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【NPJ通信・連載記事】選挙へ行こう~自民党改憲草案と参議院選挙@2016

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タックスヘイブン日本国の改革

寄稿:浦野広明(立正大学法学部客員教授・税法学)

2016年7月10日

タックスヘイブン(tax haven=租税回避地)の秘密が、「パナマ文書」の漏えいによって、騒ぎたてられている。「識者」が発言している。「青山学院大学長の三木義一教授(税法)は、納税者意識の希薄さを憂う。『日本では不公正な社会を許さない国民の感覚が鈍い。本来、税は民主主義に基づいた社会を運営するためのもの。社会の担い手として税を払う責務を感じていない』と手厳しい…『庶民が負担する消費税などの税収でつくられた社会でもうけている富裕層が税を払わない。これを許すと格差はますます広がってしまう』と訴える。」(東京新聞「こちら特報部」2016年4月13日)。

誰に手厳しいというのか。まるで国民に責任があるかのようだ。三木教授は、「今の財政状況では消費税再増税もやむを得ません」と述べていた(同紙2014年10月18日)。一方で消費税の問題点を指摘し、他方で消費税再増税を容認、「マッチ-ポンプ」もいいところだ。

タックスヘイブンは他国のことではない。すぐに手をつけるべき課題が「タックスヘイブン国日本」の改革である。

安倍首相は第183回国会における施政方針演説で、「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します」と述べている(2013年2月28日)。とんでもない。目指すどころか、今でも日本の大企業や富裕層は手厚い租税特別措置(優遇税制)によって、税負担が著しく軽減、ないしは完全に免除されている。
日本の大企業は、各種の租税特別措置(優遇税制)によって、税金逃れをしている。その一つが、タックスヘイブンを利用した「外国子会社配当益金不算入」制度である。外国の子会社(株主は日本の親会社)から配当を受け取った場合、その95%は課税しないのである。

たとえば、原価・費用が4,000億円(売価5,000億円)の商品(製品)を日本の親会社がタックスヘイブンにある外国子会社に4,000億円で売る。子会社は、親会社から4,000億円で仕入れた商品を売価5,000億円で売る。そうすると、子会社は、1,000億円の利益を得る。タックスヘイブンにある子会社には税金がかからないから、儲けとして、まるまる1,000億円の儲けが残る。子会社は、その儲け1,000億円を親会社に配当として支払う。配当を受け取った親会社は、1,000億円のうち、950億円を課税収入から除外できる。つまり、950億円の収入については、無税ということになるのである。

「法人税の実効税率」という表現がある。これは、国税である法人税だけでなく、地方税を含めて、法人企業の利益に課税される税の実質的な負担率を示すものである。法人実効税率は、2010年度から2014年度までの5年間、35%から40%であった。この5年間に、巨大商社が実際に支払った税負担は、三菱商事(7.9%)、伊藤忠商事(2.2%)、三井物産(マイナス0.7%)と「ただ」同然だった(税制評論家・税理士の菅隆徳氏調べ。『税制研究』№69)。

大企業優遇税制は法人税にとどまらない。輸出売上に対する消費税率は8%ではなく0%である。年間売上(個別経営成績)11兆5,858億円(2016年3月期)のトヨタ自動車は、この0%税率を適用した結果、消費税を1円も払わず、推定で4,635億円の還付を受けている(輸出割合70%、課税仕入は売上の80%として計算)。

わが国の消費税の税率はヨーロッパに比べても低くない。食料品の税率は、イギリス0%(標準税率20%)、ドイツ7%(同19%)、フランス5.5%(同20%)である。日本は、食料品にも8%の税率を適用しており、世界的にみて消費税率は高い。

消費税は、年間所得が200万円と1,000万円の人が、100万円の消費をして、消費税を8万円負担したと仮定した場合、所得に占める消費税負担割合は、前者が4%、後者は0.8%である。消費税は低所得者に重い負担を強いる憲法14条(法の下の平等)違反の税なのである。

個人の所得税負担率は、所得が1億円を超えると下がる。その要因は株の売却・配当益に対する税制である。2003年度税制改定によって、上場株式の配当や売却益所得については、いくら所得があっても、わずか10%(所得税:7%、地方税:3%)の課税とした(証券優遇税制の採用)。この10%の税率は2013年12月末で適用期限が切れ、2014年1月から、税率を20%(所得税:15%、地方税:5%)に戻した(その他に復興特別所得税が13年から25年間所得税額に2.1%が上乗せされる)。戻したと言っても20%税率(租税特別措置法37条の10)自体が金持ち優遇であることには変わりない。

日本税制をかつてあった制度にゆるやかに戻すだけで、国税と地方税は1年間で28兆4,384億円の増収が見込める(不公平な税制をただす会『福祉とぜいきん』2016年5月30日)。健康で文化的な国民生活を保障するには、応能原則を実現させる柱となる所得課税(国税においては所得税・法人税)の総合累進化を進める以外に方策はない。

選挙は、税のとり方と使い方を決める意思表示の機会である。常にそのことを念頭において、日本のタックスヘイブン化をくい止めたい。

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