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安倍政権・・・・・・国民不在がより明瞭に

寄稿:飯室勝彦

2016年11月28日

 自民党の総裁任期延長も決まって慢心したのか、安倍自民党政権の暴走はとどまるところを知らない。次期米大統領との秘密会談、相次ぐ閣僚の“とんでも発言”や国会における強行採決などでますます明瞭になったのは「国民不在の政治・外交」である。

 米大統領選でトランプ氏当選という予想外の結果が出ると、安倍晋三首相は慌ててトランプ氏のもとに駆けつけた。
政治学者の白井聡氏はこれを「飼い主を見誤った犬が、一生懸命に尻尾を振って駆けつけた。失礼ながらそんなふうに見えました」と評した(2016年11月25日付け朝日新聞朝刊「耕論」)。選挙中、トランプ氏は日本に厳しいことを言い続けただけに、失礼ながら安倍首相が「見捨てないでください、ご主人様」と言っているように見えた人も多かろう。
 米国の大統領が替われば日本の首相が会いに行くのはほぼ慣例になっているだけに、「いつものことだ」と冷めた目で見ることも出来るかもしれないが、見過ごせないのは二人の会談の中身がいっさい明らかにされないことだ。
 
 その理由を首相は「中身のやりとりについて外に出すのは控えよう」と約束したからだという。11月24日の参院特別委員会では「トランプ氏は私が述べたことを一言も発信していない」「しっかり約束を守っておられる」「二人の間だけにしておこうということを、相手がぺらぺらしゃべるのは信頼を損ねる」などと二人の信頼関係を強調して会談の中身については口をつぐんだ。

 アメリカと日本、どちらも国民が主権者である。主権者から政治を託された責任者同士(一方はまだ「予定者」とはいえ)が、国民に秘密にすることを前提に会談することは民主主義の見地から許されまい。秘密会談をおかしいと思わない安倍首相、トランプ次期大統領を日米両国民は、とりわけ日本の有権者は首相を、信頼できるだろうか。
安倍首相が「信頼できる」としたトランプ氏は、会談からわずか4日後、オバマ政権とともに首相が推進してきたTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱を明言した。
 トランプ次期大統領に対する安倍首相の信頼は何を根拠にしているのか、大きな疑問が浮かぶ。安倍首相に対する国民の信頼はさらに揺らいだ。

 二人の間で何が話し合われ、どんなやり取りがあったかは、今後の日米関係はもちろん、国際社会一般について考えるうえで大変重要であり、国民には知る権利がある。
 国民に知らせるべきことを隠したままの外交は、国民不在であり主権者無視である。安全保障法制をめぐる強引な憲法解釈や不誠実な答弁、度重なる強行採決など、安倍政治には国民の意思を尊重して信頼されようとする真摯な姿勢が見られない。

 国民の視線、受け止め方を考えようともしない安倍政治が生まれる土壌は、国会での議席多数という数の力への過信からくる奢り、一強多弱と言われる自民党内の情勢による精神的緩みだろう。安保法制だけではない。相次ぐ閣僚の失言、暴言などは安倍政治が重要な点で国民の方を向いていないことを物語っている。

 山本有二・農林水産相は、佐藤勉・衆院議院運営委員長のパーティでTPPの承認案について「強行採決するかどうかは、この佐藤勉さんが決める」と発言した。
 審議が始まったばかりで強行採決に言及した無神経さにはあきれるが、この発言は、国会の権威を損ね、審議する議員、その背後にいる多数の有権者を無視している。

 萩生田光一・官房副長官は、シンポジウムで野党の国会対応を「田舎のプロレス」にたとえ「茶番だ」と揶揄した。これまた野党議員とそれらの議員に負託した有権者が目に入っていない発言だ。国会での審議を政争としかとらえられないという、議会制民主主義についての無知、無理解が根底にある。
 まだある。沖縄県の米軍ヘリパッド工事に反対する市民に警備の警察機動隊員が「土人」と叫んだことについて、鶴保庸介・沖縄北方担当相は「差別と断じることはできない」と述べた。山本氏と萩生田氏は発言を撤回して謝罪したが、鶴保氏は「言論の自由はだれにもある」などと批判をはね返している。

 政府も大西健介衆院議員の質問主意書に対する答弁書で「土人という言葉には、『未開の土着人』という軽侮の意味のほか『その土地に生まれ住む人』などの意味もあり一義的に断定できない。訂正や謝罪は不要」とした。
 しかし、「土人」発言の主や情況を考えると警官は「差別」の意思を持って発言したことが明らかだ。沖縄県民の苦難を理解していればこんな言葉が出てくるはずはない。
 まして重い基地負担に苦しむ県民に寄り添い、県民の立場で考え行動するのが沖縄担当相の使命だ。警官の発言を県民とともに怒るのがまともな反応であろう。沖縄の深刻な基地被害、負担軽減を求める県民の願いと正面から向き合おうとするなら、国語辞典の引用で煙に巻くような釈明はできないはずだ。

 安倍首相の“駆けつけ警護”ならぬ“駆けつけ会談”とその後の沈黙、山本農相らの饒舌などを突発的、一過性のものと捉えると本質を見誤る。首相の秘密会談と沈黙は歴代自民党政権がとってきた米国追随路線の延長線上にあると言えるし、国民が視野に入っていない点で閣僚の失言などと根は同一、同質と言えよう。

 安倍政権には安保法制に異議を唱えた、あれだけ大規模な国民の動きが見えなかった。いや見ようとしなかった。それでも有権者は参院選で自民党を大勝させた。
米国民は選挙戦で極端、乱暴な発言を繰り返したトランプ氏を当選させたものの、「トランプ氏の率いる米国」への不安が消えない。日本の一部にはそんな米国と米国民を冷ややかに眺める雰囲気がある。

 でもアメリカを笑ってはいられない。トランプ氏を大統領に選んだのが米国民であると同じように、安倍政権を誕生させたのは日本の有権者である。そのことを肝に銘じて、安倍政権を厳しく監視、チェックして、政治の流れを変えたい。
政界では来春の衆院解散、総選挙の噂が流れている。この国をどこへ導くのか、主権者にも責任ある判断、行動が求められている。

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