NPJ

TWITTER

RSS

トップ  >  NPJ通信  >  戦争関連法制の改定と自衛隊海外派兵恒久法を全ての反戦平和勢力の総がかりで阻止しよう

【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

過去の記事へ

戦争関連法制の改定と自衛隊海外派兵恒久法を全ての反戦平和勢力の総がかりで阻止しよう

2015年2月3日

安倍首相の掲げる「積極的平和主義」の看板の下で、この国は海外で戦争する国への道を急速に走りだそうとしている。開会中の通常国会は平和憲法のもとで戦争をしない、出来ない国としての道を歩んできたこの国の70年におよぶ歴史の、極めて重大な転機にされようとしている。

2014年7月1日の集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を実行に移すためには、従来の歴代政権の憲法解釈のもとで作られてきた一連の戦争関連法制、とりわけ自衛隊法や武力攻撃事態対処法など関連法制、15本とも18本以上とも言われる法制(註)を「改正」する必要がある。本誌でも繰り返し指摘してきたように、安倍政権はこれらの法制の改定を、統一地方選後の通常国会の後半に「一括法」の形で強行しようとしていると言われている。

この一連の戦争法制の改定とあわせて、従来から安倍・自民党はこの通常国会に、米軍などによる戦争を支援するために、いつでも、海外のどこへでも自衛隊の派兵を可能にするための「恒久法」案を提出しようとしていると言われてきた。先般、その政府の意志が明白に示された。これは極めて重大な問題だ。

1月19日、菅義偉官房長官は記者会見で、この自衛隊海外派兵恒久法案を通常国会に提出し、成立を目指す考えを明言した。菅官房長官は「あらゆる事態に、切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を整備することが重要」で、従来、自衛隊の海外派遣は、特別措置法を制定して対応してきたが「将来、ニーズが発生してから新法、特措法で対応することは考えていない。(恒久法案を)通常国会へ提出すべく、与党と相談しながら精力的に作業を進めている」と述べ、新法については政府与党内ではまだ議論がある。

先の閣議決定は海外での米軍や多国籍軍などへの後方支援の拡大と、いわゆる「駆けつけ警護」などでの武器使用に関する新見解を打ち出した。これに沿った海外派兵法を策定しようと言うのだ。

政府はこの法整備について、2月から再開される予定の「安全保障法制整備に関する与党協議会」(座長・高村正彦自民党副総裁、座長代理・北側一雄公明党副代表)で議論しようとしている。

従来はこれらへの対応は、PKO法や、派遣の時期や対象地域を限定した特別措置法で行ってきた。しかし、「テロ特措法」(2001年~2007年、2008年~2010年)や「イラク特措法」(2003年~2009年)はいずれも失効している。こうした事態のなかで、今日、菅長官がいうように、(米軍の要請などの)「ニーズが発生する前」から、自衛隊がグローバルな範囲で、地理的制約なしに活動ができ、後方支援の範囲・内容もより広げた形となる新規立法が検討されている。1月18日、中谷防衛相は自衛隊の海外での唯一の軍事基地化しつつあるジプチを訪問した際に「(米軍などの要請に対応)『できる能力はある。しかし、日本はできないんです」ということで本当にいいのか。地域の安定や海の安全などに積極的に関わっていける部分があるのではないか」などと発言し、派兵恒久法の制定を進める考えを示している。

この米軍戦争支援のための海外派兵恒久法は、おそらく実際の法案名称としては「国際平和構築法」などという欺瞞的な名称を付けて、世論の支持を得ようとするにちがいない。しかし、どのように名称を付けようとも、この海外派兵恒久法案は、第9条をはじめとする日本国憲法の平和主義に真っ向から反するものであり、自衛隊が米軍の要請に従って、いつでも、世界のどこにおいてでも戦争に参加することを推進するものだ。この法律が成立すれば、この国はまさに「戦争する国」となるのであり、自衛隊が世界の各地の戦場で「殺し、殺される」時代になる。このような悪法は絶対に容認できるものではない。

