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知らぬ間に憲法破壊が着々と
~自衛隊の南スーダン派遣問題って何のこと?~

寄稿:北 村 栄(弁護士)

2016年10月3日

昨年9月、「海外戦争法」である安保関連法が成立し、この11月から南スーダンに派遣される陸上自衛隊に対して、「駆け付け警護」と 「宿営地防衛」の新任務か課せられる見込みです。
南スーダンでは今年7月に大規模な衝突が発生して、8月には統一政府を作っていた元反政府側トップが国外脱出する事態になっており、混乱を極めていると報道されています。
自衛隊への新任務付与によってどのような事態が生じるのか、北村聡弁護士がQ&Aで解説します。

昨年の9月19日に、安保関連法案(戦争法案)が強行採決されてから1年が過ぎました。安倍首相は自衛隊の海外派遣の準備を進めています。

その中でも、特に南スーダンへの派遣が戦闘行為の危険があるとされています。

私自身もよく知らなかったので、自分の勉強のためにも、出来るだけわかりやすくみなさんにお伝えしたいと思います。

知らないと、ずるずると戦争の道に進められてしまいます。

まずは、事実を知っていきましょう。

Q:最近、南スーダンという名前をよく聞くようになったのですが、どんなことかなかなか頭に入らないのですが。
A:そうですね。単発のニュースだけを聞いてもわかりにくいので、その背景からみていきましょう。

Q:そもそも、南スーダンという国はどこにあるのですか。
A:アフリカ大陸のエジプトのすぐ南にスーダンがあり、そのまたすぐ南に南スーダン共和国(通称「南スーダン」)があります。2011年7月9日に、スーダン共和国の南部10州が、アフリカ大陸54番目の国家として分離独立した国です。人口は1000万人ほどです。

Q:ここに日本の自衛隊が派遣されているのはどうしてですか。
A:PKO(国連平和維持活動)に基づて、道路などのインフラ整備や人道支援の目的で2011年から派遣されています。

Q:人道支援なら問題ないのでないでしょうか。
A:ところが、南スーダンは2013年12月以降大統領派と副大統領派の武力衝突が起こり、住民を巻き込んだ激しい内戦状態に陥っているのです。数千人が殺害され、240万人が家を追われ、残虐行為も行われているのです。
  そもそも、PKO活動が認められるためには、自衛隊が戦闘に巻き込まれないために、紛争当事者間の停戦合意が必要なのですが、内戦状態ですからそのようなものはなく、本来ならば自衛隊はすぐに撤退をしなければなりません。

Q:ということは、自衛隊が戦闘に巻き込まれることになりますね。
A:そうなんです。実際に今年の2月に起こったことですが、文民保護キャンプでの銃撃戦が発生すれば、戦闘に巻き込まれることになります。
  そのため、自衛隊の任務として安保関連法に基づく「駆けつけ警護」が新たな任務として課せられ、訓練が始まろうとしているのです。

Q:駆けつけ警護となると、どんな危険が出てくるのですか。
A:従来より踏み込んだ武器の使用が可能になります。具体的には、武器使用権限が従来の自己防護から「任務遂行型」へ大幅に拡大されています。また、他国軍と共同で警備する任務も入っています。

Q:これでは、全く人道支援でなく、戦闘行為をすることになってしまいますね。
A:はい、住民グループが入り交じった争乱の中では、事件と無関係の住民を誤射する危険もありますし、自衛隊自身が南スーダン軍と交戦することにもなりかねません。これはまさに憲法9条が禁じる「武力の行使」にあたります。

Q:非常に恐い話ですね。送り込まれる自衛隊員としては命の危険があるということですね。
A:はい、今年の11月から訓練が始まるようですが、ある50代の隊員は「これからの訓練は厳しいものになるだろう。遭遇した場面で撃つのか,撃たないのか。指揮官も一線の隊員も非常に難しい状況判断を問われる」と心配をしています。
  また、別の隊員は「海外派遣から帰ってきた後も銃弾の音が頭から消えず、悩む知人もいる。訓練は年々実践的になっていると聞く。これからどうなっていくのか」と懸念しています。

Q:自衛隊は本来「専守防衛」ではなかったでしょうか。
A:そうですね。まさに海外で戦闘行為をする自衛隊になってしまう、ということになります。
  こうならないように憲法9条が防いできたわけですし、歴代自民党政権もここだけはと歯止めをしてきたわけですが、これが崩れてしまうことになります。
  また、一旦命が奪われれば、取り返しがつきません。また、撃たれた側、撃った側の双方の憎悪の感情も拡大してしまいます。

Q:よくわかりました。まずは、「今何が起きているか知る」ということが大事ですね。そして、知った者が声を上げていくことですね。
A:そのとおりだと思います。デモや勉強会にも新しい人を連れて行くこと、また家族から伝えていくことが大事だと思います。

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