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【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

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日米の戦争共同体制の飛躍を目指すガイドライン改定に反対する
「総がかり行動」が切り開いた道を発展させよう

2014年11月9日

10月8日、日米両政府は外務・防衛局長級会議を開き、本年末までにまとめる予定(新年年初か?)の日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直しの方向性を示す「中間報告」を発表した。このガイドライン再改定については本誌前号でも論じたが、この報告は極めて重大な問題を含んでいるので、今後の闘いの方向性の提起と併せて、改めて論じておきたい。

① ガイドラインの再改定の経過と概要

1978年、米ソ冷戦時代に日米安保の運用指針として日米当局の間で取り決められた「ガイドライン」(旧ガイドライン)は、90年代になって北朝鮮の核開発疑惑やミサイル発射実験などを契機とした朝鮮半島危機への対応として改定された(新ガイドライン)。

1993~94年、朝鮮半島の第1次核危機とよばれる北朝鮮の核保有疑惑問題で、アメリカが事実上の北朝鮮攻撃の臨戦態勢に入ったとき、日本政府はこれに呼応する対米軍事支援を即座に準備することができなかった。

アメリカ政府は、95年12月、日本政府が朝鮮半島有事の際に行うべき米軍への膨大で、詳細な支援要綱(在日米軍司令部が作成した1059項目)を日本側に提出した。しかし、平和憲法の縛りの下で日本政府はこの米国の対日要求に応えることを「不可能」とした。あわせて韓国政府がこの第2次朝鮮戦争で200万人の死者が出ることを予測した事情もあり、米国は北朝鮮攻撃を断念し、米朝合意を結ばせることで危機を収拾せざるを得なかった。この屈辱的な事態が米国による日本政府に対する有事法制・戦争法制の整備への強い要求となった。1997年、ガイドラインは改定され、その中で周辺事態(日本の平和と安全に重要な影響を与える事態)での米軍支援が盛り込まれた。これに沿って1999年には「周辺事態法」(非戦闘地域での自衛隊の米軍支援を可能にして、「専守防衛」を踏み越えた)が制定された。以降、武力攻撃事態対処法、国民保護法、ACSA=日米物品役務相互提供協定改定など、日本政府は着々と「戦争のできる国づくり」のための法制化を進めてきた。

しかし、これらは従来からの集団的自衛権に関する歴代政権の憲法解釈を踏襲して、海外での米軍の武力攻撃には参加しないという「歯止め」を残したものであった。

② 問題の所在

今回のガイドライン「見直し」の「中間報告」では、米国オバマ政権のアジア太平洋地域へ軍事・外交の軸足を移すリバランス(再均衡)戦略および、7月1日の日本政府の集団的自衛権行使容認の閣議決定にそって、「アジア太平洋およびこれを超えた地域の利益」のための日米同盟の強化のためだといわれている。報告は「日米同盟のグローバルな性質を反映するため、協力の範囲を拡大する」としている。

また、「新たに発生する国際的な脅威は、日本の平和と安全に対し深刻かつ即時の影響をもたらし得る。また、日本に対する武力攻撃を伴わないときでも、……迅速で力強い対応が必要となる場合もある」ので、「平時から緊急事態までのいかなる段階においても、切れ目のない形で……措置をとる」として現行ガイドラインの「周辺事態」条項を削除し、さらに「後方地域」概念も放棄して、「グレーゾーン事態」を含めてシームレスな対応をとり、自衛隊参加の地理的「歯止め」を削除し、地球規模の軍事同盟に転換した。

この「中間報告」の方向で、ガイドラインの再改定が行われれば、日本の自衛隊は世界中で米国と共に戦争する軍隊となるのであり、これはまさに帝国主義そのものである。

このような日本国憲法の平和主義の根幹に関わる問題を、先の閣議決定同様に、国会での審議すら回避して、日米両国政府の担当者間で取り決め、既成事実化しようとするのは、立憲主義に反して憲法を無視するものであり、議会制民主主義を破壊するものであり、主権在民原則の破壊であり、安倍内閣の独裁であると言わなければならない。

③「専守防衛」と、日米安保条約の「歯止め」の撤廃

日本国憲法の平和主義の下で、歴代政府が苦しい解釈につぐ解釈を重ねて定めてきた「専守防衛」と呼ばれる防衛方針は、もとより日本国憲法に大きく制約されたものであった。

今次「中間報告」が削除した「周辺事態」とは、従来、「地理的な概念ではない」などと説明されつつも「日本の平和と安全に重要な影響をあたえる事態」であるとされ、実際には1990年代初めの朝鮮半島危機を念頭に、朝鮮半島有事を想定した、まさに「周辺」における事態を想定したものだった。

また、「非戦闘地域」概念は、自衛隊が米軍と一体になって戦争することを否定するための概念であり、中間報告で従来の「非戦闘地域」概念が撤廃されたことにより、自衛隊の米軍に対する後方支援の活動範囲が「戦闘地域」にまで拡大することになった。

今回はこれらの制約は外され、「日米同盟のグローバルな性質」が強調され、世界的規模で戦争をする日米同盟になった。これらは「専守防衛」に代表される歴代政権による従来の憲法解釈の範囲を大きく踏み越えるものであり、これと日本国憲法の平和主義の間には、それを正当化するどのような「解釈」もありえない。

