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「疑惑隠し解散」による総選挙に主権者はどう行動するべきか

寄稿:政治経済学者 植草 一秀

2017年10月10日

 9月28日に衆議院が解散され、10月10日公示、10月22日投票の日程で衆議院総選挙が実施される。日本国憲法は第69条に内閣不信任決議案が可決された場合に衆議院解散を選択できることを定めているが、内閣総理大臣の独断による衆議院解散を規定していない。憲法第7条の天皇国事行為規定による解散は天皇の政治利用そのものであり、この規定を利用して内閣が自己都合で衆議院を解散することには正当性がないと考えられる。解散権の濫用を防ぐための制度確立が急務である。
 安倍首相は2019年10月に消費税率を10%に引き上げる際に、増収分の一部を社会保障費以外に充当することの是非を問う選挙だと述べたが、まったく説得力を持たない。それ以前に、この消費税増税の是非を問うことが先決で、安倍氏が率いる自公の与党勢力は、はなから劣勢に追い込まれた。
 2016年の通常国会は6月18日に閉幕したが、会期末には共謀罪創設に関連して与党が委員会採決を省略して本会議での採決を強行。議論が不十分であるとの批判が渦巻くなかで共謀罪創設が強行された。通常国会では森友学園、加計学園などに関する巨大不正疑惑が論議され、安倍首相による政治私物化に対する批判が沸騰した。
 通常国会が閉幕されると直ちに、野党は首相の疑惑を解明するための国会召集を求め、安倍内閣は憲法第53条の規定により、臨時国会の召集を義務付けられた。ところが、安倍内閣は3ヵ月以上も国会招集の義務を果たさなかった。そして、ようやく9月28日に国会を召集したが、この冒頭で安倍内閣は衆議院を解散した。
 この間、安倍首相は内閣改造を実施。当然のことながら、所信表明などが必要であるが、一切の国会審議を封印して安倍首相は衆院解散を強行したのである。文字通りの「もりかけ隠し解散」であり、権力を私物化する暴挙であると言わざるを得ない。

 安倍首相は森友学園疑惑をめぐる国会答弁で、「自分や妻が関係していたら総理大臣も国会議員もやめる」と明言した。加計学園疑惑では、「働きかけていたら責任を取る」と明言した。両疑惑に安倍首相や昭恵夫人が深く関わったことはすでに明らかにされており、安倍首相は国会答弁に従って直ちに辞任するべきだ。
 ところが、安倍首相は責任を取るどころか、この選挙に勝利して続投する姿勢を示している。したがって、日本の主権者は、この選挙において、何よりもまず、安倍政権の存続を認めるのか否か。この点を判断する必要がある。安倍政権の存続を許さないと判断する主権者は、必ず投票所に足を運び、安倍政権与党である自民党と公明党が敗北するよう、対立候補、対立政党に投票しなければならない。
 しかし、これだけでは総選挙にいかに対応するべきかとの問いに対する回答は導かれない。自公以外の政党が多数存在し、その中のどの政党に、どの候補者に投票するべきかが定まらないからだ。
 衆院解散後に東京都知事の小池百合子氏が新党を立ち上げ、民進党の立候補予定者の多数がこの新党に合流する動きを示すなど、各陣営の動きが活発化してきた。主権者は、それらの変動の本質を見極めたうえで、適切に行動しなければならない。そのための指針を示しておきたい。

 衆議院選挙によって選出された国会議員が国会において内閣総理大臣を指名する。その総理が新しい内閣を作る。内閣は行政権を掌握し、行政を執行する。つまり、衆議院総選挙は政権を創設するための選挙であり、主権者はどのような政権の誕生を求めるのかを考えて投票することが求められる。
 政権を選択するということは、政策を選択するということである。選挙に臨む各勢力が、政権を担う場合にどのような政策を実現するのかについて主権者に公約を明示する。この政策公約を吟味して主権者は投票に臨むことになる。ただし、政権を担った後に公約を一方的に破棄するような背徳の政治勢力も存在するから、そうした信頼性をも吟味して投票行動を決定しなければならない。
 今回の総選挙で焦点が当てられる政策テーマが三つある。第一は戦争法制・憲法改定、第二は消費税増税、第三は原発稼動である。主要な政治勢力は、①安倍首相が率いる政権与党の自公、②小池百合子東京都知事が率いる希望などの与党補完勢力、③反安倍政治を明示する立憲民主党、共産党、社民党の野党共闘勢力の三つに区分できる。
 戦争法制・憲法改定については、①自公と②希望等が肯定・推進で、③反安倍野党共闘が反対の公約を明示している。消費税については、①安倍自公だけが推進で、②希望等と③反安倍野党共闘が増税凍結、増税中止の方針を明示している。原発については、①安倍自公が推進であるのに対して、②希望等は2030年までのゼロを検討、③野党共闘が原発廃止などの方針を示している。
 いずれも重要な争点であるが、主権者の生存そのもの、基本的人権そのものに関わる最重要テーマは戦争法制、憲法改定問題ということになるだろう。この点を明確に認識して、衆議院総選挙で貴重な一票を投じる政党と候補者を選定することが何よりも大事である。
 それぞれの政治勢力においては、すべての地域に住む主権者が三つの選択肢から自分の考えに合う候補者に投票できる「選択権」を付与するために、「一選挙区一候補者」を擁立することを責務と考えるべきであろう。
 日本の政治体制、日本の未来を決めるのは、私たち主権者である。その決定権を行使できる最重要の機会が衆院総選挙である。その機会を無にせぬよう、必ず選挙に参加することが求められる。個人的な判断を最後に付け加えると、私は、戦争法制を廃止するとともに憲法改悪を阻止すること、原発稼動の即時ゼロ、消費税減税の実施が望ましい政策路線であると考えている。この考えにもっとも近い政党および候補者に清き一票を投じる考えである。

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