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【NPJ通信・連載記事】憲法9条と日本の安全を考える/井上 正信

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【改訂版】
批判バージョン
「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答

2014年8月9日

7月15日に「批判バージョン『国の存立を全うし、国民を護るための切れ目のない安全保障法制について』の一問一答集」をNPJにアップしました。この時点の一問一答集は全22問でした。

その後、政府は設問を35に増やした改訂版一問一答集を内閣官房HPへアップしました。これまでの22問に新たな問答を追加したものです。世論の批判を意識した設問の追加と思われます。

この機会に、7月15日にアップした批判バージョンにも手を入れて改訂版を作成しました。「改訂版批判バージョン『国の存立を全うし、国民を護るための切れ目のない安全保障法制について』の一問一答集」です。

【問1】 集団的自衛権とは何か?

(答え) 集団的自衛権とは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利です。しかし、政府としては、憲法がこのような活動の全てを許しているとは考えていません。今回の閣議決定は、あくまでも国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限度の自衛の措置を認めるだけです。他国の防衛それ自体を目的とするものではありません。

(批判) 政府は40年以上集団的自衛権行使は憲法9条で禁止されていると解釈してきましてきました。急にその解釈を変えるのは、立憲主義に反します。集団的自衛権はあくまでも他国の防衛です。それが我が国の安全に関わるとしても、我が国への武力攻撃がないのですから、他国の防衛目的であることは明白です。

【問2】 我が国を取り巻く安全保障環境の変化とは、具体的にどのようなものか?

(答え) 例えば、大量破壊兵器や弾道ミサイル等の軍事技術が高度化・拡散し、北朝鮮は日本の大部分をノドンミサイルの射程に入れており、また、核開発も行っています。さらに、グローバルなパワーバランスの変化があり、国際テロの脅威や、海洋、サイバー空間へのアクセスを妨げるリスクも深刻化しています。

(批判) 大量破壊兵器や運搬手段の拡散は、集団的自衛権で抑止できるものではありません。これを禁止する国際法と国際的なレジュームの構築が必要です。北朝鮮の弾道ミサイルの脅威は集団的自衛権ではなく日本の個別的自衛権の問題です。国際テロの脅威はそもそも軍事的抑止が効かない脅威です。グローバルなパワーバランスの変化でなぜ集団的自衛権行使になるのでしょうか。とうてい理解不能な理由付けです。海洋/サイバー空間へのアクセスを妨げるリスクも国際法と国際協力の枠組みの強化で解決すべきで、集団的自衛権行使による抑止力で解決を図ることは出来ません。

【問3】 なぜ、今、集団的自衛権を容認しなければならないのか?

(答え) 今回の閣議決定は、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しさを増す中、我が国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るため、すなわち我が国を防衛するために、やむを得ない自衛の措置として、必要最小限の武力の行使を認めるものです。

(批判) この問いはこれまでの憲法解釈を根本的に変更するだけの事情(立法事実)があるのかを尋ねるものです。答えはそれに対して何ら答えていません。なぜ個別的自衛権で不十分なのか、集団的自衛権行使をすれば国の存立と国民の命、平和な暮らしが守れるのか、逆に集団的自衛権を行使することで国民が犠牲を強いられることはないのかなど、また、なぜ時間をかけても憲法改正という手順を踏まないで閣議決定で集団的自衛権を容認するのかなど肝心のことには何ら答えていません。ごまかしです。

【問4】 解釈改憲は立憲主義の否定ではないのか?

(答え) 今回の閣議決定は、合理的な解釈の限界をこえるいわゆる解釈改憲ではありません。これまでの政府見解の基本的な論理の枠内における合理的なあてはめの結果であり、立憲主義に反するものではありません。

(批判) この閣議決定はこれまでの政府見解の論理では許されない集団的自衛権行使を容認するもので、これがなぜ合理的な解釈の限界を超えない、立憲主義に反しないと言えるのか説明になっていません。

【問5】 なぜ憲法改正しないのか?

