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アジア太平洋地域防衛に軸足を移した米国
米国防総省のヘーゲル国防長官は2月4日、2015会計年度(14年10月~15年9月)の国防方針の基本計画を発表した。 戦費を除く基本予算は、前会計年度より約 5・9%少ない4956億㌦(約50兆6000億円)。 イラク、アフガニスタン戦争時には約 57万人に達した現役の米陸軍兵力は、44万~45万人に削減される。 しかし、米戦略の見直しに過ぎず、軍縮への一歩とはとても思えない。
台頭する中国をにらみ、米国のプレゼンスを示す
今回の国防政策見直しは、大規模な地上作戦から海や空、宇宙、サイバー攻撃へ転換を決意した結果とみられている。 一方、オバマ大統領は2012年にアジア太平洋地域の海軍力強化を打ち出しており、中国の台頭を念頭に、強力なプレゼンスを示したものと観測できる。
ワシントン共同電によると、このほか ① 2020年度までに米海軍艦船の60%を太平洋地域に重点配備。 日本に拠点を持つ米海軍は極めて重要で、これを強化する ② (在沖縄を含む)海兵隊のグアム移転を進める ③ オーストラリアや日本、韓国、 フィリピン、タイとの同盟関係を強化する努力がリバランスの中心的取り組み ④ 中国は急速な軍拡を進めている――などが盛り込まれている。 明らかに、米国がアジアに軸足を移した戦略である。
中国は13兆円を超す防衛予算
中国人民代表大会(全人代)は2月5日、2014年の国防予算案を発表した。前年実績費 12・2%増の8082億3000万元(約 13兆4000億円)と、 米国に次いで第2位の防衛予算だ。因みに日本の防衛予算は、2002年度が最大で4兆9560億円。以後は減少している。 ストックホルム国際平和研究所の統計によると、日本は米、中、仏、英、ロシアに次いで世界6位という。
在沖米海兵隊のグアム移転は、何時になるやら…
ここで気になるのは、在沖米海兵隊のグアム移転のことだ。すでに米国は方針を示しているが、その後の進展は見られない。 普天間飛行場の5年後返還を目指すというが、具体的動きはなく、辺野古(名護市)移設の見通しも全く立っていない。 年末に沖縄県知事選が予定されており、政府自民党は今から選挙対策に追われている。 「米軍基地問題」 こそ最優先課題なのに、政府の〝成り行き任せ〟の姿勢は許せない。
3月5日付本欄で 「大国の驕り」 を指摘したが、軍事優先の大国に物言わぬ日本外交の惨めさを慨嘆するばかりだ。 大国が貿易や環境を守るため競い合うのは大いに結構なことだが、軍拡競争の愚に早く気づかなければ、地球の荒廃は続くばかりである。
(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。
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