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“安倍亜流” の継続か変化の予兆か

寄稿:飯室勝彦

2021年9月30日


 菅義偉氏の後任を選ぶ自民党総裁選は決選投票の末に岸田文雄氏が河野太郎氏を押さえて当選した。4 日から始まる臨時国会で首相に指名されるが、3 位ながら健闘した高市早苗氏、およびその背後にいる安倍晋三元首相の存在感は大きく新政権は “安倍亜流” になるおそれがある。反面、戦況中には変化の兆候と見られる現象もあり、近く行われる総選挙での有権者の投票が問われる。

◎ “秘蔵っ子” を全面支援
 予想によると第一回投票では党員党友の支持者が多い河野氏がトップで岸田氏との決選投票になると見られていた。ところがフタを開けてみると 1 票差ながら岸田氏がトップ、決選投票でも国会議員票の多い岸田氏が河野氏に圧勝した。

 そんな中で目立ったのが 3 位の高市氏の健闘だ。基礎票は80前後とみられた国会議員票を114票獲得し、存在感を示した。
 高市氏は安倍氏の “秘蔵っ子” とも言うべき存在で、安倍氏の (保守的) 政治信条に最も近いのは自分であると自認しているほどだ。選挙中も「防衛費の大幅増額」「敵基地攻撃能力の整備」などいわゆるタカ派的発言を繰り返した。
 安倍氏はその高市氏を全面支援した。高市支援を求めて議員たちに電話攻勢かけたとも伝えられる。

◎安倍リモート内閣のおそれ
 選挙後に見せた安倍氏の割れんばかりの笑顔が印象的だった。「高市さんを通じて自民党、日本がどう進むべきか示すことができた」との趣旨の発言をして胸を張った。首相退陣でともすれば過去形で語られがちだった安倍政治、とりわけ「戦後レジームからの脱却」論が表舞台に登場することを期待しているかのように響いた。そうなれば岸田政権は安倍・菅流の政治になりかねない。高市氏のポストしだいで発言力が増せばなおさらだ。

 懸念はまだある。岸田陣営は決選投票に備え、安倍氏が支援する高市氏の陣営と裏で提携し 2、3 位連合を組んだと伝えられる。決戦では高市氏支持の議員票の一部が岸田氏に回ったようだ。
 これでは今後、岸田政権に対する安倍氏の影響力が維持され、新政権はリモート政権になりかねない。現に選挙戦の序盤、岸田氏は安倍氏の疑惑関与が強く疑われるモリカケ問題について再調査の必要性を肯定するかのような発言をしながら後に安倍氏に配慮したのか発言を後退させている。

◎自由投票は変化の予兆か
 それでも「変化の予兆かも」と期待させる事象はあった。一つは安倍氏の地元山口県の党員党友投票で高市氏が僅差ながら岸田氏に敗れたことである。これは安倍氏の威令が必ずしも行き渡らなくなった一つの証しではないか。変化の兆しとして歓迎したい。

 同じ事は国会議員の派閥についてもいえよう。多くの派閥が支持する候補を絞りきれず自由投票になった。総選挙を前に議員たちが党の顔になる候補をほしがったという特殊事情があるにしろ、みんなが幹部の言う通りに足並みをそろえる時代ではなくなった。

 小さな変化かもしれないが、自民党政権の足下に亀裂が入りつつあるのではないか。総選挙は間近だ。小さな変化に過ぎないとしても、それを見逃さずに大きな変化につなげることができるかどうか。野党の力量と有権者の見識が問われる。

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