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【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

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平和運動の真価が問われる戦後史的な局面に際して 通常国会への戦争法制上程に反対して全力でたたかおう

2015年4月8日

70年で戦後を終わらせてはならない

2月12日、安倍首相は第189通常国会の施政方針演説で、次のように述べた。

「明治国家の礎を築いた岩倉具視は、近代化が進んだ欧米列強の姿を目の当たりにした後、このように述べています。『日本は小さい国かもしれないが、国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにするならば、世界で活躍する国になることも決して困難ではない』。明治の日本人に出来て、今の日本人に出来ない訳はありません。今こそ、国民と共に、この道を、前に向かって、再び歩み出す時です。皆さん、『戦後以来の大改革』に、力強く踏み出そうではありませんか」。

「戦後以来の(?)大改革」をブチ挙げた安倍首相は、前回の総選挙における自民党のスローガン「日本を取り戻す」「この道しかない」をあらためて掲げた。ここには明治近代の歴史の評価と関連して、極めて危うい安倍晋三の思想、歴史認識が垣間見える。安倍がその第1次政権以来語ってきた「戦後レジームからの脱却」を、ここでは「戦後以来の大改革」と言い換えて、日本国憲法体制の下での「戦後」を否定し、清算して、岡倉天心や吉田松陰の片言隻語までちりばめて、日本の明治国家がたどった、欧米列強に伍して「普通の国」になる道を単純に美化し、これからの日本を欧米列強と同様に、それと伍してグローバルな範囲で「積極的平和主義」を掲げて「戦争をする国」にするという思想に裏打ちされている。

現行憲法体制の下で、日本の軍隊が海外で戦争によって人を殺し、また殺されることがなかった「戦後70年」の歴史は、清算されるべきなのか、肯定されるべきなのか。戦後歴代内閣のなかでも極めて特異な右翼ナショナリズム思想の持ち主である安倍首相がすすめようとしている「戦争のない戦後の清算」を許すのか。安倍首相は有識者懇談会まで動員して8月に出す予定の「70年談話」を「未来志向」の「ポジティブ」な談話にする意向でいる。それは明治近代の一面的礼賛の史観に裏打ちされたものだ。しかし、戦後70年を、1945年を支点にしてコンパスを180度回転させた明治以降の70数年間の日本近代は、実に戦争の歴史だった。日本の近現代史は、大まかに言えば「戦争する国の70年」と「戦争をしない70数年」に分けることができる。「戦争する国」の70年はこの国を1945年の敗戦に導いた。1945年、それはアジア太平洋戦争で日本の軍国主義が2000万に及ぶ人々を殺戮し、国内においては3月10日の東京大空襲に始まった全土空襲、6月の沖縄戦、8月の広島、長崎への原爆投下とつづいた歴史だ。この巨大な犠牲の上に日本は「戦争をしない国」への道を歩みはじめた。施政方針演説に見られる安倍晋三首相の近現代に対する視点は、靖国神社の参拝強行にみられるような、極めてかたくなな、戦争の70年への反省を欠いた一面的な明治以降の歴史の美化であり、それが平和憲法体制に象徴される「戦後」の清算と結合したとき、「戦争をする日本」になるのは間違いないことだ。だからこそ、3月16日の参院予算委員会での自民党・三原じゅん子委員の「八紘一宇」礼賛発言まで飛び出したのだ。

果たして私たちには安倍晋三がいう「この道しかない」のか。「戦後70年」を「戦後80年、90年、100年」につなぐ「もう一つの道はある」のか。

この危険な思想の持ち主である安倍首相の下で、私たちは、あるいは日本社会は歴史的な岐路に立たされていることを確認しなければならない。

戦争法制化のための与党協議の犯罪性

2月13日から「安全保障法制整備に関する与党協議」が毎週金曜日の午前に開くというハイペースで行われ、3月20日、骨格で合意した。この与党協議が大変な勢いで過去数十年にわたり平和憲法の下で積み上げてきた「国民的合意」の諸原則を押しつぶしているに止まらず、昨年7月1日の閣議決定当時の政府側の説明すら突破して、平和憲法を破壊し、海外で武力行使=戦争する国にしようとしているのをみると、戦慄せざるをえない。

この場に政府から提出された諸法制は3月13日現在で以下の通りだ。

周辺事態法改正で新設する事態を「重要影響事態」と仮称(3/13)

集団的自衛権の行使をめぐる新事態(存立事態)の新設(3/6)

他国軍の後方支援の恒久法新設(3/6)

周辺事態の「周辺」を抜く抜本改正(2/20、27)

日本周辺以外での船舶検査(2/20、27)

PKOの武器使用基準の緩和(2/20、27)

海外での自衛隊による邦人救出(2/20、27)

グレーゾーン事態で米軍以外の艦船防護(2/13)

