【NPJ通信・連載記事】ホタルの宿る森からのメッセージ/西原 智昭
連載「ホタルの宿る森からのメッセージ」第34回「虫さん、こんにちは(最終回)」
まだまだ幾多の種類の興味深い昆虫や小動物がいる。この連載記事ですべて網羅できないのが残念である。しかし、意外と思われるかもしれないが、多くの種類は地味な色で、目立たない。巨大なものや、突飛な形のものも稀である。
概して、アフリカ熱帯林地域の昆虫は知られていないことが多い。調べれば新種だけでなく、興味深い行動など、次々と面白い事実が発見されることは間違いない。これからの調査研究を待つしかない。
以下では、写真を中心に、特徴豊かな、実には稀な昆虫や小動物を紹介する。
虫で面白いのは、森の先住民による虫への名前の付け方だ。ハチとかアリには多くの種類にそれぞれ名前がつけられている。これは仮に食用でなくても日常生活で深く関わっているからであろう。その一方、チョウやカマキリなどには日本語のような細かな種類分けをしていない。チョウはどれもチョウ(現地語名カンゴンゴ)だし、カマキリはカマキリ(現地語名ボンゴンビ)だ。きっと彼らには、日常生活上、強い関心の対象ではないと思われる。日本人のような虫に対する情緒みたいのはないのかもしれない。
これだけいろいろな虫と長年付き合ってくると、彼らの習性や動きも予想がついてくる。そのうち友好的に関わり合おうという気持ちにすらなる。いくらこちらが不愉快な思いをして、仮に怒ったりしても、事態は何も変わらない。いくらうっとうしいと思っても彼らの数が大幅に減ることは決してない。彼らに攻撃される原因はこうした場所に侵入してきたこちら側にあるのだ。それで気持ちをおおらかにするしかないと悟るしかない。気にしなければよいのだ。下手に反抗すれば、相手も怒りの度を増してくるのか、友軍を連れてくる。それでもっとやっかいなことになるのだ。そのときもしそれがイヤなら、われわれが森での仕事を辞めて去ればいい。あるいは、虫を嫌がる人には去ったほうがよいですよ、と勧めるしかない。
そこで「虫さん、こんにちは」という。そして「どうぞゆっくりと汗をなめてください」、「血くらいなら吸ってもいいですよ」と自分に言い聞かせ、虫がぼくの皮膚から立ち去るのをゆっくり待てばいい。必要なのは、少しぐらいの痛さやかゆさ、不愉快さを我慢すること。それで相手も満足だし、こちらももっとひどい目に会わずに済む(この項、終わり)。
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