(答え) 今回の閣議決定は、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために必要最小限の自衛の措置をするという政府の憲法解釈の基本的考え方を、何ら変えるものではありません。必ずしも憲法を改正する必要はありません。

(批判) この閣議決定はこれまでの政府見解の論理では許されない集団的自衛権行使を容認するもので、これがなぜ合理的な解釈の限界を超えない、立憲主義に反しないと言えるのか説明になっていません。安倍首相は海外では安全保障の法的基盤を変更したと自慢していることを忘れたのでしょうか。国内向けに「チョットだけよ」といっても通用しません。

【問6】 今後、更に憲法解釈を変更して、世界各国と同様に国際法上合法な集団的自衛権の行使を全面的に認めるようになるのではないか?

(答え) その場合には憲法改正が必要です。なぜなら、世界各国と同様に集団的自衛権の行使を認めるなど、憲法第9条の解釈に関する従来の政府見解の基本的な論理を超えて武力の行使が認められるとするような解釈を現憲法の下で採用することはできません。

(批判) そもそも集団的自衛権行使が禁止されてきたのは、自衛権行使の三要件のうち①我が国への武力攻撃の発生がないためです。必要最小限度の行使かどうかという「量の問題」ではなく「質の問題」なのです。閣議決定はこの第一要件を変更したのですから、この問に対して「その場合には憲法改正が必要です。」と説明しても、何時又現在の閣議決定を変更するか判らないではありませんか。

【問7】 国会での議論を経ずに憲法解釈を変えるのは、国民の代表を無視するものではないか?

(答え) 5月に総理が検討の方向性を示して以降、国会では延べ約70名(※註)の議員から質問があり、考え方を説明してきました。自衛隊の実際の活動については法律が決めています。閣議決定に基づき、法案を作成し、国会に十分な審議をお願いしていきます。

(批判) 5月15日安保法制懇報告書が発表され総理記者会見で政府の「基本的方向性」を述べた後、衆参でそれぞれ1日ずつ集中審議がなされただけです。閣議決定後の国会審議も同じです。その中でも安倍総理は政府の「基本的方向性」とは異なる答弁をしましたし、問題や疑問はさらに深まっただけです。法案提出後十分審議するといっても、それは言い逃れです。世論は閣議決定をする前に十分国会での議論と国民的な議論を求めているのです。

【問8】 議論が尽くされておらず、国民の理解が得られないのではないか?

(答え) この論議は第一次安倍内閣時から研究を始め、その間、7年にわたりメディア等で議論され、先の総選挙、参院選でも訴えてきたものです。5月に総理が検討の方向性を示して以降、国会では延べ約70名(※註)の議員から質問があり、説明してきました。今後も皆様の理解を頂くよう説明努力を重ねます。

(批判) 第一次安倍内閣では、安保法制懇という密室(たった13人です)の中での、いわば仲間内での議論だけでした。第二次安倍内閣での安保法制懇も同じメンバーです(1名加えただけ)。自民党は総選挙公約では、国家安全保障会議設置、国家安全保障基本法と国連平和協力一般法制定は掲げましたが、集団的自衛権行使のための憲法解釈見直しは掲げていません。国家安全保障基本法がどのような内容かも記載していません。参議院選挙公約も同じです。2010年の総合政策集でも同様です。選挙では全く争点にもせず公約にもしていないことを、国民の疑問や不安を無視して強行しているのです。国民が理解していないことは各種世論調査の結果から明白です。

【問9】今回の閣議決定は密室で議論されたのではないか?

(答え) これまで、国会では延べ約70名(※註)の議員からの質問があり、総理・官房長官の記者会見など、様々な場でたびたび説明し、議論しました。閣議決定は、その上で、自民、公明の連立与党の濃密な協議の結果を受けたものです。

(批判) 自公協議は全くの密室での協議でした。協議に加わった議員以外の与党議員はどんな議論をしているかすら知らなかったくらいです。いくら濃密な協議をしたと称しても、密室の中での協議では、国民には何を議論したのかわかりません。国会での審議については問7で批判したとおりです。

【問10】 今回拙速に閣議決定だけで決めたのは、集団的自衛権の行使に向けた政府の独走ではないか?

