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朝日の「慰安婦問題」への拙劣な対応

寄稿:池田龍夫

2014年10月21日

一連の朝日新聞問題に関して、「第三者委員会に聞かなきゃわからないのか」と朝日OBの河谷史夫氏が指摘したが、確かに第三者委の調査で『お前ら解体しろと言われたら朝日は従うのか』と疑問を呈した点は重大である。

「サンデー毎日」(10・26号)は、「『サンデーだから話す』今も続く『混乱』〝真相ホンネ〟座談会」の大見出しで取り上げた〝特ダネ〟にビックリ仰天させられた。第三者委どころの話ではない、朝日新聞社内部の混乱ぶりを暴露しているからだ。

発言内容をいちいち紹介したらキリないが、これでは「社内調査委」など作りようがないではないか。第三者委に混乱収拾を頼み込んだ以上、「解体して出直せ」と提言されても誰も文句を言えまい。ただ、こんな醜態が続くようでは、日本のジャーナリズム崩壊につながると危惧する識者が多いに違いない。

背後に、政治的圧力が?

サンデー毎日のほか多くのメディアが取り上げていたが、「ピース・フィロソフィー」10月13日付指摘が鋭かったので、その概略を紹介しておきたい。

〈貴紙が吉田清治虚偽証言に関する訂正記事を発表するや、あたかも河野談話は吉田清治証言にのみ依拠して作成されたかのような発言が、安倍晋三首相をはじめ安倍支持派の政治家たち、ならびに諸右翼団体から次々に出され、「強制」はでっち上げあるという非難の声が挙がりました。しかし、河野談話には吉田清治証言は一切使われていません。当時の官房副長官であった石原信雄氏も、最近のテレビ・インタヴューで、吉田証言には虚偽の疑いがあったため河野談話作成のための資料としては使わなかったことをはっきりと認めています。一方、当時、同じように吉田証言を信じて報道していた産経、読売、毎日新聞や共同通信はほとんど非難を受けず、貴紙だけが攻撃のマトになったことに私たちは違和感を感ぜずにはいられません。貴紙がこの件で訂正記事と謝罪記事を出されたことは、誰の目にも極めて唐突に映り、背後で読者たちが知り得ない政治的操作が行われた結果であろうという疑いを持っている市民が多くいると思います。これは、『河野談話検証』と連結した『河野談話空洞化作戦』の一つであり、その最終目的は、河野談話を正式に無効とし、新しく『安倍談話』なるものを発表し、それを日本政府の公式見解としてしまうことにあるものと深く憂慮しています〉と指摘。

北岡伸一教授が「第三者委」メンバーとは・・・

次いで、〈慰安婦報道検証のための7名の委員からなる第3者委員会を貴紙は設置されました。しかし、この7名の中には、慰安婦問題に関して長年研究を続けてきた専門家は1名も含まれていません。さらに、慰安婦問題は「女性の人権侵害」という重大な問題を含むものであるにもかかわらず、委員の中には女性は1名しか含まれていません。国連関連委員会はたびたびこの問題で日本政府に厳しい勧告を出してきました。そうした国連の女性人権専門家の目から見ても、今回の貴紙の委員選考は、ジェンダー・バランスという点であまりにも世界の常識を欠いており、女性差別的選考と非難されるでしょう。私たちがとりわけ憂慮するのは、委員の中に北岡伸一氏が含まれていることです。ご承知のように、北岡氏は安倍晋三氏ならびにその他の自民党保守有力政治家と親しい関係にあり、これまで様々な日本政府の調査委員会に携わってきました。『集団的自衛権行使と憲法の関係を研究する』と称する安倍首相の私的諮問機関である安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)の座長代理も務めましたが、彼は「当然であるが、懇談会は集団的自衛権の行使を主張しているのでなく、いざという時のために行使できるようにしておくべきだと主張したのだ」と、発言しています。このようなゴマカシ発言を公然と行う人物を、私たちは、貴紙が当該委員会から北岡氏を外されるよう強く要望します。

このような委員会のメンバー構成を見ますと、安倍政権に媚を呈するために朝日新聞はこの第3者委員会を立ち上げたのではないかという疑念を私たちは持たざるを得ません。もしそうであるとしたら、これは明らかに朝日新聞の自殺行為であることはもちろん、日本の報道界の自殺行為ともよぶべき由々しい事態です。 今、日本が危機的な社会状況にあるからこそ、貴紙がいかなる政治的抑圧に対しても毅然とした態度をとり続け、市民に真実を伝え、新聞報道機関としての重大な社会的責任を全うされんことを要望します〉。

この要望書は、現在の危機的政治状況を的確に指摘しており、傾聴に値する論考である。

池田龍夫 (いけだ・たつお) 毎日新聞ОB。

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