実はこの海外派兵恒久法は2006年の第1次安倍政権が発足する直前、同年8月末に自民党の防衛政策検討小委員会(委員長・石破茂元防衛庁長官)が原案を作成しているのであり、安倍晋三らの長年にわたる念願の法制だ。当時の原案は名称を「国際平和協力法」として、60条にわたって条文化したもの。石破委員長らによる条文案は(1)武器使用基準をこれまでより緩和(2)これまで必要だった国連決議や国際機関の要請がなくても派遣可能(3)これまでしていない治安維持任務に活動を拡大――などが主要な柱であった。具体的には、自衛隊が武器の使用を含む、治安維持活動である「安全確保活動」、他国軍隊への輸送や補給などの「後方支援活動」、人や施設などの「警護活動」、テロリストの移動などを阻止するための 「船舶検査活動」、「停戦監視活動」、「人道復興支援活動」などを行うことができると定めている。国連決議や紛争当事者の要請がなくても、米国など「国連加盟国の要請」や日本政府の判断だけでも派兵が可能で、「国際的な武力紛争」が起こっていない地域であれば、地球上どこででも活動できることになっていた。まさに憲法違反の立法案だ。

この法案は以降、第1次安倍政権の崩壊の後、福田内閣当時も努力が継承されたが、政権交代でお蔵入りになり、集団的自衛権の政府解釈変更の閣議決定を強行した第2次安倍政権でふたたび陽の目を見ることになった。近く始まる与党協議で協議の素材となるであろうことは疑いない。

しかし、障害もある。公明党は「あらゆる事態を事前に一般化して法律を作ることはできない」として、派兵恒久法に消極的だ。少なくとも、同党が重視する統一地方選の前に自民党に同法制定で妥協することは困難だ。閣議決定に関して、安倍首相が「限定容認」論を採ることで、公明党の妥協を引き出したが、日米ガイドラインの再改定と同時進行の恒久法で、与党内の矛盾を解決することは容易ではない。

自衛隊海外派兵恒久法はこの国をふたたび戦争の淵に陥れるための稀代の悪法に他ならない。いま、私たちが直面しているのは、この国の前途の歴史的な選択だ。折しも今年は戦後70年。侵略戦争をしなかった時代の終末を迎えるようなことがあってはならない。いまこそ、全ての反戦平和勢力は総がかりで結集して、戦争関連法制の改定と、派兵恒久法の制定を阻止するために闘おう。

(註)内閣官房の資料では次のようになっている(福島みずほさんのメルマガより)

(1)我が国の防衛に直接関連する法制

○武力攻撃事態対処法(2003)

○自衛隊法(防衛出動に関連した規定)

○その他の事態対処法制

○国民保護法(2004)

○特定公共施設利用法(2004)

○米軍行動関連措置法(2004)

○海上輸送規制法(2004)

○捕虜取扱い法(2004)

○国際人道法違反処罰法(2004)

(2)公共の秩序の維持に直接関連する法制

○自衛隊法

○海賊対処法(2009)

(3)周辺事態への対応に関連する法制

○周辺事態安全確保法(1999)

○船舶検査活動法(2000)

○自衛隊法(周辺事態に関連した規定)

(4)国際平和協力等の推進に関連する法制

○国際平和協力法(1992)

○国際緊急援助隊法(1987)(自衛隊は1992の改正以降参加)

○自衛隊法(国際平和協力業務等に関連した規定)

○派遣処遇法(1995)

・(時限法・失効)旧テロ対策特措法(2001-2007)

・(時限法・失効)旧補給支援特措法(2008-2010)

・(時限法・失効)旧イラク人道復興支援特措法(2003-2009)

(「私と憲法」165号所収)

こんな記事もオススメです!

第8話 あなたは、体とお話していますか?

第88回「七五郎沢の森とンドキの森」

北朝鮮は一方的に非核化の約束を破ってきたのか(下)

北朝鮮は一方的に非核化の約束を破ってきたのか(上)