(答え) 閣議決定は、政府が意思決定をする方法の中で最も重い決め方です。憲法自体には、自衛権への言及は何もなく、自衛権をめぐるこれまでの昭和47年の政府見解は、閣議決定を経たものではありません。今回の閣議決定は、時間をかけて慎重に議論を重ねた上で行いました。今回の閣議決定があっても、実際に自衛隊が活動できるようになるためには、根拠となる国内法が必要になります。今後、法案を作成し、国会に十分な審議をお願いしていきます。これに加え、実際の行使に当たっては、これまでと同様、国会承認を求めることになり、「新三要件」を満たしているか、政府が判断するのみならず、国会の承認を頂かなければなりません。

(批判) 集団的自衛権行使は憲法上禁止されているとの81年政府答弁書は閣議決定されたものです。今回の閣議決定は、自公の密室での協議でなされたものです。5月20日から7月1日まで合計11回の密室協議が開かれただけで憲法9条の解釈を変更するという、いわば国民から憲法を取り上げると言える暴挙です。政府の都合で自公協議も急がせました。防衛法制の制定を国会で審議するからといっても、今回の閣議決定は集団的自衛権行使に向けた重要なステップですから、政府の独走であることには何ら変わりません。

【問11】 今回の閣議決定で議論は終わりなのか?

(答え) 今回の閣議決定は、自民、公明の連立与党の濃密な協議の結果に基づき、政府として新しい安全保障法制の整備のための基本方針を示したものです。今後、閣議決定に基づき、法案を作成し、国会に十分な審議をお願いしていきます。

(批判) 防衛法制の改正、制定のため国会で法案審議することは当たり前のことです。だからといって閣議決定の暴挙が免責されるものではありません。国会での十分な審議といいますが、政府は秘密保護法案と同様に、特別委員会を設置し、短期間集中審議で防衛法制の改正、制定を狙っていると報道されています。十分な審議がなされるとの保障はありません。

【問12】 憲法解釈を変え、平和主義を放棄するのか?

(答え) 憲法の平和主義を、いささかも変えるものではありません。大量破壊兵器、弾道ミサイル、サイバー攻撃などの脅威等により、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しくなる中で「争いを未然に防ぎ、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために、いかにすべきか」が基点です。

(批判) 集団的自衛権は日本が武力攻撃を受けていないにもかかわらず、多国間の武力紛争へ日本が武力で荷担することを可能にします。国連の軍事的措置への参加は、ある国に対する集団的な武力制裁です。日本がこれらの武力行使を海外で出来るようになるということは、憲法9条を完全に無視することです。憲法の恒久平和主義の放棄です。政府が述べる平和主義とは軍事的抑止力による平和です。これは憲法の恒久平和主義とは正反対のものです。

【問13】 憲法解釈を変え、専守防衛を放棄するのか?

(答え) 今後も専守防衛を堅持していきます。国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを、とことん守っていきます。

(批判) 専守防衛とは憲法9条の下で採用されてきた日本独特の防衛政策です。「相手からの武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のため必要最小限度にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛態勢」と定義されてきました。専守防衛政策は個別的自衛権行使に限定されている政策なのです。閣議決定はこの定義を完全に破壊しています。これを「専守防衛」というなら、米国も英国もイタリアもフランスもすべての国は「専守防衛国家」になります。言葉のごまかしで閣議決定の重大な意味をごまかそうとするものです。

【問14】 戦後日本社会の大前提である平和憲法が根底から破壊されるのではないか?

(答え) 日本国憲法の基本理念である平和主義は今後とも守り抜いていきます。

(批判) 日本国憲法の基本理念を破壊することは明らかです。これまでの政府解釈では、個別的自衛権行使以外では武力行使は出来ない、国際平和協力でも武力行使は出来ない、国連の集団的措置へは武力による参加は出来ないというものが、憲法9条の最後の歯止めになっていました。これをすべて出来るようにする閣議決定がどうして「日本国憲法の基本理念である平和主義を守り抜く」と言えるのでしょうか。閣議決定の平和主義とは軍事的抑止力による平和を達成しようとするもので、「日本国憲法の基本理念である平和主義」とは正反対のものです。同じ「平和主義」という言葉を使ってもその意味内容はこの様に異なるのです。決して言葉に惑わされてはいけません。

【問15】 徴兵制が採用され、若者が戦地へと送られるのではないか?

