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志位委員長の理路整然たる弁舌に感銘

寄稿:池田龍夫

2015年6月1日

5月28日衆院特別委員会で、安倍晋三首相は志位和夫共産党委員長の質問に対し、「『戦争法案』という批判は全く根拠のない、無責任かつ典型的なレッテル張りであり、恥ずかしい」と述べた。これに対し、志位氏は「恥ずかしいのは『戦争法案』の正体を隠し続ける首相の無責任で不誠実な姿勢である」と反論した。

志位氏の質問は、個別具体的なケースを提示して、特別委員会室は緊迫。与党委員もヤジを飛ばさず聞き入るほど、理を尽くした質問だった。

これまでの自衛隊の海外派兵法は、「非戦闘地域」での活動に限ってきた。ところが、イラクへの自衛隊派兵では、宿営地や輸送機が攻撃にさらされた。犠牲者は出なかったが、自衛隊員の精神面にも大きな影響を与え、イラクやインド洋に派遣された隊員の自殺者は54人にも上った。

米国の侵略戦争に追随する日本

志位氏は、米国が世界各地で繰り返してきた武力行使に対する日本政府の態度を追及。

第2次世界大戦後、米国は多くの先制攻撃戦争を実行し、グレナダ侵略(1983年)、リビア爆撃(86)、パナマ侵略(89年)に対しては国連総会で非難決議が採択された。

岸田文雄外相は、いずれの決議でも日本政府が棄権・反対に回ったものの、グレナダ・パナマについては「遺憾の意を表明した」などと弁明。志位氏は、グレナダ・パナマ侵略に関する政府見解を突きつけ、いずれも最後の結論が米国への「理解」となっていることを指摘し、「日本政府は戦後ただの一度も、米国の戦争を国際法違反と批判したことはない。すべて賛成・支持・理解だ。こんな異常な米国への無条件追随の国は他にない」と批判。 安倍首相は「『理解』はしているが、『支持』はしていない」と答えるのが精いっぱい。志位氏は「こんな政府がどうして『自主的判断』ができるか。言われるままに集団的自衛権を発動することになるのは明瞭だ」と強調した。

ベトナム戦争もイラク戦争も検証していない

さらに志位氏は、米国が起こしたベトナム戦争・イラク戦争に対する日本政府の根本姿勢を追及。両戦争の規模と世界的影響の大きさにふれ、「二つの戦争を日本政府がどう検証・総括したか。これは、安倍政権が半世紀にわたる政府の憲法解釈を大転換し、戦後初めて集団的自衛権行使の道に踏み込もうとするもとで、避けて通れない大問題だ」と述べた。ベトナム戦争本格化の決定機となった「トンキン湾事件」(64年)について、米国防総省秘密報告(ペンタゴン・ペーパーズ)や当時の米国防長官の回顧録などから、当時の米政府の発表が捏造だったことが明らかになっている。志位氏は、当時の日本政府が「米国が合法的に認められた範囲をまさか逸脱はあるまいという信頼」(64年、椎名外相答弁)から支持したことを示し、捏造判明後に米国に説明を求めたかと質問。岸田外相は「説明を求めた等の事実関係は、現時点で確認されていない」と答弁、志位氏は「公式の外交ルートで説明を求めていないということだ」と食い下がった。

イラク戦争の直接契機となった大量破壊兵器の保有情報についても米国の捏造であり、当時のブッシュ米大統領やブレア英首相らが情報の誤りを認めている。志位氏は、首相官邸でイラク派兵を取り仕切っていた柳沢協二・元内閣官房副長官補が著書で「アメリカに(捏造の)説明を求めなかった」と証言していることを示し、「事実か」と迫った。外相はここでも「現状そういったやりとりは確認できていない」と説明を求めていないことを認めた。志位氏は「米国の戦争は正義と信じて疑わない。捏造とわかっても説明を求めず、反省もしない。これが日本政府の基本姿勢だ」と批判。「戦後最悪の安倍政権による、戦後最悪の戦争法案の廃案を強く求める」と強調した。

志位氏の質問で自衛隊員が「殺される」ばかりでなく、民衆を「殺してしまう」危険も明らかにされた。首相は、約8500人の戦死者を出すとともに多数の民衆殺害事件を起こしたアフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF)のような活動に自衛隊が参加する可能性を否定しなかった。

集団的自衛権行使の問題をめぐっては、米国が、ねつ造した事件を口実に引き起こしたベトナム侵略戦争やイラク侵略戦争について、首相は全く反省を示していない。米政府の発表をうのみにし、ねつ造と分かっても説明も求めず、今に至ってもまともな検証もせず、反省もしない日本政府の「究極の米国従属」(志位氏)の姿勢があらわになったと言えるだろう。こうした政府が集団的自衛権を発動し、米国とともに海外での戦争、武力の行使に踏み出すことがいかに危険か、誰の目にも明白ではないか。

池田龍夫 (いけだ・たつお) 毎日新聞OB。

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