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政権選択ではない衆院選の意味
~与党大勝は現状維持ではない~

寄稿:弁護士 大城 聡

2017年10月21日

1 アクセルを踏み込むのか?ブレーキをかけるのか?

 今回の衆院選は、政権選択の選挙ではありません。
  「首相は、AさんとBさんのどちらが良いか?」、
  「C党中心の政権とD党中心の政権のどちらが良いか?」
 という二者択一のわかりやすい選挙ではありません。

 しかし、今回の衆院選の結果は、今後の日本にとって極めて重要です。

 安倍首相の目指す日本の姿に向けて、

 “アクセル”を踏み込むのか、“ブレーキ”をかけるのか、

 その分かれ道に私たちは立っているのです。

 各報道機関の終盤情勢が出て、与党(自民党・公明党)で300議席を超えると報じられています。

 このまま300議席を超えれば「与党大勝」と言って良いでしょう。

 与党が大勝すれば、①安倍政権の継続は強く信任され、②安倍首相の主導する2020年憲法改正は一気に加速します。

 与党が大勝すれば、安倍首相の目指す日本の姿に向けて“アクセル”が一気に踏み込まれ、急加速することは明らかです。それは現状維持ではありません。そうなれば、この衆院選は、日本のあり方を大きく変える岐路になるでしょう。

 安倍首相の目指す日本の姿に向けて、“アクセル”を踏み込むのか、“ブレーキ”をかけるのか、その分かれ道に私たちは立っているのです。

 
2 憲法改正は、国の土台を作り替えること

 改憲は安倍首相の悲願です。自民党は公約に憲法9条自衛隊明記を書き込みました。公明党は、憲法9条自衛隊明記にやや慎重な立場ですが、明確に反対しているわけではありません。日本維新の会は、「国民の生命・財産を守るための9条改正」を掲げています。希望の党も、小池百合子代表が憲法9条自衛隊明記は、「屋上屋にならないか」と首相提案に疑念を呈していますが、明確に反対しているわけではありません。

 このような状況で、与党が大勝すれば、公明党は安倍首相に配慮して、首相提案に賛成せざるを得なくなる可能性が高まります。また、例えば、自民党と希望の党が、9条改正とその他の改憲項目で合意すれば、政権の枠組みにかかわらず、憲法改正の発議が可能になります。一気に憲法改正の発議がなされることも考えられます。

 そうすれば、来年には、憲法改正の発議、そして国民投票ということが現実になります。

 憲法は、私たちが生きる社会の土台です。
 憲法改正はその土台を作り替えることです。
 現状維持ではなく、現状を大きく変貌させることです。

 しかも、憲法9条自衛隊明記は、平和主義を掲げてきた戦後日本の歩みを大きく変えるものです。

 決して現状維持ではありません。

 
3 国家の本質を変える憲法9条自衛隊明記

 憲法9条自衛隊明記は、「自衛隊の存在を憲法でも認めよう」という単純なものではありません。

 平和主義を支えてきた憲法9条2項を「障害物」として、「死文化」させるものです。戦後日本の安全保障のあり方が全否定される内容です。これを現状維持ということはできません。

 その意図するところが明確に書かれている論文があります。
 日本会議政策委員である伊藤哲夫氏が代表を務める日本政策研究センターの『明日への選択』(2016年11月号)に掲載された小坂実日本政策研究センター研究部長による「今こそ自衛隊に憲法上の地位と能力を!」という論文です。

 そこでは、戦力不保持を定めた憲法9条2項を「障害物」と呼び、自衛隊明記による憲法改正で9条2項を「死文化」させるべきだと書かれています。
安倍首相の提案する自衛隊明記は、このような意味があるのです。

 別の表現をすれば、軍隊を持たない国から軍隊を持つ国への変貌です。そうすれば、防衛費への歯止めもなくなり国家予算の使い方にも大きな変化が出てくるでしょう。決して現状維持ではないのです。

「戦力」の保持を禁じ、自衛隊の能力を不当に縛っている9条2項は、今や国民国家の生存を妨げる障害物と化したと言っても決して過言ではない。速やかに9条2項を削除するか、あるいは自衛隊を明記した第3項を加えて2項を空文化させるべきである。

                 「今こそ自衛隊に憲法上の地位と能力を!」

 
4 一票の使い方で“ブレーキ”をかける

 安部首相が掲げる「戦後レジームからの脱却」は、戦後日本の歩みの否定であり、実は自民党が築いてきた戦後政治の否定でもあります。

 与党が大勝すれば、現状維持ではなく、安倍首相の目指す日本の姿に向けてアクセルが一気に踏み込まれ、急加速するでしょう。心からそれが望ましいと思っている人は、小選挙区も比例代表も与党に投票するのが最善の選択です。

 しかし、そうではない人には、いつもは与党支持の人にも、これから投票先を決めようと思っている人にも、ぜひ自分の一票をどのように使うか、少しだけ立ち止まって考えていただきたいと思います。

 与党が勝利すれば、現状維持だろうと考える人が多いかもしれません。
 安倍さんが特に良いわけでもないが、他に代わる政党、政治家がいないから与党で良いだろうと考える人もたくさんいるかもしれません。
 長年、自民党にお世話になってきたから自民党という人も多くいると思います。

 与党大勝がもたらす結果は、決して現状維持ではありません。

 森友学園や加計学園の問題を、しっかりと説明するように求める声も、与党の大勝によってかき消されるでしょう。

 自民党内や対公明党との関係でも、安倍首相の主導力は強くなります。全力でアクセルを踏む込む安倍首相に対して、ブレーキをかけようとする声は急速に力を失うでしょう。自民党や公明党の中の穏健な意見も排除されるのです。

 そのような結果を、大多数の国民が望んでいるのであれば、私の望む結果とは異なりますが仕方がないと思います。しかし、安倍内閣の不支持率は支持率よりも高くなっています。本当に安倍首相にアクセルを踏み混ませて良いのでしょうか。

 安倍首相の目指す日本の姿に向けて、“アクセル”を踏み込むのか、“ブレーキ”をかけるのか、その分かれ道に私たちは立っているのです。

ブレーキをかけることができるのは、主権者である私たちの一票です。

 現状維持を求めるのであれば、
 いつもは与党支持の人も
 今回は野党に投票してブレーキをかけることができます。

 小選挙区はいつもの与党候補に一票。
 しかし比例代表はブレーキをかけるために野党に一票。
 このような投票もできます。

 私は、一票の力を信じています。
 だから、その一票を本気で考えて、投じてほしいと願っています。
 これはその願いを込めたささやかな提案です。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 
                 (「LAWYER SATORU OSHIRO 弁護士 大城 聡」より)

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