(答え) 全くの誤解です。例えば、憲法第18条で「何人も(中略)その意に反する苦役に服させられない」と定められているなど、徴兵制は憲法上認められません。

(批判) 以下の【問16】と併せて批判します。

【問16】 今回、集団的自衛権に関して憲法解釈の変更をしたのだから、徴兵制も同様に、憲法解釈を変更して導入する可能性があるのではないか?

(答え) 徴兵制は、平時であると有事であるとを問わず、憲法第13条(個人の尊重・幸福追求権等)、第18条(苦役からの自由等)などの規定の趣旨から見て許容されるものではなく、解釈変更の余地はありません。

(批判) 憲法第18条で徴兵制が憲法違反であるとされたのは、憲法第9条があるからです。閣議決定は憲法9条を丸ごと否定する内容ですから、憲法第18条を解釈で変更することはもっとたやすいでしょう。徴兵制も憲法違反ではないとする政府解釈が将来登場しないとの保障はありません。石破幹事長は、徴兵制が苦役であるとか奴隷的拘束であるというのは理解しがたいと述べています。憲法9条の意義すら否定する閣議決定がなされたのですから、いくら憲法上認められませんと言っても信用できません。これも嘘とごまかしの類いです。私は直ちに徴兵制を制定するとは考えていません。しかし、憲法違反でなくなれば、後はその必要性が出たときには政策選択として徴兵制を制定することを可能にするということが重大な問題なのです。

【問17】 日本が戦争をする国になり、将来、自分達の子供や若者が戦場に行かされるようになるのではないか?

(答え) 日本を戦争をする国にはしません。そのためにも、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中で、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために、外交努力により争いを未然に防ぐことを、これまで以上に重視していきます。

(批判) 答えは問いに正面から答えていません。肝心なことを隠しています。争いが防げない場合には集団的自衛権を行使するということをなぜ正直に答えないのでしょうか。集団的自衛権を行使できるようになれば、米国が武力行使を決意して軍事的貢献を求められれば、米国の戦争に日本が参加することは間違いありません。軍事力を背景にした外交が失敗すれば、武力紛争になることを(答え)は説明を避けています。日本はまさに戦争をする国になるのです。将来自分たちの子供や若者が戦場に行かされるようになる可能性があります。それだけではなく、私達自身も敵国からの攻撃やテロによる破壊活動で無事ではすまないかも知れません。

【問18】 自衛隊員が、海外で人を殺し、殺されることになるのではないか?

(答え) 自衛隊員の任務は、これまでと同様、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるというときに我が国と国民を守ることです。

(批判) この答えも問に正面から答えていません。国の存立を守るためと称して、自衛隊員が海外で血を流すことになるということを、どうして率直に答えないのでしょうか。これをごまかしと世間では言います。安倍晋三首相がそのことを判っていないなら首相失格です。判っていてもそれを言えないなら(それほどの覚悟がないなら)こんな閣議決定をすべきではありませんでした。この様な無責任な首相の下で命をかける自衛隊員は不幸です。

【問19】 今回の閣議決定で、自衛隊員が戦闘に巻き込まれ血を流すリスクがこれまで以上に高まるのではないか?

(答え) 自衛隊員は、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえること」を宣誓して、任務に当たっています。自衛隊員がいざという時に備えて日頃から厳しい訓練を徹底的に行っている理由はただ一つ。国民の命と平和な暮らしを守るためであり、そのために、他に手段がないからです。新たな法整備により与えられる任務は、これまで同様、危険度の高い任務になります。あくまでも、国民の命と平和な暮らしを守り抜くためのものであるという自衛隊員の任務には、何ら変更はありません。自衛隊員が、海外で、我が国の安全と無関係な戦争に参加することは断じてありません。また、我が国の安全の確保や国際社会の平和と安定のために活動する他国の軍隊に対して、いわゆる後方支援といわれる支援活動を行う場合については、いかなる場所で活動する場合であっても、これまでと同様、自衛隊の部隊の安全を確保しつつ行うことは言うまでもありません。