これらのいずれもが従来の「専守防衛」を前提とした自衛隊の活用のあり方を大きく突破するものであり、憲法第9条に照らしてあり得ないものだ。

昨年7月1日、安倍首相は安保法制に関する与党協議会の報告をうけて、集団的自衛権行使の政府解釈の変更についての閣議決定を強行した。今回、約7ヶ月ぶりに開かれた与党協議会はこの「閣議決定の内容を踏まえてその具体化を図る」べく法制化することが目的であり、計6回ほどの会議をひらいて、高村自民党副総裁が3月26日に訪米する前までに全体骨格の合意をとりつけた。このあと、法案の作成作業を経て5月中旬に閣議決定し、戦争関連法制を一括上程し、両院に特別委員会を設置する。政府は法案審議入りすれば衆院80時間以上、参院はその半分程度の審議で強行採決ができると考えている。そのためには6月24日までの通常国会を47日間延長(8月10日まで)を軸に調整を始めており、なんとしてでも今国会で成立をはかりたい意向だ。

先の閣議決定に際しての与党合意づくりにみられたように、安倍政権と与党がやっていることは、こうした憲法の死命を制するほどの重要問題であるにもかかわらず、民意を無視し、国会審議を軽視して与党の密室協議で合意形成をすすめ、その断片をメディアにリークして既成事実化をはかるという政治手法だ。各種の世論調査では、集団的自衛権行使や戦争法制策定への疑問と批判は相当に強い。4月の統一地方選挙を控え、有権者の批判を受け選挙で不利になることを避け、またも姑息な密室協議でことを進めようとしている。

この与党協議で特徴的なことは、先の総選挙の結果を後ろ盾にした安倍政権と自民党の強硬な姿勢であり、安倍政権のブレーキ役を任じてきた公明党の姿勢がグズグズの腰砕けになりつつあることだ。これがほとんど協議の名に値しないと言ってよいほど、政府・自民党ペースですすんだ。ホルムズ海峡での機雷の掃海」や「派兵恒久法」について、公明党は条件付きではあるが容認の方向に転じた。「首相の方針が揺るがないことを踏まえて」のことだという。公明党の幹部からは「安倍首相が断固やる気で来ているので、致し方ない」という愚痴がきかれる。あきれるばかりだ。公明党は昨年の「閣議決定」に際して、安倍政権の暴走に「限定容認」の歯止めをかけたと自画自賛していたし、佐藤優氏や木村草太氏など一部知識人からもそうした声が上がっていたが、最近ではこれが幻想に過ぎなかったことが明らかになりつつある。与党協議の中でまたまた公明党の「下駄の雪」が始まった。

日米安保ガイドラインの再改定の筋書きに沿って

連休中の安倍首相の訪米に先だって、4月下旬、日米の2+2による日米安保ガイドラインの再改定がある。ガイドラインは行政協定であり、国会承認すら必要のない日米間の政策合意にすぎず、本来は現行法の範囲で行われなくてはならないものだ。ところが、実際にはこの対米合意が国会での審議にもとづく国内法整備に優先してすすめられるという転倒が行われている。

1997年の日米ガイドライン改定に際しても国会の審議は、はじめに日米合意ありきだった。これは度し難い国会軽視であり民主主義の破壊行為だ。

いまこの再改定において同様のことが行われようとしている。

昨年10月8日に発表された日米ガイドライン再改定の中間報告は以下のようなものだった。

集団的自衛権行使を容認した昨年7月の閣議決定を反映させることを前提に、日米同盟強化にとどまらず、多国間の軍事協力を打ち出した。そして、「日米同盟のグローバルな(地球規模の)性質」を強調して、自衛隊の海外派兵について地理的制約を全廃する(アジア太平洋地域を想定した「周辺事態」を削除)とともに、「平時から緊急事態まで切れ目のない」協力の確保として「戦闘地域」での米軍支援(戦時の後方支援)や、宇宙及びサイバー空間における協力も可能とする方針を打ち出した。

この間の自公与党協議はまさにこの中間報告の確認事項の線ですすめられている。5月中下旬の法案閣議決定と国会上程に先だって4月末(27日か?)に日米ガイドラインの再改定が行われる。国会審議すら軽視して米国との合意を先行させるこの安倍政権のやり方は許されてよいものではない。

自民党大会の運動方針の異常ぶり

とりわけ3月8日に開かれた自民党大会の運動方針は、従来の自民党のそれと比較しても極端な改憲前のめりの方針となったことは重大だ。

方針は自民党の結党60年の節目にあたり、党是である憲法改正について「改正原案の検討、作成を目指す」と明記し、「改めて胸に刻まねばならないのは、憲法改正を党是として出発した保守政党としての矜持だ」と結党時の精神に戻るよう確認した。その上で改憲国民投票での過半数の賛成に向けて、「日本会議」と桜井よしこらの「美しい日本の憲法をつくる国民会議」の1000万人賛同者運動に同調して「憲法改正賛同者の拡大運動を推進する」とした。靖国神社参拝の継承も盛り込んだ。

