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【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

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戦争法案廃案、安倍政権倒せの100日闘争を
たたかいぬく決意をかため、行動しよう

2015年7月6日

<国会会期の大幅延長>

6月22日、衆議院本会議で安倍政権と与党は戦争法案の成立をめざして今国会の会期を9月27日までという異例の大幅延長することを決めた。

本来、この第189通常国会は6月24日が会期末だった。安倍政権はこの国会で昨年7月1日に閣議決定で強行した集団的自衛権の憲法解釈の変更にもとづく戦争法制2法案を成立させようとしている。この戦争法案は海外で「戦争をしない国」の原則を貫いてきたこの国の戦後史を大きく転換するものであり、憲法の平和主義に根本から反し、日本を「戦争する国」に変質させようとする、稀代の悪法だ。

安倍首相は先般の訪米の際の米国上下院の演説で、この法案を「夏までに成立させる」と誓約し、戦争法の成立を急いだ。当初、与党は会期中の法案成立の困難性を前提に、遅くとも8月上旬まで国会会期を延長し、法案の成立を企てた。8月15日にはその内容に関してすでに問題になっている首相の「戦後70年談話」が出される予定であり、これをまたいで国会が開催されていれば、「70年談話」そのものが国会での重要問題となることは不可避であり、世論は沸騰する。それ以前に国会を閉じたいという願望からだった。

しかし、国会審議の過程で安倍政権が集団的自衛権の解釈変更を強行したことの説明責任を全く果たしていないばかりか、国会論戦の中では議論に正面から答えず、問題のはぐらかしに終始し、あげくは安倍首相自身が民主党の辻元議員の質疑中に汚いヤジをとばしたことなどで、特別委員会の審議は再三中断する事態を招いた。加えて年金の個人情報の大量流出問題まで発生した。

さらに、6月4日の衆院憲法審査会では与党が招いた長谷部参考人を含め、3名の憲法学者がそろって、昨年の閣議決定と与党提出の戦争法案(安保法案)が憲法違反であると指摘するという事件が起きた。政府・与党は「憲法学者は憲法の字句にこだわっており、政治がわからない。政治を進めるのはわれわれだ」などと、傲慢な弁明と防戦に努めたが、かえって逆効果となり、世論は急速に「政府の説明不十分。今国会で採決をするべきではない」との声を増大させた。200人を超える憲法学者からは同法案が違憲であるという声明が発表され、続いて5000名を超える学者・研究者からも法案反対の声明が出され、さらに日弁連が全国総会で「安全保障法制等の法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための宣言」を発表するなど、反対の声は急速に広がった。また山崎拓氏など元自民党の長老ら4名が日本記者クラブで会見し、安倍政権を公然と批判する動きも出た。

地方議会での戦争法案「反対」「慎重審議」などを求める決議は71議会(6月19日現在)に及んでいる。国会内の野党も民主党、共産党、社民党、生活の党などが反対を強め、国会外の法案反対運動との連携を強めた。

6月中旬のNNN世論調査では、内閣支持率も41.1%、不支持率39.3%とその差1.8%にまで接近した。法案の「廃案」と「今国会成立にこだわらない」を加えると、80%を超える割合となった。

6月下旬の共同通信社世論調査では「法案」が「憲法に違反している」との回答は56・7%、「違反しているとは思わない」は29・2%。法案に「反対」は58・7%で、5月の前回調査から11・1ポイント上昇。「賛成」は27・8%。安倍内閣の支持率は47・4%で、5月の前回調査から2・5ポイント減。不支持率は43・0%。

世論は確実に変化している。

とうとう与党は9月末まで国会を延長するという異例の措置にでた。

この9月末までの異例の会期の大幅延長措置は、安倍政権の必死の策動を示すもので、「説明不十分」という世論に対応して審議期間を大幅延長したというポーズでごまかし、衆議院で強行採決という突破作戦に出てもその後の参院での審議が非常に困難になることを想定し、もしも参院で結論が出ない場合、憲法59条の規定を使って参議院「否決」とみなして、衆議院であらためて3分の2で再議決すれば法案は成立するという措置をも計算に入れてのことだ。