(批判) 自衛隊員の服務の宣誓(賭命義務の宣誓)は「我が国の平和と独立を護る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法と法令を遵守し」となっています。その後で【答】で引用された文言に続くのです。これは我が国に対する武力攻撃が発生した場合のことを述べているのです。集団的自衛権行使のための宣誓ではありません。我が国防衛という任務から他国の防衛へと自衛隊員の任務は根本から変わります。我が国に対する武力攻撃以外のケースで、米国の戦争などに自衛隊員が命をかけるなど断じてあってはなりません。他国に対する後方支援活動で自衛隊員の安全を確保することは当然ですが、そのために「非戦闘地域」での活動に限定してきたのです。憲法9条が自衛隊員の安全を確保してきたのです。閣議決定はこれまでの「非戦闘地域」からさらに危険な地域での活動を行わせるもので、自衛隊員の安全確保などとうてい出来ないでしょう。

【問20】 歯止めがあいまいで、政府の判断次第で武力の行使が無制約に行われるのではないか?

(答え) 国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置としての武力の行使の「新三要件」が、憲法上の明確な歯止めとなっています。さらに、法案においても実際の行使は国会承認を求めることとし、国会によるチェックの仕組みを明確にします。

(批判) 新三要件では、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」が第一要件です。この要件の判断は、「集団的自衛権などに関する政府見解」によると、「『新三要件』に該当するか否かは政府がすべての情報を総合して客観的、合理的に判断する。」と説明しています。ではそれが果たして要件に該当するか検証しようとしても、秘密保護法で国民や国会には隠されます。結局政府の判断を信用しなさいと述べているようなもので、国会のチェックも機能しないでしょう。何らの歯止めにはなりません。

【問21】 国会で議論されている「新三要件」に言う「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」の有無は、どのような基準で判断するのか?

(答え) 現実に発生した事態の個別・具体的な状況に即して、主に、攻撃国の意思・能力・事態の発生場所、その規模・態様・推移などの要素を総合的に考えて、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから、「新三要件」を満たすか否か客観的、合理的に判断します。

(批判) いろいろの考慮条件を挙げていますが、どれもこれも抽象的で且つ主観的要件です。それを政府が総合的に判断するのですから、明確な基準ではありません。しかもこれらの基準に適合するかどうかのチェック、検証は、秘密保護法のベールで包まれるのですから、国民も国会も出来ないでしょう。唯一はっきりした基準は、政府にすべてお任せというものです。秘密保護法が国民主権と民主主義の基盤をそこなうという意味はこのことです。

【問22】 自衛隊は世界中のどこにでも行って戦うようになるのではないか?

(答え) 従来からの「海外派兵は一般に許されない」という原則は全く変わりません。国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置としての武力の行使の「新三要件」により、日本がとり得る措置には自衛のための必要最小限度という歯止めがかかっています。

(批判) 閣議決定自体には地理的制限はどこにも述べていません。「新三要件」に該当すると政府が判断し、そのために必要と判断すれば、世界中どこでも自衛隊を派兵できます。必要最小限という要件も、何が必要最小限度なのか事態に応じて変わりうるものなので、結局政府による判断になります。そうなると【問20】で述べたとおり歯止めにはなりません。そもそも「海外派兵は一般的には許されない」のは憲法以前に国際の原則です。問題はどのような場合に海外派兵が出来るかということです。「新三要件」に該当すれば海外派兵が出来るとする閣議決定は、憲法の歯止めを完全に取り払うものです。

【問23】 国民生活上、石油の供給は必要不可欠ではないか?

(答え) 石油なしで国民生活は成り立たないのが現実です。石油以外のエネルギー利用を進める一方で、普段から産油国外交や国際協調に全力を尽くします。

(批判) これは愚問です。問題点をそらしています。石油の供給のためにはホルムズ海峡での武力紛争下でも機雷掃海という戦争行為を行うのかということが問題なのです。石油備蓄法で日本は消費量の190日分が備蓄されていることをなぜ説明しないのでしょうか。

【問24】 狭いところで幅33キロメートルの地点もあるホルムズ海峡に機雷が敷設された場合、我が国に大きな影響があるのか?

