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沖縄……思いを行動に託す責任

寄稿:飯室 勝彦

2019年1月10日

 「沖縄県民の心に寄り添う」と連発した安倍首相が率いる政府は、沖縄の民意を踏みにじり、権力をむき出しにして新しい米軍基地を容赦なく押しつけようとしている。凄惨な地上戦の記憶が消えやらず、現代の戦争の現実も目撃してきた地と、そこに暮らす人たちに新たな負担を課しながら「負担軽減」と言って恥じない。沖縄の犠牲のうえで平和を享受してきた本土の人たちがこの情況をよそ事のように座視することは許されない。

◎口(くち)とは裏腹な埋め立て強行
 「沖縄の皆さんの心に寄り添ってまいりたい」は安倍首相の常用句である。沖縄における戦没者追悼式、所信表明演説、衆院予算委での答弁などさまざまな場面で公言してきた。
 現実はどうか。政府は昨(2018)年12月14日、沖縄県名護市辺野古に米軍の新しい飛行場を建設するため、海面埋め立ての土砂投入を開始した。普天間飛行場の代替施設だという。新基地建設に反対する玉城デニー知事を圧倒的票差で誕生させた民意は踏みにじられた。「真摯、誠実な対応」と同じく、安倍首相の言うことと実際の政治行動は裏腹である。
 他方でトランプ米大統領に「シンゾウ」と呼ばれて浮かれ、借金漬けの財政状態を無視して巨額の米国製兵器を買うことを決めたり計画したりして、兵器商人のような大統領に感謝されている。首相が誰に、何に寄り添っているか明らかだ。

◎苦しみを受け止める責任
 独自の外交と交易で「琉球王国」として栄えた沖縄は、江戸時代、薩摩に侵略、収奪され、明治初年には明治政府に「琉球処分」されて日本に組み込まれた。
 第2次世界大戦の末期には、米軍の本土上陸を遅らせる盾の役を強いられ、住民も地上戦に巻き込まれて軍民合わせて20万人近い犠牲者が出た。敗戦後は広大な土地を米軍基地として強制的に取り上げられ、日本の独立回復後も20年以上も米軍の治政下におかれ平和憲法の恩恵を受けられなかった。いまなお沖縄には日本全体にある米軍専用施設のうち70%(面積)が集中し、沖縄本島の約15%を占めている。
 普天間の米海兵隊が紛争地への“先鋒隊”であることを知っている県民はその動きに敏感だし、ベトナム戦争、湾岸戦争などで極東最大といわれる嘉手納基地から戦場へ出撃して行く米軍の爆撃機、戦闘機を不安とともに見守ってきた。大多数の本土の人々にとってニュースで知るしかない戦争が沖縄の人々にとっては現実なのである。
 平和憲法の下で平和と繁栄を享受してきた本土の側は沖縄の過去、現在、未来の苦しみ、悩みなどをしっかり受け止める倫理的な責任があろう。

 しかるに政府は沖縄をまるで米軍の植民地のような状態においたままで、さらに半永久的になりかねない新しい基地を押しつけようとしている。県民の抵抗を足蹴にするような土砂投入開始に「第2の流況処分」と怒りの声が上がったのは当然だ。

◎行動しない無責任
 メディア各社の世論調査をみると辺野古の埋め立て問題に対する一般の関心は強い。たとえば昨年10月の朝日新聞の調査では「見直す必要がある」が半数を超えて55%だった。昨年12月、政府が埋め立て土砂の投入を始めた直後の毎日新聞調査でも56%が「反対」だった。
 しかし、そのことが必ずしも選挙における選択や内閣支持率に結びついていない。安倍内閣の支持率はどの調査でも40%前後と底堅く、土砂投入開始直後の毎日調査でさえ37%で前月より4%下がっただけだった。衆参両院で与党に3分の2超の議席を与えているのは、辺野古問題で政府に批判的な人を含む有権者たちである。
 本土でも大々的に繰り広げられた埋め立て開始の報道は一過性で、ニュース、話題として消費されただけの観があった。本土で暮らす人々の多くにとって、しょせん辺野古はよそ事なのではないか。そのことが安倍首相を強気にさせている。辺野古着工は、選挙まで一定の間隔を開ければ、政権の支持率や選挙における投票行動に響かないと読んでいるのだ。
 いかに沖縄に思いを寄せていても、行動を伴わない同情や共感は倫理的に無責任とのそしりを免れまい。強行着工を許した一因とも言えよう。

 この段階での埋め立ての本格着工は今夏の参院選での3分2超勢力確保、さらにその先と想定している第9条骨抜きの改憲発議を睨んだ、首相の戦略の一環とみて間違いはない。現に新年早々の5日、首相は地元山口県の集会で「今年は改憲を含めた新たな国づくりに挑戦する」と宣言した。
 辺野古での新しい米軍基地建設、自衛隊の軍備強化、軍事力行使への寛容性、改憲……安倍政治は敗戦を機に我々の先人が築いてきた「戦争をしない国」の姿を打ち壊そうとしている。辺野古の新基地建設は首相が描くジグソーパズルのワンピースであり、それぞれ切り話して考えることは誤りだ。辺野古を自分とは直接関係ない遠隔地における事象と軽視するのは危険だ。

◎辺野古も判断材料に

 統一地方選と参院選が重なる今年は“選挙year”と注目されている。焦点は参院選で与党が3分の2超を維持できるかどうかだ。各候補、政党の掲げる公約や政治手法などを幅広く、じっくり見極めて投票したい。選択に際しては沖縄、辺野古に対する認識、対応が重大な課題となることはもちろんであり、有権者は沖縄に対する思いを投票に託すことができる。
 国政とは一見無関係に見える地方選も各候補の所属政党、政策、日常活動など広範な観点から判断し、投票することで間接的ながら中央政治に対する意思表示となり得る。地方自治体における政治を通して見ることで国政の新たな課題も浮かんでこよう。
 安倍首相は衆参同時選挙が自民党に有利とみて、何らかの口実を設けて衆議院解散、ダブル選挙に打って出るのではないかとの観測もある。そのような国政を私する思惑に惑わされず、安倍政治に今度こそ鉄槌を下したい。

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