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怒りを持続し“立憲平和”を守る

寄稿:飯室勝彦

2015年9月4日

圧倒的多数の憲法研究者、元最高裁長官、元内閣法制局長官、そして何よりも老若男女、広範な市民たち……この人たちの声を、安倍晋三に率いられる自民、公明両党の政権はいっこうに聞こうとしない。安全保障関連法案は憲法違反であるにもかかわらず、衆議院に続いて参議院でも強行採決、成立すると現実感をもって語られるようになってきた。

憲法で非戦を誓い、平和主義の旗印を掲げ国際平和に貢献してきた日本の戦後史が根底から覆されようとしている。

安倍政権を制御できなかった自民党、「平和の党」の看板を放棄したかのように自民党に追随した公明党、いずれも将来の歴史の審判に耐えられまい。いやその前に主権者たる有権者の審判に耐えられないであろう。

ほとんどの憲法学者が問題の法案が憲法第9条に違反すると表明し、元最高裁長官も同調する声を上げた。どの世論調査でも、60%前後が法案に反対、あるいは疑問を呈し、「判断留保」を含めれば大多数が今国会での成立に反対している。全国各地で連日、数万人が街頭行動を繰り広げている。

それを安倍政権が無視し続けるのは「議会で多数を握れば何でもできるのが民主主義」とはき違えているからだ。多数決は膠着状態で動きが取れないときのぎりぎりの最終手段であり、主権者の意思、民意に基づいた政治を行うことが民主主義の正しい理解である。

そのためには異論に真剣に耳を傾ける包容力、相手を説得できる知識と論理、徹底した議論が前提になる。民主政治の健全な維持、発展には、安倍流政治で多用される“腕力”ではなく「知力」が求められる。

政権の側は「市民は法案の内容を誤解している」というが断じて誤解ではない。

自衛隊が米軍に組み込まれて事実上、米軍と一体化し、世界のどこでも米軍や他国軍を支援して戦闘に参加できる。米軍などに通常兵器を提供できるのはもちろん、法的にはミサイルや核兵器も運搬できる。――市民はこうした法案の本質を見抜いているからこそ不安と怒りを街頭行動で表しているのである。

戦争法案との異名さえ使われた安保法案が安倍内閣による立憲主義の無視から生まれたことは、いまさら言うまでもない。日本国憲法の制定以来、歴代政権が受け継いできた「集団的自衛権は行使できない」という第9条の解釈を逆転させることで、安倍政権は「戦争をしない国」から「戦争もする国」への大転換を目指している。

これは「政治は憲法を土台に行わなければならない」「憲法は権力に好き勝手な行動を許さない」という立憲主義の無視である。

集団的自衛権など論点にもなっていない砂川事件の最高裁判決を利用した、行使可能論の展開を、まともな法律家は「荒唐無稽」と相手にしていない。安倍を支え、その解釈改憲を強引に先導した自民党副総裁、高村正彦には“腕力政治家”の呼称がふさわしい。

見逃せないのは安倍政権の暴走を可能にしている公明党の存在である。「平和主義」を表看板にして細部で注文を付けたように見せ、しかし基本的には安倍政治に追随する姿勢は“下駄の雪”と揶揄されている。

公明党幹部は、自党の立ち位置を、支持母体の創価学会会員だけでなく、会員以外にもきちんと説明する責任がある。

政権の反立憲主義、反民主主義、そして軍備強化路線を追い風に自衛隊の現場は自信を深めている。

制服組トップ、統合幕僚長の河野克俊が昨(2014)年暮れ、米軍幹部に対し「安保法制の整備は来年夏までに終了する」と明言したと記した資料が出てきた。

安倍は今(2015)年4月、米議会で「夏までに成立」と演説し、「法案が国会に出ていないのに」と批判された。それより4ヶ月も前、国民が何も知らされていない政治の重要問題の帰趨が軍人によって外国の軍幹部に予告されたのである。

国会議員もジャーナリズムもこの問題に対する反応は鈍いが、軍組織が政治を引っ張り、国民を駆り立てて泥沼に突っ込んでいった戦前を彷彿させるではないか。

河野は日本の防衛費について「今後も増える」と説明したという。案の定、来(2016)年度の防衛費の概算要求額は5兆1千億円から2千億円と過去最高だ。米軍が固執するオスプレイも買わされ、上陸用の水陸両用車など装備が一段と強化される。法制面だけでなく、装備の面でも「戦争のできる国」へ着々近づいている。

安倍政権はアメリカの機嫌を損ね「公約違反」と言われないよう、参議院でも強行突破を図るだろう。しかし、戦後最大の曲がり角を前にさまざまな人々が声をあげ立ち上っている。戦いはこれからも続く。怒りと危機意識を持続し、主権者として粘り強く戦えば最終的には立憲平和主義を守り抜けるはずだ。

 

 

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