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【NPJ通信・連載記事】心の免疫・体の免疫/佐藤 義之

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第10話 風邪は万病の元

2018年2月15日

 昔から、「風邪は万病の元」と言う。

 よく、御存知の諺であるが、その意味となると、正確に理解している方は、少ないようである。
 その意味、即ち「万病の元」と言われる理由は2つある。

 1つは、大きな病気の初発症状が、風邪の症状に似ていることが多いからである。白血病の初発症状も風邪のひきはじめに似ている。だるさ、微熱等、血液の大病をうかがわせる症状はない。大病もいきなり、重症と言える症状から始まるものではない。風邪が大病につながるのではなく、風邪だと思っていたら実は大病の初発症状であったと言うことである。つまりは、「風邪だと思って軽く考えているといけない」といういましめを含んだ諺なのである。

 もう1つの理由は、医学的に、きちんと数字で裏付けされた証拠を持つ重要な事柄である。皆さん方は「免疫」というと、かなり難しい学問のように思っているが、実は案外単純なものである。「免疫」とは、「疫を免れる」即ち「病をまぬがれる」の意味である。
 実は、風邪をひいている時は、自分のリンパ球は減少していることが多い。風邪の原因は、殆ど、ウイルスである。このウイルスをやっつけるのはリンパ球である。風邪をひけばウイルスをやっつける為にリンパ球は消費される。至極、当然のことであり、リンパ球は減少する。

 ここで、1つ整理しておこう。
 ・細菌をやっつけるのは白血球である。
 ・ウイルスをやっつけるのは、白血球ではなく、リンパ球である。
 ・そして風邪の大半はウイルスが原因である。
 ・抗生物質は、細菌をやっつけるものでウイルスには無効である。

 だから、風邪をひいた時、医療機関が処方する抗生物質が是か非かの議論がよくおきる訳である。
 普通、風邪で医療機関を受診しても血液検査まで受けることはない。
 受けることがないから、風邪をひいた時、自分のリンパ球がどうなっているか知る術もないことになる。

 リンパ球の役目の1つに、ウイルスをやっつけることを御紹介したが、リンパ球には、もう1つ、極めて重要な役目がある。それは、我々の体の中に毎日出来ている3000~5000個の異型、及び、癌細胞を除去することである。毎日出来ている3000~5000個の癌細胞を、残らず日々除去してくれているからこそ、我々は、発癌しないでいられる訳である。どうして毎日、3000~5000個の癌細胞が出来るのかについては、ここでは省略させていただくが、風邪でリンパ球が減少すると、この毎日出来る3000~5000個の癌細胞の除去処理が滞り、除去出来なかった癌細胞が、やがては広がって発癌につながることになる訳である。よく風邪をひく人がいる。私から言わせていただければ、その人のリンパ球は、いつも減った状態が続いているはずであり、それだけ発癌のリスクが高い方である。
 たかが「風邪」と思っていては大間違いである。大病にならない前に風邪をひかないことが最優先である。風邪さえひかなければリンパ球も減ることはないのに、風邪を大したことと思っていない人は多い。
 先人は、我々にわかり易い言葉、諺でいろいろなことを示唆してくれている。
 絶対に「風邪は万病の元」である。

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