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【NPJ通信・連載記事】選挙へ行こう~自民党改憲草案と参議院選挙@2016

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改憲目指して報道弾圧  ―ジャーナリズムをめぐる四つの教訓―

寄稿:飯室勝彦

2016年6月15日

権力者が何事かなそうとするとき、真っ先に手をつけるのはメディアの支配であり、表現・報道の自由の封殺である。

事象を個々的に矮小化してとらえず、“鳥の目”で観察すれば、個が有機的に連結して大きな流れがみえてくる。

ジャーナリストであれ、報道から情報を得る立場の人々であれ、この二つの教訓を肝に銘じていれば、安倍晋三政権下の日本はファシズム再現に向かい既に危険水域に入ったことが理解できるはずである。

それが理解できれば、この夏の参議院選挙の報道で何を心がけ、どのような投票行動をするべきか自ずから明らかだ。

法の規定を利用してテレビ局を脅し、政権に好意的な局、番組を選んで出演して恩を売るとともに政権の宣伝をし、一部の新聞に対しては国会という公式な場でいわれなき攻撃、中傷を加えるかと思えば、メディア企業幹部と頻繁に懇談して懐柔を図る。安倍政権のメディアコントロールは手段を選ばない。

安倍首相と彼の支配下にある自民党が展開する政治活動を鳥瞰すれば、改憲実現のために異論を封じ込めようとする安倍首相の方針に沿った大きな流れが見て取れる。テレビに「公平」を強要するのも、権力を批判的に監視して多様な選択肢を市民に提供するジャーナリズムとしての使命を果たさせないためだ。

放送行政を担当する総務相は、第一次安倍政権では腹心の菅義偉氏(現官房長官)を据え、いまは“安倍チルドレン”の中核と言われる高市早苗氏を配置している。菅官房長官は放送法改定などで放送に手を突っ込んだが、高市総務相もNHKの「クローズアップ現代」問題で放送内容にまで踏み込んで権力を振るったうえ、停波の可能性をちらつかせテレビ局を恫喝した。

これらを個人のキャラクターゆえと矮小化すると本質を見誤る。系統的な安倍戦略の一環ととらえるべきだ。もっと広く見渡せば2015年6月25日に開かれた勉強会「自民党文化芸術懇話会」で「テレビを兵糧攻めにしろ」という非常識発言が議員から飛び出したのも、「沖縄の二つの新聞は潰さなければならない」と公言するような人物をゲストに招いたのも、安倍政治の流れに乗ってのことだと分かる。

効果は着々表れている。 NHKは「政府が右というのに左というわけにはいかない」「原発報道は当局発表をベースに」と平気で言う人物が既に会長の座にいる。日常のニュースでは政権に対する批判的視点からの報道がほとんどみられなくなった。ニュース報道における安倍首相の露出回数、露出時間が増えているようにもみえる。民放の番組欄から政治的色彩を帯びるテーマが消え、知性も芸もないタレントの空騒ぎばかりが目立つ。真剣勝負の報道は絶滅危惧種に近い。NHKもその真似をし始めた。新聞の自粛現象も著しい。政権批判に及び腰で、過度に慎重な記事が多くなり、鋭い切り口の調査報道や分析報道には滅多にお目にかかれない。 市民の支えがあってこその表現・報道の自由である。だが、メディアが、権力に批判的な情報も広く集め掘り下げて伝え「知る権利」に奉仕するという原点を忘れ、保身優先では市民から支持されるはずがない。 三つめ、「民主主義が健全に維持され発展するには権力に毛嫌いされるジャーナリズムが欠かせない」というのは、ジャーナリストも受け手の市民も痛切に自覚すべき教訓だ。あの戦争の時代、メディアは権力に迎合し、時には露払いさえ務めた。敗戦後のジャーナリズムはその反省からスタートしたのである。戦争をしない国から戦争をする国へ―70年かけて築き上げた輝かしい歴史を逆流させないために、新しい憲法のもとで永久平和の実現を誓ったあの時の決意を再確認したい。

最後に訴えたいのは「報道の自由はメディアのためではなく、情報を受ける市民のための自由である」という教訓だ。

目と耳をふさがれ、気がついたらとんでもない場面に立たされていた。そんな危険に追い込まれるのは市民自身である。自民党は改憲を表向きの選挙公約にはしないで「争点隠し」しているが、選挙の結果次第では改憲に突っ走るだろう。そのテキストは表現の自由を骨抜きする、戦前回帰のような条項を盛り込んだ自民党改憲草案だ。表現・報道の自由に対する弾圧は市民にとっても他人事ではない。メディアが脅され、懐柔されて知る権利に十分応えていない現状を、市民は我が事と考えなければならない。メディアの自由を阻む者は市民の敵―そのことに気づけば、安倍政権のメディアコントロールは、安保法、消費税、改憲などと並び、参院選の投票行動を決める重要な判断材料となるはずだ。

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