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オリバー・ストーンが語る日米史 「危うい日本」への貴重な講演録

寄稿:池田龍夫

2014年9月20日

「オリバー・ストーンが語る日米史」を読んで、深く感銘させられた。オリバーとピーター・カズニックアメリカン大学教授、乗松聡子さん(平和教育団体『ピース・フィロソフィー・センター』代表=在カナダ)の3氏が2013年夏来日。広島・長崎・沖縄・東京を精力的に回って講演、対談した記録をまとめた一書で、オリバーを軸に、歯に衣着せぬ見事な著作である。その主要発言のごく一部を紹介し、参考に供したい。

米国のアジアでの共産主義との闘いの人質

オリバーは先ず「日本は米国のアジアにおける共産主義との闘いにおいて、(沖縄は)人質として使われてきたのです。朝鮮戦争の出撃地点として利用され、その後もベトナム戦争、イラク戦争などに利用されてきました」と指摘した(3ページ)。次いで、「2013年、この戦争の亡霊がアジアに戻りつつあります。オバマは安倍が大好きです。とりわけ今、尖閣諸島をめぐって紛争がありますけれども、このように価値のない島をめぐって争うというのは本当にバカげています。しかし、もっと大きな問題は、それをめぐって安倍とそれを取り巻くグループが、日本のナショナリズムを大きく復活させつつあるということです。第2次世界大戦中のナショナリズムが、軍国主義的な考え方です。南京大虐殺や従軍慰安婦などを否定するような考え方です」(42~43ページ)と、安倍政権の危うさに警戒信号を示した。

「核の傘」に頼らない平和国家構築を

ピーター教授も、「日本で問題のある家族の系譜があります。1960年に岸信介首相の下で安保条約を改定し、弟の佐藤栄作の下では、沖縄が返還されました。沖縄返還の際、米国と有事核持ち込みの密約を結んでいました。そして今、岸の孫である安倍晋三首相はもっとも悪質な歴史否定主義者の一人です。・・・日本は核の傘ではない非核3原則と平和憲法の精神に則り、太平洋地域において紛争を解決し、平和な世界をつくるために指導的な役割を果たしてほしいです」(102~103ページ)と、岸3代の系譜をたどって、ズバリ指摘した筆法に感心した。ベトナム戦争に従軍した2人だけに、「戦争の本質について話をしよう!」と全国行脚した情熱と語り口は見事だ。

靖国参拝と尖閣紛争に米国はヤキモキ

乗松さんの平和に賭ける情熱もすごい。「13年、日米関係の亀裂を決定的にしたのは、安倍首相が12月26日に靖国神社を参拝したことだ。米国はその年の10月、ケリー国務長官とヘーゲル国防長官が来日したとき、真っ先に千鳥が淵戦没者墓苑に献花したという異例の行動に出て、米国のアーリントン墓地を引き合いに出し、靖国参拝を正当化しようとした安倍首相をけん制した後でもあった。米国の主要紙ニューヨークタイムズやワシントン・ポストにも安倍政権の政策の行き過ぎを批判する記事が続出した。14年4月には、オバマ大統領が安倍政権になって初めて来日したが、米国の一番の関心事であるTPP交渉で合意に至らないまま日米首脳会談は行なわれた。オバマ大統領は、『尖閣の施政権は日本にあるが、領有権については米国は立場を取らない』と述べた。安保条約5条は尖閣に適用するという従来の米国の立場を繰り返したことは、安倍首相とメディアに喜ばれたようだ。大統領は日中間の対話を再三促し、エスカレーションを許すのは『深刻な過ちである』と、安倍首相に警告している」(180~181ページ・後書き)。

乗松さんのコーディネイトによって、各種講演や稲嶺進名護市長との対談など多彩な内容となった。「米国に幻想を抱いてはいけない」との教訓を、日本国民は噛みしなければならない。

池田龍夫 (いけだ・たつお) 毎日新聞ОB。

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