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“安倍露出”で変質した元号

寄稿:飯室 勝彦

2019年4月20日

 天皇が代替わり、元号も新しくなって「令和」の時代到来である。政権とメディアに踊らされたお祭り騒ぎの果て、日本と世界の未来はどうなるのか。元号を政治的に扱った安倍首相の政治に厳しい視線を向けざるを得ない。世界の平和、国民の安寧を願って慰霊の旅を続けてきた天皇の退位と、「戦争ができる国」を目指す首相の続投が時代の節目を象徴することにならないよう、主権者には冷静に事態を観察し安倍政治の危険性を見逃さない思慮深さが求められる。

◎“首相主導”で政治色
 新しい元号が正式に決まった際の安倍首相の露出ぶりは異常だった。
菅義偉・内閣官房長官が記者会見して「令和」に決まったことを発表するまでの手順は、小渕恵三・官房長官(当時、後の首相)が発表した「平成」決定の時と同じだった。ところがそれから間もなく安倍首相が別の会見を開き、新元号の典拠(出典)や意味合いについてあれこれ説明した。強調されたのは、出典が従来のような中国の古典ではなく国書(日本の古典)である万葉集だということだった。「日本の伝統文化」の尊重を主張する安倍首相としては「我が意を得たり」の思いだったに違いない。首相会見は菅長官の会見に「屋上屋を重ねる」の観があったが、高揚を抑えきれないかのようにさらにテレビ三局のニュース番組をはしごした。
 「決めたのは私だ」「いまさら中国の古典でもあるまい」と言わんばかり。まさに安倍首相による政治ショーだった。内容は明らかにされないが、平成天皇、令和天皇への即位を控えた皇太子への説明のためと見られる、お二人との会見も「主役はこちら」という演出に見えた。

 こうした安倍首相の振る舞いによって新元号は濃い政治色を帯びることとなった。報道によれば安倍首相が早い段階から「国書典拠」と「令和」に関心を示し、関係者がそう決まるよう誘導したふしさえ窺われる。
 古くはともかく、少なくとも明治以降の元号は政治色を帯びているかのように受け取られないよう、決める側も配慮し、圧倒的多数の国民も単なる年の数え方として使ってきた。「中国と距離を置いた画期的な元号」などと力むことで「令和」はかえって政治色を帯びてしまった。

◎求心力の逆転狙う?
 平成天皇は国民統合の象徴として平和の旅、慰霊の旅を続け、多くの国民はそれに共感を覚えてきた。自衛隊の軍備を右肩上がりで増強し、米軍との一体化を進める安倍政治は、そうした天皇の姿と対置する形で語られることが多く、憲法上、天皇に政治的権能はないとは言え、心理的求心力は天皇の側に作用しがちだった。
 新元号をめぐる安倍首相の動きに、天皇の代替わりを機にこの関係を逆転させようとの思惑のニオイを感じ取るのは勘ぐりすぎだろうか。

 「人々が心を美しく寄せ合う中で文化が生まれ育つ」「梅の花のように、日本人が明日への希望を咲かせる国でありますように」というのが「令和」の公式な読み取りであり、国民にもおおむね受け入れられているようだ。
 たとえば朝日新聞の世論調査(2019年4月16日付け朝刊)によれば62%が「親しみやすい」と答えている。内閣支持率も前月より3%上がって44%と底堅い。
 新しい元号の決定、天皇の代替わりが、5年も先に発行する新紙幣の予告ショーと合わせ、日本社会を覆う閉塞感をひととき忘れる効果をもたらしたことは否定できない。
 昨秋、自民党党則の変更で党総裁に三選され長期政権を担うことになった安倍首相だが、再度のルール変更で四選も可能にしようという声も出ている。このまま日本社会に特有の同調圧力が続き、「令和」の時代に入っても、憲法を無視し先人による知的蓄積を軽視する安倍政治は続くのだろうか。

◎典拠に潜む権力批判
 浮かれ気味の内閣、一般世論に冷や水をかけるような論稿がネットの世界を中心に話題になっている。品田悦一・東大教授による《「令和」から浮かび上がる大伴旅人のメッセージ》である。
 「令和」の典拠となった万葉集の巻五「梅花歌三十二首」の序には、大伴旅人の権力者に対する嫌悪と敵愾心が潜められており、「令和」は「権力者の横暴を許さないし、忘れない」という旅人からのメッセージを権力者に突きつけてくるという。
 それを知らずに「令和」を選んだ安倍首相とその取り巻きにとっては痛烈な皮肉だが、お祭り騒ぎに興じてしまった側に対して品田教授の論稿はある示唆を与えてくれる。
 それは、「令和」の時代を文字通り新しい世とするために、主権者は安倍政治を冷静に、徹底的に洗い直し、決断することを迫られている、ということである。

 注・品田教授の論稿は
https://docs.wixstatic.com/ugd/9f1574_d3c9253e473440d29a8cc3b6e3769e52.pdf

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