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自民党憲法マンガ ツッコミ入れずにはいられないネシリーズ①

寄稿:明日の自由を守る若手弁護士の会

2015年5月5日

先日、自民党さんは憲法マンガ「ほのぼの一家の憲法改正ってなぁに?」の制作発表記者会見を行いました。

https://www.jimin.jp/news/activities/127630.html

全64頁の大作!このマンガは、憲法改正の必要性や憲法改正によって社会がどう変わるのかなどについて理解が深まっていくストーリーなのだそうです。

そうなのか~と思って読み進めていくと、「ちょっと待ってちょっと待って」とツッコミどころ満載(>_<)

とゆーことで~~、今日から連載でツッコミ入れていきます(ビシッ)!入れずにはいられない!

まず、このマンガは今の憲法の「古さ」を強調します。

憲法が約70年前にできたことから、登場人物が「ケータイもネットもなかった時代の憲法で今の社会についてこれるのかしら?」とつぶやいています(「江戸時代ですかっ!?」なんて合いの手まであります)。そして、「現行憲法が今の時代とかけ離れている」と断言して、ほのぼの家を不安がらせています。

でも「ちょ、ちょっと待って」!

憲法は国のあり方を定める根本法なので、簡単に変えられると困るんですね。だから、憲法は一般の法律よりも改正要件が厳しくなっています(これを「硬性憲法」っていいます)。

それだけに、憲法は時代の変化にも合わせられるよう、フトコロ深~く作られています。憲法13条で幸福追求権が定められていますが、約70年前には考えられていなかった新しい人権は、この13条で保障されると考えられています。プライバシーの権利なんかはその典型ですね。

環境権だって、13条で保障されるという考え方もあります。漫画の中に「環境問題についても書かれてないなんて今の憲法ってエコじゃないのね!!」ってセリフがありますが、決してそんなことはないのです。

もちろん、環境権について明記しているわけではないので、はっきり書き込んだ方がいいという考え方もあるかもしれません。じゃあ、当の自民党はどう考えているかというと、以下の記事に書いたとおり、環境権について定める気はないようです。

http://www.asuno-jiyuu.com/2015/04/blog-post_29.html

マンガに書いてしまうほど「環境問題は大事だよなぁ」って本気で思っているのであれば、今の憲法を改正しなくても十分環境問題に取り組めますよ、自民党さん!

あと、約70年前にできた日本国憲法が、実は世界の最先端をいく憲法だってこと、皆さんご存じですか?

3年前の憲法記念日、「日本国憲法今も最先端 米法学者ら188カ国を分析」という記事が朝日新聞に掲載されました。この記事によると、日本国憲法は、世界で主流になった人権の上位19項目までをすべて満たす先進ぶりとのこと。分析した米法学者は、「65年も前に画期的な人権の先取りをした、とてもユニークな憲法といえる」と話しています。米国の法学者から最先端と褒められる日本国憲法、もっと誇りに思ってもいいのではないでしょうか(*^_^*)

ただ、この記事は一方で、「憲法の内容が、現実の政治にどれほど反映しているかは別問題」だとして、日本は女性の社会進出がほかの先進国と比べて鈍いことや、9条の「解釈改憲」が重ねられて自衛隊の創設や海外派遣などの政策が積み上げられてきたことを取り上げています。

憲法の古さを問題にするより、最先端の内容を備えた憲法について行けていない現実の政治の「古さ」を問題にすべきではないでしょうか、ね、自民党さん!

…と、憲法の「古さ」、というテーマだけでずいぶん長くツッコミ入れてしまいましたので、続きはまた次回!

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