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時代を戦前回帰させてはならない
孫崎亨氏の〝警世の訴え〟に感銘

寄稿:池田龍夫

2015年10月6日

元外交官の孫崎亨(うける)氏の著作が今年5月と8月に刊行され、その鋭い問題提起に注目が集まっている。一冊は5月20日刊行の「日米開戦の正体」(祥伝社)、もう一冊は8月20日刊行の「日本外交―現場からの証言(創元社)である。

孫崎氏は1966年に外務省入省、イラク、カナダ勤務を経てウズベギスタン大使。国際情報局長、イラン大使を歴任。退官後、防衛大学教授も務めた。外務省きっての外交通として、鋭い筆法が注目を集めている。前記2著の前に、「日本人のための戦略的思考入門」(祥伝社新書=2010年9月)「日本の国境問題」(ちくま新書=2011年5月)を刊行しているが、ここでは今年刊行の2著の内容を紹介して、プロが斬り込んだ日本外交の問題点を紹介して、考えてみたい。

外交には永遠の味方ナシ

「外交には永遠の味方もなく、永遠の敵もいない。極端に言えば、国際情勢は刻一刻かわっていて、しかもその正確は、白か黒かとかをはっきり定められるほど簡単ではない」。冷戦終了後の米国の対日政策は、経済的に日本は最も強い脅威となっており、この脅威とどう対応するか、新しい米国戦略の中にどう組み込むか、この二つの課題が存在した。経済・貿易交渉を行っていた日本側の関係者に、ひしひしと伝わってきたのは『日本経済運営のメカニズムを変える』という米国政府の強い意志であった」。

東京の上空は米軍管理下に

「現在、東京の上空は米軍に管理されている。首都圏上空は、横田基地という米軍管理空域があって、日本の飛行機は、実質、そこを飛べないようになっている。たとえば、羽田空港から西へ向かう飛行機は、まず東の千葉県の方に飛んで、そこから急上昇、急旋回してこの空域を越えなければならないという非常に危険な状況が続いている。世界の国々の中で、首都の上空を、このように他国軍に支配されている国が、一体どこにあるであろうか。果たして、米軍に支配されていなければ、日本は守れないのか」。

複眼的に情勢分析する力が劣化

日米開戦へと進む過程で、おかしいという考えを持っていた人は軍部にも、外務省にも、政治家にも、新聞社にも、ほぼ日本のあらゆる分野に存在しました。それが圧力を受け、発言できない社会になってしまいました。これが『真珠湾への道』の最大の要因です。戦後、日本は言論の自由を謳歌したと思います。私のいた外務省もそうでした。私はそうした中で育ちました。1984年に『複眼的に情勢分析する』ということで外務省国際情報局(当時の名称は情報調査室)を作り、私はそこで課長と局長を務めました。『自分が正しいことを述べる』、この生き方は、外務省全体の流れに抗して作ったのではなく、外務省の空気の中で生まれたものだったのです。しかし、外務省は変わりました。『自分が正しいことを述べる』ことで制裁を受ける時代に入りました。それは何も外務省だけの話でなく、日本全体を覆い始めました。そして今、それが露骨に行われるようになってきました。俗に言う『アメ』と『ムチ』。これで、組織の中で生きる者が『自分が正しいことを述べる』ことでは生きていけない時代に入ってきました。どうして戦後の経験を踏まえて『自分が正しいことを述べる』ことができた国を、今日本は捨てようしているのか、どうしたら『自分が正しいことを述べる』社会を復活させ維持できるようにするのか、皆が考える必要があると強く思います」。

「正しいことを言える」自由を

安倍晋三首相の右旋回の政治姿勢を鋭く批判した〝警世の書〟に感銘を深めた人は多いに違いない。外交官として日本外交のうらを知り尽くした孫崎氏ならではの労作だ。国民一人一人が自覚を持って「正しいことを自由に発言できる」日本を構築すべきである。

池田龍夫 (いけだ・たつお) 毎日新聞OB。

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