(答え) 我が国が輸入する原油の約8割、天然ガスの2割強は、ホルムズ海峡を通過しており、ホルムズ海峡は、エネルギー安全保障の観点から極めて重要な輸送経路となっています。現在、中東情勢が不安定になっただけで、石油価格が上昇し、ガソリン価格も高騰していますが、仮に、この海峡の地域で武力紛争が発生し、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合には、かつての石油ショックも比較にならない程に高騰し、世界経済は大混乱に陥り、我が国に深刻なエネルギー危機が発生するでしょう。

(批判) この答えはやたら脅威を煽るものです。日本には石油備蓄が190日分あること、ホルムズ海峡を通過せずに石油を積み出せるパイプラインが設置されていることをなぜ説明しないのでしょうか。政府と政治家の役割は、このような事態でも国民に不安や恐怖心を抱かせないように説明する責任があります。脅威を煽って国民を不安がらせて武力紛争に関わることに支持をさせるなど、まともな政府や政治家のすることではありません。

【問25】 日本は石油を備蓄しているから、ホルムズ海峡が封鎖されても「新三要件」に言う「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」に当たらないのではないか?

(答え) 石油備蓄が約6ヶ月分ありますが、機雷が除去されなければ危険はなくなりません。石油供給が回復しなければ我が国の国民生活に死活的な影響が生じ、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されることとなる事態は生じ得ます。実際に「新三要件」に当てはまるか否かは、その事態の状況や、国際的な状況等も考慮して判断していくことになります。

(批判) ここでやっと石油備蓄が6ヶ月あることを述べています。しかしホルムズ海峡を通過しなくても石油が積み出せるパイプラインがあることは述べていません。このような事態が発生しないよう外交努力こそ求められています。【答】は武力行使をしなければならないような事態であると説明しようとしていますが、ホルムズ海峡での武力紛争は、自衛権の名の下イスラエルによるイランの核施設への先制攻撃から始まるものですから、機雷封鎖するしないにかかわらず、ホルムズ海峡は民間の船舶の航行は不可能になります。武力行使で解決することを考える前に、このような事態にならないよう我が国は外交努力を行うことが重要です。

【問26】 日本は石油のために戦争するようになるのではないか?

(答え) 憲法上許されるのは、あくまでも我が国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限の自衛の措置だけです。

(批判) 答えは【問】に対して、何も答えていません。一般論でごまかしています。我が国の存立が脅かされると判断すれば、ホルムズ海峡の機雷掃海をすることは安倍総理がこだわっていることです。これはまさに石油のための戦争をすることです。でも、【問24】【問25】でもホルムズ海峡の機雷封鎖がなぜ我が国の存立を脅かすのか説明にはなっていません。

【問27】 機雷の除去は、海外で武力を行使するものであり、海外派兵に当たるのではないか?

(答え) 国際紛争を力で解決するために機雷を敷設し、船舶の自由な航行を妨げることは国際法違反です。自由航行を回復するために機雷を除去することは、国際法上は武力の行使に分類されますが、機雷の除去は受動的、限定的な行為であり、敵を撃破するための大規模な空爆や地上戦とは、性格が大きく異なります。機雷の除去を行う自衛隊の船舶は攻撃的なものではなく、木や強化プラスチックでできており脆弱なため、まさに、そこで戦闘行為が行われているところに派遣して、機雷の除去を行うことは、想定されません。

(批判) 答えは一般論でごまかしています。何もないのにいきなり公海や領海内に機雷を敷設する国などありません。現実のあり得るケースはイランとイスラエルとの武力紛争です。その場合イランが自国領海内に機雷を敷設することは国際法違反ではありません。武力紛争がイランの核施設へのイスラエルによる先制攻撃で始まり(イスラエルにはその前科があります。81年6月イラクが建設中の原子力発電所へイラン空軍が爆撃しました。)、米国や日本が集団的自衛権を行使すれば、違法な武力行使になります。ホルムズ海峡での機雷掃海を想定すれば、自衛隊の掃海部隊に対しては、イランから対艦ミサイル攻撃や航空攻撃を想定しなければなりません。当然掃海部隊の警護を行う護衛艦との戦闘行為になるでしょう。武力紛争下での機雷掃海はきわめて危険な行動なのです。機雷掃海自体は確かに限定的な行動ですが、それに伴う戦闘行為は決して限定的なものにならず、日本とイランとの本格的な武力紛争となるでしょう。答えは重大な問題を隠してごまかしています。

【問28】 従来の政府見解を論拠に逆の結論を導き出すのは矛盾ではないか?