もともと日米安保条約は、第4条で「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたとき」とし、第5条で「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する」とその適用範囲を限定しているのであって、「日米ガイドライン」などという両国政府の行政協定によって、この適用範囲を世界大に拡大するなどということは許されることではない。この中間報告が企てているような改編が必要であれば、それは日米安保条約自体の改定なしにはありえないことなのである。

④ ガイドラインの再改定が企てる地球規模での攻守同盟

米国のオバマ政権は軍事・外交・経済の各分野の軸足をアジアに移す「リバランス戦略」を打ち出しつつも、ウクライナ情勢でのロシアとの緊張関係や、中東における「イスラム国」への対応など困難な問題を抱えている。中国や北朝鮮問題にも対処しながら、リバランス戦略を維持するためには、日本に役割を一部肩代わりさせる以外にない。米国は7月1日の閣議決定で集団的自衛権行使の「限定容認」に踏み切った日本に対しては、朝鮮半島有事における積極的支援や、ホルムズ海峡における機雷除去などシーレーンにおける機雷掃海などを肩代わりさせようとしている。読売新聞が10月16日が報じたところでは、対「イスラム国」空爆を開始した後、オバマ政権の高官が「自衛隊による後方支援はできないか」と打診してきた。しかし、日本政府は「集団的自衛権行使を限定的に容認する安全保障法制の議論に悪影響を与えかねない」として断ったという。しかし、閣議決定をしている以上、今後ともこのようなケースで断り続けることができるのかどうかは時間の問題ではないか。

安倍政権は集団的自衛権行使容認の閣議決定に際して、集団的自衛権行使の全面解禁に抵抗する公明党を説得し、これを連立政権にとどめるために、5月に公表された安保法制懇の答申を一部拒否したうえで、「限定容認」論に踏み切るという政治的妥協を行った。なぜなら世論が安倍政権の集団的自衛権行使の企てを支持しておらず、公明党の躊躇はその反映であるからだ。

安倍政権は当面、公明党との調整に時間をかけながら、遅くとも年明けにはガイドラインの再改定を強行し、通常国会後半での戦争関連法制の改定・策定を企てている。この戦争関連法は膨大なものとなるため、一時期は「一括法」でやると言われていたが、この動き派いまのところなりを潜めている。いずれにしても春の統一地方選が終われば一挙に噴き出してくるにちがいない。

いま、日本の自衛隊が地球の裏側までを含んだ全地球的規模で米国の戦争に加担するという、日米のグローバルな攻守同盟体制が形成されようとしている。戦後の日本社会における平和憲法のながれが清算されようとしている。その先にあるのは戦争と、それを支える「茶色の朝」の社会に他ならない。

⑤「総がかり」行動が切り開きつつある道を進もう

しかし、国内の世論の多数は安倍政権が企てる「戦争する国」への道を支持していない。韓国社会をはじめ、かつての日本の侵略戦争を体験したアジアの民衆はこれを許さないだろう。アジアの民衆と連携して、わたしたちは腹を据えて、全力で安倍政権の「戦争する国」の道に立ち向かうときだ。

議会で圧倒的多数を持っているとはいえ、安倍政権は盤石ではない。安倍政権の暴走は日米間にも、与党内にもさまざまな矛盾を生み出している。

いま提起されている「戦争させない・9条壊すな!11・11総がかり国会包囲行動」を成功させることは極めて重要な課題になった。集団的自衛権問題が第1級の政治課題になった今年初めからの反戦平和運動における従来からの対立・不協和音を克服する努力は、運動の今後の帰趨に関わる歴史的な試みだ。平和フォーラムを軸に全国組織化をすすめてきた「戦争させない1000人委員会」と、広範な市民運動が結集して4・8日比谷集会、6・17日比谷集会を成功させてきた「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」が協力して新たな運動をつくり出そうとしている。6・30、7・1官邸前行動につづく9・4日比谷から11・11国会包囲へ、この流れを促進し、まさに全ての反戦・平和勢力が「総がかり」で闘いに取り組むべき時がきた。この課題のまえに、主義主張の小異や狭いセクト的な運動上の利害を大胆に留保することができるかどうか、全ての政治勢力に問われている。

私たちは当面する秋から年末にかけての日米ガイドライン再改定反対の闘いの中で、その危険性を徹底的に暴露し、それを2015年の通常国会における集団的自衛権行使のための戦争関連法阻止の運動につなげて行かなくてはならない。安倍政権の悪政に怒りをもやしてさまざまな課題で闘う民衆運動に呼応しながら、来春、平和を望む民衆の巨大なエネルギーを組織して、波状的に国会を包囲し、安倍政権を打ち倒すための連続的な行動を展開しぬこう。まさあに「総がかり」の闘いをもって、この数十年来、運動圏で待望されてきた「(60年)安保のように闘おう」のスローガンを文字通り実現させようではないか。

11月16日に投開票される沖縄の県知事選の勝利はそのための強固な足がかりをつくり出すだろう。私たちが「総がかり」で闘えば、安倍政権が世論の反対を恐れて、統一地方選が行われる来春以降に先送りしようとしている戦争関連法制の整備を阻止する力をつくることは可能だと確信する。

(「私と憲法」162号所収)

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