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【NPJ通信・連載記事】選挙へ行こう~自民党改憲草案と参議院選挙@2016

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戦争法反対・野党共闘の運動から憲法改悪阻止・憲法理念実現の運動へ

寄稿:清水雅彦(日本体育大学教授)

2016年6月17日

日本のリベラル・左翼の欠点は、分裂・除名などによって組織がどんどん小さくなっても、少数派であることの自覚に欠け、バラバラでも批判勢力として存在することで自己満足してきたことである。しかし、批判勢力として一定の力を発揮することはできても、自分たちの要求を実現するには、多数派になって権力を握らないと不十分である。

このようなこれまでの悪しき流れを変えたのが、2014年12月結成の「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」である。これにより、1980年代に分裂した連合所属労組と全労連所属労組との共闘が実現し、労働組合組織率の低下による労働組合による平和運動の弱体化を組織されていない労働者・学生・女性など広範な市民が補った。そして、この流れは2015年から中央の5月3日憲法集会の統一をもたらし、民主党(現民進党)・共産党・社民党・生活の党の野党共闘を生み出し、今年の参議院選挙一人区全てで野党統一候補も実現する。下からの運動が国会議員・政党を突き動かしたのである。

とはいえ、運動の遅れもあり、戦争法は制定・施行された。しかし、衆参両院で自公が過半数を占めるからといって、安倍政権が簡単に自衛隊を海外に出せるのではない。国会外で戦争反対の強い世論を作ることができれば、海外派兵の阻止は可能である。さらに、今年の参議院選挙で野党が圧勝し、自公を過半数割れに追い込むことができればなおよい。逆に、改憲勢力が参議院で3分の2以上を占めるようなことがあれば、安倍政権は本当に改憲をやりかねないので、最低限それを阻止しなければならない。自民党が2012年に発表した改憲案は、天皇を元首にし、国防軍が集団的自衛権をも行使し、緊急事態条項が象徴的であるように、内閣総理大臣の権限強化と国民の安易な人権制限を可能にするものであるからである。そういう意味で、今度の参議院選挙は本当に大事である。

そもそも、まだ自民党の改憲案は実現していない。日本国憲法がある限り、私たちは日本国憲法の原理に従って憲法上問題のある法律や制度を批判していくことができる。そして、まず必要なのは憲法理念の実現である。多くの市民が主体的に声をあげることでここまで戦争法反対・野党共闘の運動を作ってきた。このことに自信を持ち、今度は憲法改悪阻止・憲法理念実現の運動を市民が立ち上がることによって作る段階に来ている。

清水雅彦
日本体育大学体育学部教授(憲法学)。戦争をさせない1000人委員会事務局長代行。主な著書に、『治安政策としての「安全・安心まちづくり」』(社会評論社)、『憲法を変えて「戦争のボタン」を押しますか?』(高文研)など。

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