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【NPJ通信・連載記事】ホタルの宿る森からのメッセージ/西原 智昭

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ホタルの宿る森からのメッセージ
第32回「虫さん、こんにちは(その6)」

2015年5月29日

▼皮膚の下に入るノミ

文字通り砂の中に潜んでいるノミ、その名もスナノミ。大きさは1ミリにも満たない。砂地の村や森の基地、キャンプなどを裸足で歩いていると、足の爪の間や柔らかい指の部分に入り込む。はじめは気付かないが、そのうちなんとなく足の裏の違和感に気付く。かゆいが少し痛みを感じるところが見つかる。触ると、その部分はいくらか腫れて固くなっている。さらによく観察するとその中心部に黒っぽい点が見える。それがスナノミだ。その黒い点を中心に腫れているのはスナノミがそこで卵を作りつつあることを示している。

そうなればただちに、カミソリか先の尖ったピンセットなどで上手に切開して、その皮膚の下の塊を卵ごと取り出さなければならない。

先のとがったピンセットでスナノミを取りだすために切開している様子©西原恵美子

先のとがったピンセットでスナノミを取りだすために切開している様子©西原恵美子

足の親指の皮下に入ったスナノミ(黒い点)とその卵(その周りの白い塊)©西原恵美子

足の親指の皮下に入ったスナノミ(黒い点)とその卵(その周りの白い塊)©西原恵美子

放っておくと卵が大きくなり、ある時期になると皮膚を破裂させて卵からスナノミのコドモが出てくる。そうなるとその患部が相当痛くなるだけでなく、その何百というコドモがふたたび広がってしまうということだ。それらがまた、切開したその足の傷口に入る。注意すべきは、切開して塊を取り出すとき、なるべく卵を破壊せずに卵ごと「ポロン」と取り出すことだ。

取り出された中央部のスナノミ(黒い部分)とその卵(直径5ミリほど)©西原恵美子

取り出された中央部のスナノミ(黒い部分)とその卵(直径5ミリほど)©西原恵美子

その方が痛くないのと、その取り出した卵をそのまま火にくべれば、卵からスナノミの無数のコドモが放散するという二次災害も防げるからである。取り出した後の切開した部分は、ただちに消毒液などを塗り早めにその傷口を治すのが肝要である。傷口からまたいつスナノミが入るか知れないからである。

切開した場所を消毒液で手当てした後の様子©西原恵美子

切開した場所を消毒液で手当てした後の様子©西原恵美子

スナノミを防ぐ方法は、村や基地、キャンプでもなるべく靴下や靴をはくこと。そして早期発見。またスナノミがいるとわかれば、キャンプ全体の地面に熱湯をかけ、退散させてしまうことである。

ちなみに、これは水虫とは違う。森の中で川や沼地を歩くことは日常茶飯事で回避できないことだが、そのとき裸足やサンダルで歩いたりすると、線虫が足の皮膚の中に入る。足の裏や甲がみみずばれになることもある。とにかくひじょうにかゆいらしい。どうやら水虫の一種なのだろう。だいぶ個人差があるようで、ぼくは被害に会ったことはないが、人によっては、かゆくて夜も眠れぬときがあるそうだ。

▼ヘソの穴から出てきたような黒い塊

ある日服を着替えているとき、ヘソのあたりに直径ミリくらいの黒い塊を見つけた。まるで、ヘソの穴から何かが出てきたような感じだった。いずれにしても気味が悪い。ところが、ちょっと触るとすぐにころころと転がり、地上に落ちて行った。それをつまみとって、丸いながらもやや平らな部分を観察すると、なんとダニであった。

ダニは何種類もいる。大きさが5ミリくらい大きなものから1ミリにも満たない小さなものまである。森を歩いていると噛みつかれていることがある。

皮膚にかみついた直径ミリのダニ©西原恵美子

皮膚にかみついた直径ミリのダニ©西原恵美子

服の中に入り込み、からだの柔らかい部分に噛みつく。そしてなにも邪魔されなければ腹が一杯になるまで血を吸う。上記のように、ヘソの入り口の柔らかい部分に噛みつき、こちらが気づかないのをいいことに、たらふく血を吸うこともある。滑稽なのは、吸いすぎて、普段は平らに近い体躯が丸い風船のように膨らみ、身動きができなくなるくらいにまでなることだ。そうした場合、放っておいても、「ポロン」とからだから落ちるのである。

血を吸いすぎて身動きのできなくなったダニ(直径5ミリほど)©西原恵美子

血を吸いすぎて身動きのできなくなったダニ(直径5ミリほど)©西原恵美子

噛みつかれた初期のうちに気付いたのなら、爪でひっかくだけで簡単に取れる。しかし少し時期を逃すと、ダニの顎がかなり皮膚の中に食い込んでおり、ピンセットなどで慎重に引っ張ってとらないと、そのまま顎が皮膚の中に残ることがある。そのため除去したあとも、いつまでもかゆみが残る。

ダニに気づくのは、特にからだを洗っているときだ。ごしごし皮膚を洗っていると、なにか皮膚に逆むけがあるような痛みを感じる。繰り返しこすっても取れない。おかしいと思いチェックするとそこにはダニが噛みついており、もう顎でしっかり皮膚をとらえているため、こすっても取れないのだ。それで、仕方なく、ピンセットなどで引っ張り除去する。

それが、数ミリほどのダニならまだいい。視覚的にすぐに確認できるし、ピンセットでも比較的除去しやすい。ひどいのは、一時に数百匹という小さな体長1ミリにも満たないダニに噛まれてしまうことだ。からだを洗っているとき、からだのそこら中がこすったときに痛いのだ。ダニだと確認して、全身からひとつひとつ除去するのは気力の要る作業であることは想像に難くないと思う。

ときには鼻の中にまで入り、その粘膜に噛み付いているときだ。鼻の中に違和感があるのでたいていすぐ気付く。鏡を見ながら先の尖ったピンセットを鼻の中に入れ、摘み取るしかない。最悪は性器やお尻の穴の周辺に噛みつかれたときだ。いずれも柔らかい部分で神経がたくさん通っている場所なので、指であれピンセットであれ、摘み上げるだけで強烈に痛い。さらにそれを除去するには、悲鳴を上げたくなるくらい相当の痛みを伴う。経験しないとわからないかもしれないが、笑いごとではない。

ダニは、通常森の中で樹皮などについておることが多い。たとえばゾウがダニのうっとうしさにこらえきれず、樹木にこすりつけ、ダニを除去しようとし、そのあとにその樹皮にダニが残っているのだ。したがって、森の中ではむやみに樹皮に触れないことである。手だけではない。服もこすりつけないように留意する。あるいは、ゆっくりと確認してから樹木に接触するべきだ。

強調しておきたいのは、スナノミ、そしてダニ対策として、先の尖ったピンセットが熱帯林では必需品であることを忘れないでほしい(続く)。

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