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安保も原発も終わっていない

寄稿:飯室勝彦

2015年10月18日

憲法は自分に都合よく解釈する。国会議員にも国民にも誠実に対応せず、最後は「議席の数」の力で突破する。民主主義も憲法も無視した安倍政治が、数々の課題を置き去りにしたまま暴走している。まるで「安保法制、原発、沖縄の新米軍基地建設……みな決まったこと、すんだこと」と言わんばかりだ。

空約束だった「丁寧な説明」

内閣総理大臣の安倍晋三は、2015年9月に新しい安保関連法が成立すると「これからも粘り強く、丁寧に説明していきたい」と語った。圧倒的多数の国民が新法の合憲性に否定的意見を持っていることを、さすがの安倍も認めざるを得なかったのである。

それから何度も記者会見があったが、安倍から「丁寧な説明」は一度もされていない。逆に「時を経る中で理解は広がる」「(野党は)戦争法案、徴兵制など無責任なレッテル張りをする」などと「説明は不要かつ無益」との態度さえみせる。

おまけに例年秋に開く臨時国会を見送ろうとしている。説明拒否、追及回避の姿勢が露骨だ。外交日程が立て込んでいるからというのだが、国民への説明より優先する外交とは何のための外交なのか。真の理由は国民や議員からの逃避だろう。

他方で政府与党からは「新3本の矢」「1億総活躍」など来年夏の参議院選を意識した情報の発信が活発だ。「安保はもうすんだこと」とでも言うのだろうか。

とんでもない。強行可決したからといって憲法違反の法律が合憲に変わるわけではない。速記者が委員長や議員の発言を「聴取不能」と記さざるを得なかったほどの混乱の中での採決は、委員長が速記録を「可決決定」と書き換えても当然に合法とはならない。

違憲立法の廃止は、国会の内外で絶えざる議論を重ね、究極的には選挙における重要な選択肢となるべきテーマだ。

不安を置き去り再稼働

原子力発電も、安倍政権は周辺住民の不安をよそに回帰路線を走っている。

福島の事故からの復興は遅々として進まず、いまだに10万を超える人たちが全国各地で避難生活を余儀なくされている。住み慣れた家、暮らしの基盤だった田畑や山林を放射能で汚され、生活再建ができない人も多い。

安倍はしばしば「世界一厳しい規制基準」と豪語するが、再稼働した九州電力の川内原発では一部の安全対策が未着手だ。事故の際の住民避難対策も進んでいない。

事故からさして時間が経っていない厳しい状況下で、早々と「原発は完全にコントロール下にある」と宣言した安倍政権は、「トイレのないマンション」と言われる原発の完全再稼働へ向け既成事実を積み重ねている。

原発による低コストを求める電力会社の意向を重視する政権にとって、周辺住民の安全、暮らし、環境維持などは二の次だ。

沖縄の基地は人権問題

沖縄の米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設問題でも、安倍政権は地元の声に耳を傾けようとしない。

前知事、仲井眞弘多による海面埋め立て許可が翁長雄志知事によって取り消され、移設のための埋め立てが法的根拠を失っても、工事を続行する構えだ。「銃剣とブルドーザーによる」といわれた敗戦直後の米軍による基地建設を彷彿させるではないか。

政府は沖縄の基地問題を人権問題としてとらえる翁長に異議を唱えた。知事が国連人権理事会で政府の対応を批判すると、官房長官の菅義偉が「強い違和感を持っている」とわざわざ発言して批判したのだ。

しかし、沖縄の基地はまさに人権問題である。住民は航空機や射爆撃演習の騒音、米兵の犯罪に苦しみ、事故の不安にさらされている。これが人権問題でなくて何だろう。

そもそも沖縄の米軍基地は住民が任意に土地を提供してできたのではない。米軍が住民を無理矢理に排除して建設したのである。占領下はもちろん、日本独立後の米軍統治下でも沖縄住民の人権は無視され続けた。

1946年に日本国憲法が公布され、52年のサンフランシスコ条約で日本は独立し主権を回復した。だが、沖縄、奄美大島、小笠原は米軍統治下に残され、沖縄には72年に本土復帰するまで日本国憲法が適用されなかった。

主権を回復した本土で、憲法の保障する基本的人権、平和主義の理念を掲げた基地反対闘争の成果もあって、基地の整理縮小が進んだのと引き替えのように、憲法の適用されない沖縄へ基地が集中していった。だから復帰運動のスローガンは「平和憲法の下へ」となったのである。

全国の0・6%にすぎない面積の沖縄に米軍専用施設の74%が集中しているのは、人権格差の表れと言ってもいい。戦後70年経っても「占領軍」のように振る舞う軍隊の基地を抱え、その軍隊のために航空母艦が横付けできる大きな基地を新たに建設、提供しようとしている国が独立国と言えるのだろうか。

大事な問題を見失わせようと、選挙向けの政策、話題を次々打ち出す目くらまし戦術に惑わされてはならない。安倍政治がしたこと、しなかったこと、これからしようとすることを、憲法と民主主義に照らして監視しチェックし、暴走を止めなければならない。

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