首相は党大会で、「戦争に巻き込まれるとか徴兵制が始まるとかいう無責任な批判がある。無責任な批判にたじろぐことなく、やるべきことは毅然とやり遂げる」と述べ、「国際協調主義の下、積極的平和主義の旗を高く掲げ、日本の領土、領空、領海は断固として守り抜く」と演説した。どちらが「無責任」なのか。

安倍政権の4つの致命的弱点

国会の両院で圧倒的多数を占めて、「戦争する国」を目指して暴走している安倍政権であるが、この政権には致命傷となりかねない弱点が4つほどあることを見ておく必要がある。

第1、「世論・民意と乖離した改憲・戦争政策」の問題。これらに関して、ほとんどの世論調査が示す民意のありかは、一貫して安倍政権の進める方向とは真逆だ。先頃発表された内閣世論調査でも3年前の調査と比べ自衛隊の海外活動の拡大を望む声は減っており、4分の1に過ぎなかった。これは政権にとって致命的な問題だ。

第2は「歴史認識」。安倍晋三首相がめざす戦後レジームからの脱却が、第2次大戦の結果としての「戦後レジーム」の破壊ではないかと、欧米諸国が警戒している。とりわけ戦争責任・戦後責任の清算などにたいする安倍政権の敵意ともいえるような対応や、靖国神社参拝などに見られるような歴史認識は中国・韓国など近隣諸国からの反発と警戒を招いている。この歴史認識問題はいま安倍政権が進めている「戦争する国」の道と結合したとき、どのような危険なものになるか、各国の人々は熟知している。第一次安倍政権が崩壊した理由の一つと同様な問題だ。

第3、アベノミクスはすでに行き詰まっており、社会の格差は拡大し、矛盾が累積している。トリクルダウンの理論は幻影にすぎないことが明らかになっている。この破綻の到来の危機は安倍政権に仕掛けられた時限爆弾のように政権を脅かしている。

第4に自公連立政権の抱える矛盾がある。公明党は安倍政権に追従せざるを得ないとはいえ、全く言いなりであれば、党の存立理由が持たない。時には安倍政権の暴走に抵抗するブレーキ役としての存在意義を示すことが必要だ。これまでもさまざまな場面でそうした局面が生じた。安倍自民党は、小選挙区制の下での多数の当選を考えると、この煩わしい公明党を切り捨てることができない。組織力のない維新や、まして次世代などがこの代役を果たすことは不可能なことだ。そうであればこそ、自民党は一定程度公明党に妥協する演技をせざるを得ないのだ。

これらの安倍政権を致命傷に陥れるかも知れない諸条件につけ込み、闘いを大きく組織することができるかどうかが、私たちに問われている。

「オール沖縄」の闘いに学び、総がかりで闘おう

沖縄の辺野古新基地建設に反対する運動は「オール沖縄」の闘いを生み出し、昨年の名護市長選、名護市議選、県知事選、衆議院議員総選挙ではことごとく、新基地建設反対勢力が勝利した。これは長期にわたる沖縄県民の不屈の闘いを基礎にして、保守・革新を問わず「オール沖縄」に結集した闘いの勝利だ。この安倍政権の暴走に反対する大連合の教訓を沖縄だけの「例外」にさせてはならず、全国での闘いのあり方をしめす「先駆」的経験として、本土の私たちは受け止め、学び、運動に生かさなくてはならない。いま、5月、戦争法案一括提出という安倍政権の「戦争する国」への暴走に直面して、まさにこのことが問われている。

この間の闘いにおいて、私たちは昨年12月15日、従来になく広範な「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」という新しい共同闘争組織をつくり出した。

これは連合左派系労組などによる平和フォーラムを軸とした「戦争をさせない1000人委員会」と、旧来の5・3憲法集会実行委員会中心に首都圏の137の諸団体が結集して作った「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」、および全労連などが中心になった「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」の3団体の共同の組織だ。

そして今年の5・3憲法集会は、首都圏では反戦・平和の課題に止まらず原発、貧困、差別などに反対する課題を闘う運動体をより広範に結集して準備されている。

安倍政権の「戦争する国の道」に反対するアジアの人々と連帯しながら、日本の民衆運動が大連合して全力で闘いながら、国会内の安倍政権の暴走に反対するリベラルな勢力の共同を実現し、連携して闘えば、反戦平和の大きなうねりと世論をつくり出し、安倍政権の企ての前に大きく立ちはだかり、阻止することは可能だ。

(許すな!憲法改悪・市民連絡会 高田健)

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