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大飯原発再稼働差し止め―福井地裁判決の意義

寄稿:池田龍夫

2014年5月28日

原発運転差し止め、自衛隊機夜間飛行禁止――福井地裁と横浜地裁で5月21日、国民の安全を守る画期的判決が下された。

福井県大飯原発3、4号機は福島第1原発事故後の2012年7月から稼働を停止しており、再稼動の動きを危惧した福井県住民ら189人が、関西電力を相手どって運転差し止めを求めていた。樋口英明裁判長は住民側の主張を認め、運転差し止めを命じた。「①250㌔圏内の住民には原発運転で具体的な危険がある②安全技術や設備は確たる証拠のない楽観的な見通しに基づくもので脆弱③地震の際、原子炉を冷やす機能と構造に欠陥④基準時振動を超える地震が来ない根拠はなく、それに満たない地震でも重大事故が生じうる」等々の理由を挙げて関電の申し立てを退けた。

差し止めを命じたこの判決が確定しない限り、原子力規制委の再稼働審査に適合すれば運転は可能だが、司法判断を無視して再稼働させることには世論の大きな反発が予想される。大飯原発をめぐっては京都、大津でも住民訴訟が続き、このほか札幌、静岡、松江、鹿児島など各地で住民訴訟が相次ぎ、今回の福井地裁判決の影響は大きい。

「250㌔圏内」の住民を守る必要を強調

福井新聞5月22日付社説は、「判決で注目されるのは、原発から250㌔圏内の原告人すべてを原告適格と判断したことだ。福島事故で、同圏内の住民に避難勧告する可能性が検討された点を根拠として挙げた。過酷事故が起きれば、影響は250㌔にとどまらない可能性もあり、こうした判断根拠は衝撃的である。訴訟で最大争点となったのは、耐震設計の目安となる地震の揺れ『基準地震動』を超える地震が発生する点だった。原告側は2005年以降だけでも全国の原発で基準を超える地震が5件観測されているとして、関電の過小評価を批判し、国内観測の最大地震動を想定すべきと主張。『安全上重要な施設の機能は問題なく維持される』と反論する関電と真っ向ぶつかった」と、地裁判決の意義を強調している。

横浜地裁は「厚木基地自衛隊の夜間飛行訓練」差し止め判決

横浜地裁判決は、米海軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)の夜間飛行禁止訴訟だ。周辺住民6993人が夜間早朝の飛行差し止めと、騒音被害に対する損害賠償を求めた裁判である。地裁は「午後10時から午前6時までの間、やむを得ない場合を除き自衛隊の飛行差し止めを命じた。賠償額は基地騒音訴訟で最高額となる総額約70億円(1カ月当たり1人400~2万円)としており、他地域への影響も大きい。

ただ、米軍機の飛行差し止めに関しては「防衛相に権限はない」として退けた。

住民の安全を重視した地裁判決、沖縄米軍基地の騒音問題などに一石を投じたものだ。上級審でも十分配慮して、平穏な環境づくりを目指してほしい。

池田龍夫(いけだ・たつお) 毎日新聞OB、紙面審査委員長など。

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