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【NPJ通信・連載記事】憲法9条と日本の安全を考える/井上 正信

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国家安全保障戦略、新防衛計画大綱、中期防衛力整備計画を憲法の観点から読む(3)

2014年5月6日

憲法9条に反する防衛政策
  25大綱は他にも憲法9条に反する防衛政策を定めています。

1 PKO参加五原則の見直し等
25大綱は、国際平和協力活動等につき 「幅広い分野における(自衛隊)派遣を可能にするための各種課題につい検討を行い、必要な措置を講ずる。」 と述べています。各種課題とは何か。25大綱を準備する防衛省中間報告は、警護活動、治安維持活動、宿営地の共同防衛などを挙げて、 そのための各種態勢検討の必要性を述べています。 つまり各種課題とは、現在の国際平和協力活動において憲法9条の武力行使禁止原則からできないとされている警護活動、安全確保活動、 駆けつけ警護やそのための武器使用権限の拡大(任務遂行のための武器使用、対人殺傷に刑法36条、37条の要件をはずすなど)、 他国軍隊支援のための武力行使一体化論の見直しを意味しているのです。 25大綱は、自衛隊の体制整備の重視事項で、国際平和協力活動等において 「任務遂行のために必要な防護能力を強化する。」 と述べて、 任務遂行のための武器使用を前提に、相手からの攻撃に対する防護力強化の方針まで示しています。 自衛隊海外派遣恒久法の制定も含まれるでしょう。自民党の 「防衛を取り戻す提言」 でそれを述べているのです。 22大綱は 「国連平和維持活動の実態を踏まえ、PKO参加五原則等我が国の参加のあり方を検討する」 と述べていますが、 25大綱はさらに踏み込んで 「必要な措置を講ずる。」 と述べて、解釈改憲、立法改憲をより明確にしているのです。

2 武器輸出三原則の撤廃
安保戦略も25大綱も武器輸出三原則を撤廃してこれに代わる新しい原則を定めるとしています。 22大綱が、防衛装備品の国際開発の流れを指摘しながら「このような大きな変化に対応するための方策について検討する。」 と、 武器輸出三原則という言葉も敢えて出さずに述べて、暗に見直しの方向性をおずおずと示していたことと比較すると、 25大綱は明確に見直しを方針を示したことで、解釈改憲の方向性を明確にしたといえます。 武器輸出三原則は憲法9条の精神に則った日本の基本的な外交方針で、日本の平和国家としてのブランド力を支えてきたものです。

3 国家安全保障基本法案(概要)の先取
国家安全保障基本法案(概要)は、集団的自衛権行使や自衛隊海外派遣恒久法の制定、武器輸出三原則の撤廃を規定していますが、 安保戦略、25大綱、中期防はこの法案を先取りするものとなっています。国家安全保障基本法案(概要)は、 単に集団的自衛権行使を可能にする法律というだけではありません。 日本の国の形を変え、私達の生活全般にわたり、軍事優先の価値が支配します。 戦争ができる国作りの重大な法案です。自民党改憲草案の先取りでもあります。 2013年4月1日アップした 「国家安全保障基本法案の制定と憲法96条の改正を許してはならない」 をお読み下さい。

軍拡を進める25大綱
25大綱の大きな特徴は、軍拡方針を掲げたことです。22大綱は 「効率的・効果的な防衛力整備」 の項目で、 「格段に厳しさを増す財政事情を勘案し、一層の効率化・合理化を図り、経費を抑制する」 と軍縮方針を示していました。 25大綱にはこのような記述はありません。逆に統合機動防衛力を構築するため、「『質』 及び 『量』 を必要かつ十分に確保」 と軍拡方針を明確にしました。 具体的には 「増強された護衛艦部隊」 「増強された潜水艦部隊」 「増強された航空警戒管制部隊」 「増強された戦闘機部隊」 「増強された空中給油・輸送部隊」 を保持すると、軍拡のオンパレードです。 いずれも中国との武力紛争を想定した軍備の増強分野です。中国との間で東シナ海での武力紛争を想定すれば、 海上・航空優勢を確保することが不可欠です。ところが25大綱は、これに付け加えて陸上自衛隊の機動展開能力を重視します。 尖閣諸島のように平地のほとんどない岩礁へ陸自部隊を機動展開することは考えられません。 沖縄本島や宮古島、石垣島などの先島諸島へ機動展開するのでしょうか。それは中国軍に占領される可能性を考えているのかも知れません。 占領された島嶼部を奪回するというのですから。この軍事的想定は恐ろしいものです。

25大綱を作った防衛官僚の本音は、外の箇所では、戦車や火砲を削減する内容になっているので、 海上自衛隊や航空自衛隊の戦力を増強するだけでは陸上自衛隊の不満が出るので、 陸上自衛隊も戦力を増強するということを書き込んだのではないかと思います。

結論
22大綱策定からわずか3年経過した今、なぜ新しい防衛大綱なのかという最初の疑問の答えは明らかになったと思います。 安保戦略、25大綱、中期防はいずれも安倍内閣が目指す解釈改憲、立法改憲を安保防衛政策の分野で準備、先取りをするものだということです。 それはすなわち、憲法や自衛隊法などの防衛法制にも反して、立憲主義原理も否定するものです。 25大綱も安保戦略も国会で審議されるものではありません。内閣が閣議決定するだけですから、市民の関心もそれだけ薄いものがあります。 今年は憲法改正を巡る重要な正念場になるはずです。その中心が集団的自衛権行使の憲法解釈見直しと、国家安全保障基本法の制定です。 そのような事態になる前から既にその先取りが始まっています。 国会審議のなされない安保戦略や25大綱に反対してそれを撤回させるということはできないでしょう。 しかし、集団的自衛権行使の憲法解釈見直しと、国家安全保障基本法の制定への反対運動を準備する上で、 安保戦略と25大綱の中身をしっかり理解して、批判することは重要と思います。

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