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【NPJ通信・連載記事】見えないものをみつめて/NPJ相川早苗

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見えないものをみつめて 傷ついた心

2014年8月9日

人を憎んだり恨んだりして生まれてくる子はいません。

心が傷ついて生まれてくる子もいません。

そうなってしまったのには

何か あったはずです。

 

傷ついた心をどう表現していいか

怒ったり 泣いたり 叫んだり

苦しみを 悲しみを

誰に言ったらいいのか

誰が救ってくれるのか

彼らは知りません。

そしていつかその鬱憤は破裂します。

 

子どもたちの犯罪の裏には大きな心の傷が隠れています。

 

少年法は変えられ 厳罰化が進み 断罪されます。

もっともっと彼らの心の叫びを聞いてあげて欲しい。

 

誰もが間違いや過ちや失敗を繰り返しながら成長していきます。

自分の間違いや過ちや失敗は素直に認め謙虚に反省し

人の間違いや過ちや失敗にはもっと寛容な世の中になればいいと思います。

 

奈良少年刑務所詩集より

詩を二編載せます。

詩・受刑者

編・寮美千子

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

くも

空が青いから白を選んだのです

 

 

寮美千子さん解説

Aくんは、普段あまりものを言わない子でした。

そんなAくんが、この詩を朗読したとたん、堰を切ったように語りだしたのです。

「今年でおかあさんの七回忌です。お母さんは病院で『つらいことがあったら、空を見て。そこにわたしがいるから』

とぼくにいってくれました。それが、最後の言葉でした。

おとうさんは、体の弱いおかあさんをいつも殴っていた。

ぼく、小さかったから、何もできなくて……」

Aくんがそう言うと、教室の仲間たちが手を挙げ、次々に語りだしました。

「この詩をかいたことが、Aくんの親孝行やと思いました」

「Aくんのおかあさんは、まっ白でふわふわなんやと思いました」

「ぼくは、おかあさんを知りません。でも、この詩を読んで、

空を見たら、ぼくもおかあさんに会えるような気がしました」

と言った子は、そのままおいおいと泣き出しました。

自分の詩が、みんなに届き、心を揺さぶったことを感じたAくん。

いつにない、はればれとした表情をしていました。

 

たった一行に込められた思いの深さ。そこからつながる心の輪。

「詩」によって開かれた心の扉に、目を見開かれるおもいがしました。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

好きな色

ぼくのすきな色は

青色です

つぎにすきな色は

赤色です

 

 

寮美千子さん(作家・奈良少年刑務所更生プログラム講師)の解説

何も書くことがなかったら、好きな色について書いてください。

そう課題をだして、Bくんが提出した作品がこれでした。

あまりにも直球。

いったい、どんな言葉をかけたらいいのか、ととまどっていると、

受講生が二人、ハイッと手を挙げました。

「ばくは、Bくんの好きな色を、一つだけじゃなくて二つ聞けてよかったです」

「ぼくも同じです。Bくんの好きな色を、二つも教えてもらってうれしかったです」

それを聞いて、思わず熱いものがこみあげてきました。

世間のどんな大人が、どんな先生が、

こんなやさしい言葉を、Bくんにかけてあげることができるでしょうか。

「Bくんは、ほんま赤と青が好きなんやなあって、よく伝わってきました」

仲間の言葉のすべてが、Bくんへの大きな励ましです。

普段、あまり表情のないBくんの顔がふわっとほころび、笑顔が咲きました。

こんなやさしい、こんな素朴な子たちが、どんな罪を犯したのだろう。

なぜ、犯罪者になったのだろう。そう思わずにはいられませんでした。

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