北朝鮮の活発な動きに対する感情的、情緒的反発のせいとみられないか。
 今年は安倍元首相の後任選びのほか幾つかの国政の補欠選挙がある。統一地方選もある。地方選は国政に直接関係する制度ではないが一定の影響を与え得る。有権者が見識を示すチャンスだ。

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