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【NPJ通信・連載記事】音楽・女性・ジェンダー ─クラシック音楽界は超男性世界!?/小林 緑

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連載第75回 : ポリーヌ・ガルシア = ヴィアルド 200 年記念コンサートの報告

2021年8月3日


 前回 (第74回 : 2021年 6 月12日更新) に予告させていただいた上記生誕 200 年記念コンサートが、無事実施できたこと、感謝とともに報告させていただこう。

 7 月18日当日はコロナ禍真っただ中でありながら、ライヴ公演を行うことに、多大のためらいと恐れがあったのだが、音楽に携わる者として、心も体も萎えてしまいそうな事態であればこそ、生の音、声、調べが求められるはず、と思い切った結果に見合う形を得ることが出来、心底ほっとした。改めてご出演くださった歌の波多野睦美さん、ピアノの山田武彦さんに、心からの謝意を表したい。恥ずかしながら、終演後に関係者が撮ってくださったお二方とのスリーショットも掲載させていただく。

 事後、燃え尽き症候群からなかなか抜け出せず、ご報告が遅れてしまった。これまではいつも、自分の感想や後悔の念、頂いたアンケート結果など取り混ぜ、冗長で読み辛い文になっていたことを踏まえ、今回はもっぱら、お聴きいただいた方の反応のみピックアップしてみたい。

☆ 「音学より音楽を好む愚輩―解説に対し、“百文は一聴にしかず”」!!
  → 知られざる作品を広める会の会員でいらっしゃる男性から=
  誠にごもっとも ! 至言と思う。音楽のコンサートでは話なんか不要、ひたすら聴きたいという意見はよく耳にする。ただ、私が話す内容は、あくまで女性問題が軸なので、他所では聞けないから、もっと詳しくお話してほしい、という反応を、今回もいただいた。言い訳がましいけれど、書き添えておきたい。

☆ 「話し手のマイクの持ち方が悪い。だから結局、話の内容がよくわからなかった」
  → ボランティアでお手伝いさせていただいている大学同級生の友人から=
後日、私から「率直な感想聞かせて ! 」と迫った結果、話してもらえた。これはいつも主催者の谷戸から指摘されていたことでもあり、深く恥じるばかりだ。

 以上 2 つは、批判的な厳しいご意見として、今後に生かすべきと銘記したい。ともかく、アンケートは、どうしてもお友達感覚での誉め言葉に終始する場合が多い。およそ 100 人の参加者だった今回、当日の回答と後日のメールを合わせ、約半分の方が反応してくださった。

 その大部分が身に余るほどの讃辞だったが、特記したいのは、日頃音楽・文芸などに関わりながらクラシックには今一つ、まして女性の作曲家なんて・・・という感じで私からの連絡にもいつもそっぽを向いていた同じ地元のエリート女性から、演奏会翌日、興奮を抑えかねた感じの電話をいただいたこと。演奏の素晴らしさ、しかも 200 年前とは思えぬ現代性から、ポリーヌの大きさが伝わってきた、本当に参加してよかった ! と、夫にも伝えた、という。その夫たる人、実はこの国最大の放送メディアの元芸術関係ディレクターで、今なおその方面での仕事に携わっていると聞き及んでいた。定番の大作曲家を取り上げる音楽番組で、そろそろこうした女性にも焦点を・・・という雰囲気を醸成するきっかけの担い手ともなってほしいと、本気で期待したいゆえ、ここにまず記させていただいた。
 
 最後に、一つだけ、私が女性作曲家問題に目覚めてごく初期から、様々な機会に協力していただいているピアニストからのメールをほぼそのまま再掲させていただく。こちらの思惑全てを見透かしたような書きぶり、本当有難く嬉しかったからである:

☆ 「小林先生と波多野さん、山田さんのお衣装が偶然かと思いますが白~緑に統一されて、爽やかで、ヴィアルドに何か関連があるのかしら? と思いました。柔軟で美しい山田さんのピアノの音色と、暖かい波多野さんの歌声・・・お二方の演奏を拝聴し、そのお人柄、演奏と作品の素晴らしさが伝わってくる、充実した演奏会でした。
 歌とピアノという最小限の構成にされた、とトークで拝聴しましたが、確かに演奏者の音色や想い、作品の素晴らしさがストレートに聴き手に迫ってきたように思いました。
 「セレナード」、「子と母―対話」、「バレェのための二つのエール」、「自由こそ ! 」など、特に心に残りました。特に「子と母」はシューベルトの「魔王」にヒントを得たものか、と書かれてありましたが、とても面白い作品でした。
 また、座席使用禁止の絵がポリーヌのイラストだったこと、そしてアンコールの曲目がその裏に書かれていたことなど、様々なご配慮が洒落ていて、とても豊かな時を過ごさせていただきました。」

 しつこく付け加えると、衣装については他に 3 人ほどの方も同じことを書かれていた。しかしこれは全くの偶然の結果、事前の打ち合わせは一切なし。私の着たものはほぼ 20 年来の一張羅であり、飾りのペンダントも例によって「九条真珠」だった。
 アンコール曲は普通記録に残らないので、ポリーヌのマスク姿の絵を見つけたときに、その裏面に歌詞対訳と解説を記してお持ち帰りいただこうと思いついたのだ。

 そのアンコール「カディスの娘たち」の後、演奏者お二人にマイクをお渡しし、それぞれの肉声をお聞きいただけたことも正解だった。そこで、波多野さんのお誕生日がポリーヌの姉で伝説の大歌手マリブランと同じ日だったこと、また作曲家でもある山田さんがポリーヌの御誕生日祝いとして、当日幕開けの歌「こんにちは、わが心」をアレンジしてくださったこと―花束贈呈もない最後が、何とも贅沢なエンディングとなり、これ全てポリーヌからの賜りもの、実施できて本当によかった ! と安堵の想い一杯で帰路に就いたのだった。

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