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報道恫喝……幕引きは許されない

寄稿:飯室勝彦

2015年7月1日

自民党国会議員が6月25日に開いた勉強会における報道恫喝、沖縄侮蔑発言問題は、当事者の再発言、処分に対する党内の不満噴出などで新たな局面を迎えた。新局面は、恫喝が偶発的な暴言ではなく、安倍政権と自民党の体質から生まれたことを物語る。問題の根は深い。

安易な幕引きは決して許されない。

発覚当初は軽く見ていた自民党側も国民の怒りの広がりに驚き、収拾に躍起だ。勉強会の責任者だった衆議院委員、木原稔・党青年局長を更迭、「経団連に働きかけて広告を引き上げ、マスコミを懲らしめるべきだ。」と述べた衆議院議員、大西英男ら三議員を厳重注意処分にした。

党幹部の言動には、表現・報道の自由を尊重するというより、新安保体制法案を成立させるため、という思惑が見え透いている。

おまけに6月30日になって肝心の大西が「自分の発言に問題があったとは思わない。」「誤った報道をするマスコミを懲らしめるべきだ。」「(企業は)広告なんか自粛すべきだ。」などと再び持論を展開した。

大西はまったく反省していない。昨年7月にも審議中に女性蔑視のヤジを飛ばして謝罪に追い込まれ、品性を疑われたが、経験に学んで教訓を得る知力はないのだろうか。

内閣総理大臣であり自民党総裁である安倍晋三も明確なメッセージを発していない。大西発言の誤りをはっきり指摘せず、表現・報道の自由を守って政権に対する批判にきちんと向き合おうとする姿勢が見られない。

安倍は初期段階の国会質問に「表現の自由は民主主義の根幹。」と答え、党幹事長・谷垣禎一との会談などで「(沖縄侮蔑発言は)極めて遺憾。」と述べたと伝えられる。

いずれも型どおりの発言で暴言への厳しい批判は聞き取れない。陳謝もしていない。かえって「私的な勉強会で自由闊達な議論がある。」という文脈に「表現の自由は民主主義の根幹。」と続け、“暴言の自由”を擁護するかのような国会答弁をしたこともある。

問題の勉強会は安倍に近い議員たちが集まった、いわば“親衛隊集会”のようなものだった。報道恫喝発言に対する安倍の曖昧な姿勢にはそれが反映しているのだろう。

同じ「表現・言論の自由」という語句であっても、マスメディアが公権力をチェック、監視し、その成果を国民に伝える自由と、権力者や政治家が暴言を吐いたり異論を封じ込めたりする自由とは本質的に違う。

民主社会の維持、発展は権力者が国民と向き合うことから始まる。自分の認識と異なる、あるいは自分が教え込まれているのとは対立する事実指摘や意見であっても、それを遮るのではなく、耳を傾け、率直に再考するのが、政治家の取るべき態度である。

大西は「日本の国を過つような、誤った報道をするようなマスコミ」を懲らしめるべきだという。

主権者が可能な限り多様な情報、意見を共有し、最後はその主権者が決める。それが民主主義であり、マスコミは主権者に奉仕するのが使命だ。大西のように独り善がりの正義感を振りかざし、異論の主を兵糧攻めでねじ伏せようとするのは、相手を説得できるだけの知識、論理、言語能力を持たないことを自ら認めたに等しい。議員失格だ。

大西の言動と安倍の政治姿勢は根っこの部分で通じるところがある。

安倍は国会の委員会などで質問者に誠実に向き合おうとせず、質問をはぐらかしたり、議論の入り口で「レッテル張り」などと強圧的にはね返したりする。答弁席から下品な、時には事実誤認のヤジを飛ばすこともある。他方で独善的な自説を延々と展開する。

このように見てくると、大西の開き直りは親衛隊としての務めを果たしているつもりのようにも受け取れる。

批判、審判を受けるべき立場をまったくわきまえない振る舞いの繰り返しには、「議席が多いのだから何でもできる」というおごりが感じ取れる。「マスコミや国民は自分たちが決めた“正義”に従うのが当然」というかのような安倍、大西の政治姿勢は、安倍の敬愛する祖父、岸信介が開戦の詔書に署名したころのそれと同じにみえる。

安倍は心から反省し、国民に謝罪すべきだ。表現・報道の自由を否定する人物が反省もなく国会に居座り、沖縄県民を侮蔑する発言を多くの自民党議員が平然と聞いていたことを……。

処分で幕引きにしてはいけない。安倍政権の体質を国民が正しく認識するいい機会だ。与野党は、憲法を否定するような状況がなぜ生まれたのか、きちんと検証しないまま、新安保法制案の審議をこれ以上進めることは許されない。

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