(答え) 憲法の基本的な考え方は、何ら変更されていません。我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しくなる中で、他国に対する武力攻撃が我が国の存立を脅かすことも起こり得ます。このような場合に限っては、自衛のための措置として必要最小限の武力の行使が憲法上許されると判断したものです。

(批判) 閣議決定が従来の政府見解を論拠に逆の結論を導き出していることを、この【問】は自認しています。これを世間では矛盾と言いうのではないでしょうか。

【問29】 今回の閣議決定により、米国の戦争に巻き込まれるようになるのではないか?

(答え) 憲法上許されるのは、あくまで我が国の存立を全うし、国民の命を守るための自衛の措置だけです。もとより、外交努力による解決を最後まで重ねていく方針は今後も揺らぎません。万が一の事態での自衛の措置を十分にしておくことで、却って紛争も予防され、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。

(批判) 閣議決定は米国との集団的自衛権を行使するものです。【答】はそのことには何も言及せず避けています。その上で、あたかも個別的自衛権であるかのようなごまかしをしています。集団的自衛権を行使できるようになれば、米国の戦争に参加を求められます。米国が戦争を決意した際、日本が米国の意思に反してもそれを外交努力で解決するというのでしょうか。これまでの日米関係では絶対にあり得ない話です。日本が戦争に巻き込まれるリスクは格段に高まるはずです。【答】は典型的なウソです。

【問30】 米国から戦争への協力を要請された場合に、断れなくなるのではないか?

(答え) 武力行使を目的として、イラク戦争や湾岸戦争のような戦闘に参加することは、これからもありません。我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がない場合、他に適当な手段がある場合、必要最小限の範囲を超える場合は、「新三要件」を満たさず、「できない」と答えるのは当然のことです。

(批判) 政府が出した「想定問答集」では、新三要件に該当すれば国連の集団的(軍事的)措置へ参加できると説明しています(【問15】への答)。湾岸戦争は国連の集団的(軍事的)措置の典型例でした。これからは参加するということです。参加することはこれからもありません、というのはウソです。集団的自衛権行使が憲法上出来ないということで、米国の要請(ショウ・ザフラッグ、ブーツ・オンザグラウンド)を十分果たせず、非戦闘地域で人道支援や給油活動で済ませてこられたのです。集団的自衛権行使が可能になったら、一層断ることが出来なくなります。それこそ政府が恐れている「日米同盟の崩壊」です。新三要件は何らの限定でも歯止めにもならないことは既に述べたとおりです。新三要件ではますます断れなくなることは明らかです。憲法9条があっても日本政府はなかなか断れず、9条を拡大解釈しながら日米同盟を強化してきた歴史を思い出して下さい。

【問31】 今回の閣議決定により、必要ない軋轢を生み、戦争になるのではないか?

(答え) 総理や大臣が、世界を広く訪問して我が国の考え方を説明し、多くの国々から理解と支持を得ています。万が一の事態での自衛の措置を十分にしておくことで、かえって紛争も予防され、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。

(批判) 閣議決定を支持したのは米国の同盟国などです。一番日本に近い隣国である中国や韓国は閣議決定に対して批判や反発を強めています。歴史問題や領土紛争を抱えている中でこの閣議決定は周辺諸国と必要のない軋轢を既に生み出しています。そのことが「安全保障のジレンマ」で戦争になるリスクを高めます。答えは事態をあべこべに描くものです。

【問32】 今回の閣議決定によっても、結局戦争を起こそうとする国を止められないのではないか?

