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【NPJ通信・連載記事】ホタルの宿る森からのメッセージ/西原 智昭

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ホタルの宿る森からのメッセージ
第33回「虫さん、こんにちは(その7)」

2015年6月14日

▼日本でもよくご存じのほかの虫たち

蚊については、連載記事第28回で紹介したので、そちらを参考にされたい。

チョウ。刺したり噛んだりはしない。日本で見かけるアゲハチョウやモンシロチョウに似たチョウも多い。しかし日本で感じているようなイメージはない。優雅にひらひら舞うチョウとは純粋に呼びがたい。幾種類ものチョウがいるがどれもが動物の糞尿をなめる。

森の地面に残った動物の尿をなめる様々な種類のチョウ©西原恵美子

森の地面に残った動物の尿をなめる様々な種類のチョウ©西原恵美子

ミツバチと同じだ。吸っているのは花の蜜だけではないのだ。蜜のもとの一部が糞尿であると聞けばショックを受ける人もいるかもしれないが、しかしそれが熱帯林という自然界での事実なのだ。それで、その蜜がまた旨い。

またある季節になると、シジミチョウに似た小型のチョウが大量発生し、基地やキャンプに襲来する。水分が目的のようだ。すでに洗濯はしたがまだ濡れている衣服の干し物にたかる。それが一匹や二匹ではない。たとえば、靴下ひとつに何10匹と集まる。それでみなでチュウチュウ水分を吸っているのだ。あるいは、ヘッドランプのバンド。汗のにおいが染みついており、そこにも群がる。

汗のしみついたヘッドランプの帯に群がるチョウ©西原智昭

汗のしみついたヘッドランプの帯に群がるチョウ©西原智昭

それだけならよい。問題は吸うと同時に、小便もふっかけているようだ。チョウが去ったあと、その衣服やバンドのにおいを嗅ぐと、アンモニア臭い。しかし、特に洗濯物をよく点検してみると、すべてが臭うわけではない。実はチョウにたかられていたのは、きれいに洗っておらず、まだ汗などのにおいが残っていたものだけなのだ。したがって、洗濯物へのチョウの有無は、丁寧に服を洗ったかどうかの指標ともなる。自然界からの貴重なアドバイザーだ。

セミも種類は多い。樹木の高い場所にいるケースが多いので、なかなか直接観察できる機会はないが、現地語で「エレレ」と呼ばれるセミはときに低い位置に止まっているので目にしやすい。大きさは最大5cmくらいで、色は全体的に緑っぽい。

エレレと呼ばれるセミ©西原恵美子

エレレと呼ばれるセミ©西原恵美子

「エレレ」という名の通り、鳴き声がそのように聞こえる。その音は静寂な森の中を響き渡り、ときにはけたましいほどうるさく、あるいは遠くからであれば悲しげに聞こえる。音は大きいが、その音への感傷は日本でいえばヒグラシのようなもの寂しげなものである。エレレは川や沼地の近くに多い。したがって、エレレの声が聞こえれば、それは水場が近いことを知らせている場合が多い。森の中を長期遠征に出かけ、毎夕刻になって一時的なキャンプ地を探しているときに、エレレの声は心強く頼りになるのである。

クワガタも、日本にいるタイプと同じような形と大きさだ。ただカブトムシの類では体長10cmくらいの大型な種類がいる。真っ黒な色に何本か太くて白い線や斑が入り、背中の模様を形成している。

体長10cm近いカブトムシ©西原智昭

体長10cm近いカブトムシ©西原智昭

ゴキブリはもちろんいる。とくに直接われわれの身体に悪さはしない。ただ、基地やキャンプでなにかものを箱に入れて保管しているとき、密閉容器でないとかならずゴキブリに入られてしまう。箱の中はゴキブリだらけになっているだけではなく、そのフンが大量に散らばっている状態となる。もし書類の類であれば紙はフンのしみがついているし、スパゲッティなどの入ったビニール袋であればその表面にもゴキブリのフンがかかっていることになる。熱帯林の環境では物資の適切な管理は必須である。

カマキリは、意外かもしれないが、日本にいるものより体躯の小さな種類が多い。そのほとんどが地味な色のものだが、ハナカマキリと呼ばれるカマキリは、その名の通りカラフルだ。

花に擬態しているハナカマキリ©西原恵美子

花に擬態しているハナカマキリ©西原恵美子

まさに花に擬態している。見かけるのは非常に稀だ。カマキリは人間に対して直接攻撃することはない。問題はその腹の中にいる寄生虫だ。たとえば、なにかの拍子にカマキリを死なせてしまう。すると、腹の中にいた長さ7-8cmの線状の寄生虫が尻の穴からニョロニョロと這い出してくる。この寄生虫が危険だと聞く。うっかりそのままにしていると、われわれの足の中にそのまま入ってしまうことがあるらしい。そうすると足は腫れあがり、猛烈な痛みもあってしばらく歩けなくなるという。

ちなみに昆虫ではないがサソリに刺されても、この寄生虫と同様の症状になるらしい。知っている限り、命に関わるような猛毒のサソリはいないようだ。体長もせいぜい10cm以下。注意していれば刺されることはめったにない。いちばん気をつけなければならないのは、靴の中だ。しばらく靴を脱いでいると、その中に潜み込むことがある。それを知らずうっかり靴を履くと踏んづけてしまう結果となり、反撃に出るサソリは足を刺してしまうというわけだ。朝、靴を履く前に靴の中を点検することは重要なことである。ぼくも一度点検せず靴を履いた。そうしたら靴の底の方に異物を感じる。あわてて靴を脱ぎ捨てる。中のものをトントンと出す。サソリだった。危機一髪。

これまた昆虫(節足動物)ではないが、タランチュラのような毒をもった大型のクモは何種類かいる。しかしめったに刺されることはない。ごく稀に基地やキャンプに出没して大騒ぎになるが、たいてい森の先住民たちが木の枝などで除去してくれる。ただ万が一足などを刺されると、カマキリの寄生虫やサソリのケースのように、その場所はひどく膨れるらしい。

このほか日本語でユウレイグモといわれる興味深いクモの種類がいる。そのクモの巣は通常の円形ではなくて、おおきなカーテン状のようなものだ。ふつうのクモの巣は同心円状で、クモはその中心部に通常単独で一匹しかいない。しかしこのカーテン状のクモの巣には何匹ものクモがいる。一匹一匹は5ミリくらいの小さなクモだが、一度獲物がかかれば集団で攻撃しその獲物を取り押さえてしまう。いわば集団協力体制型の社会性クモなのである。そのクモの巣はレース状に、数メートル、場合によっては10メートルほどに渡り、小さな潅木全体を覆っていることがある。

 

特に雨のあと光の当たり具合がいいと、クモの巣のカーテンにちりばめられた小さな雨粒がひとつひとつ輝き、それはまるでクリスマスツリーのように見える。あるいは、まるで、木にホタルが宿っているようなのだ(続く)。

ユウレイグモのレース状の巣©西原恵美子

ユウレイグモのレース状の巣©西原恵美子

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