(答え) 日本自身が万全の備えをし、日米間の安全保障・防衛協力を強化することで、日本に対して戦争を仕掛けようとする企みをくじく力、すなわち抑止力が強化されます。閣議決定を受けた法案を、国会で審議、成立を頂くことで、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。

(批判)閣議決定とそれを実行する防衛法制の改正と防衛政策の展開により、周辺諸国との軍事的緊張関係が高まり、意図しない武力紛争となるリスクが高まります。また、日本が集団的自衛権を行使するからといって、世界の様々な地域での武力紛争が抑止されるはずはありません。むしろ米国との集団的自衛権や国連の集団的措置に参加することで、地球上の様々な地域での戦争に日本が巻き込まれることになります。

【問33】 武器輸出の緩和に続いて今回の閣議決定を行い、軍国主義へ突き進んでいるのではないか?

(答え) 今回の閣議決定は戦争への道を開くものではありません。むしろ、日本の防衛のための備えを万全にすることで、日本に戦争を仕掛けようとする企みをくじく。つまり抑止力を高め、日本が戦争に巻き込まれるリスクがなくなっていくと考えます。

(批判) これまで批判で述べたとおり、閣議決定は戦争が出来る国作りであることは間違いありません。政府が戦争を決意する際、秘密保護法で情報が隠されてしまい、さらに国民を動員する情報コントロールがなされるでしょうから、国民はいつの間にか政府の行為により望まない戦争に動員されることになりかねません。それに抵抗しようとすれば、秘密保護法による処罰も覚悟しなければなりません。国民主権も民主主義も踏みにじって戦争が出来る国になることを軍国主義といえば言い過ぎでしょうか。確実に日本が戦争に巻き込まれるリスクが高まります。

【問34】 今回の政府の決定が防衛予算を増加させ、軍拡競争をあおるのではないか?

(答え) 決して軍拡につながることはありません。我が国の防衛予算は、中期防衛力整備計画に基づき、5年間、毎年0.8パーセントずつ増やすことが既に決められていますが、それでも2002年の水準に戻るにすぎません。

(批判) 1年間で0.8%増やしても、5年間では1.47倍にもなります。大変な軍拡です。確実に軍拡路線を歩んでいます。第二次安倍内閣になってこれまでの軍事費削減から軍拡に転換しました。海外で戦争をする自衛隊になれば、今後ますます軍拡となるでしょう。既にオスプレイを導入する予定ですし、米海軍の強襲揚陸艦を導入しようとの動きがあります。F32戦闘爆撃機の購入も決定しています。基準排水量19,500トン(世界標準の満水排水量では26,000トンです)の護衛艦いずもを建造中です。敵基地攻撃能力保有を検討していますが、そのための巡航ミサイル、弾道ミサイルなどが必要になるでしょう。これらの軍拡は、周辺諸国とりわけ中国や韓国を刺激して、日本の軍事力増強に対抗するための軍拡競争となるおそれがあります。

【問35】 安倍総理はなぜこれほどまでに安全保障政策が好きなのか?

(答え) 好き嫌いではありません。総理大臣は、国民の命、平和な暮らしを守るために重い責任を負います。いかなる事態にも対応できるよう、常日頃から隙のない備えをするとともに、各国と協力を深めていかなければなりません。

(批判)皆さんが自由に批判して下さい。私は、安倍総理が安全保障が好きか嫌いかの問題ではないと思います。彼は戦争、武力紛争のことが判っていないのではないかと思います。彼は決して抑止が破れた後のことは語りません。戦争や武力紛争はそこから始まるのです。政治家であれば、抑止が破れた後のことを真剣に考えて、現在の防衛政策、安全保障政策を考えなければなりません。なぜなら、現在の政策のリスクを考慮しなければ、それはきわめて無責任な政策になるからです。その結果としてのリスク(武力紛争の被害)は、安倍総理ではなく私達国民と、周辺諸国民が負うからです。安全保障政策が好きか嫌いかというこの質問は私には実に腹立たしいものです。ふざけないでよ!と叫びたくなります。そんなレベルで政策を決定されてはたまりません。安倍内閣を一日も早く退陣させなければ、私達の平和と安全は危機にさらされるでしょう。

※註 人数については安保法制懇報告書提出(平成26年5月15日)から閣議決定(平成26年7月1日)の間に、国会に質問通告した議員の述べ人数

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