この間の経過から明らかなことは、国会内外が呼応したたたかいのたかまりが、安倍政権をここまで追いつめたということだ。

8月は日本では伝統的に反戦運動の夏だ。これは、ともすれば「8月だけの反戦運動」と揶揄されてきたが、8月はヒロシマ・ナガサキの反核のたたかいや8月15日の戦争終結との関係での不戦の意志を確認するためのメモリアル・デーが相次ぐ季節だ。安倍首相はこれを知ってか、知らずしてか、8月を大幅に超える会期延長を決めた。

「戦争法案」に反対する運動にとっては法案を廃案に追い込み、安倍政権を追いつめる絶好のチャンスが到来した。

<戦争法案廃案をめざす大衆運動の高揚>

昨年末に結成された「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」を軸にした戦争法案反対の運動は、この間、急速に高まってきた。横浜での5・3憲法集会の大成功を機に、豪雨の中での5・12日比谷野外音楽堂での集会とデモ、6・14国会包囲行動、毎週木曜の連続国会前集会、15日からの国会前連続座り込み行動と議員に対するロビーイング、傍聴闘争、街頭宣伝などなど運動は多様に、継続してたたかわれた。これ以外にも5月24日の辺野古新基地反対の国会包囲行動、6月20日の「女の平和」国会包囲行動、学生の皆さんの金曜行動など、多様な運動が展開された。そしてこれらの運動に全国各地の運動が呼応し、連帯してたたかった。

いま、安倍政権の国会会期延長、衆議院強行採決の動きを前に、総がかり行動実行委員会はいっそう闘争態勢を強め、6月24日の数万人規模の国会包囲行動、座り込みの継続、木曜行動の計画などをすすめながら、7月14日(火)の日比谷野外音楽堂での集会とデモ、26日(日)の国会包囲行動、28日(火)日比谷野外音楽堂集会とデモなどの主な行動を計画している。加えて鳥越俊太郎さんら著名人が呼びかけた7月18日(土)の「アベ政治を許さない」全国一斉行動の提唱もある。当面、総がかり行動実行委員会は毎週火曜日の全国一斉街頭宣伝や、国会議員への要請行動、再度の新聞広告など、多様な運動を展開する予定でいる。

総がかり行動実行委員会の呼びかける統一行動は、全国各地で共同の動きをすすめさせ、たたかう人びとに希望を与えている。

これら連帯の輪の拡大が、国会内での野党の結束したたたかいと結びつくときに、戦争法案廃案の希望が生まれるのではないか。

<国会論戦での安倍政権の破綻>

この国会での戦争法案をめぐる与野党の論戦は、6月4日の憲法審査会での論議を境目に「潮目」が変わったと行ってよい。

政府は5月中旬以降、膨大な10本もの戦争関連法制を「戦争法制整備法」として一括法案とし、海外派兵恒久法を新法の「国際戦争支援法」として、2本の戦争法案で提出し、国会審議にかけてきたが、議論は再度、昨年の集団的自衛権に関する憲法解釈の変更を強行した閣議決定そのものが憲法違反なのだという、振り出しに戻された。3人の憲法学者に「違憲」と指摘された政府が、その弁明のために持ちだしたのが、またぞろ1959年の最高裁の砂川判決と1972年の「政府見解」だった。この議論はすでに各方面から論駁されて、陳腐なものとなっている代物だが、ここに来て政府が改めてこの2つを持ち出したこと自体が、安倍政権の手詰まりを示している。

「砂川判決」は学会や当時の弁護団など各方面からも厳しく指摘されているように(本誌に内田雅敏弁護士の「砂川判決Q&A」を掲載した)、この判決は「集団的自衛権の合否を争ったものでは全くなく、これをもって政府が集団的自衛権行使の合憲論の根拠とするのは完全に誤りだ。

「1972年政府見解」は日本国憲法のもとで集団的自衛権行使は出来ないと説明したものであり、これを集団的自衛権行使の容認の根拠とする安倍政権の説明は「あまりにひどい議論が行われている。(過去の)政府見解をつぎはぎし、こじつけている」(第一次安倍内閣での宮崎礼壹元内閣法制局長官)と言われるほどのものだ。集団的自衛権の行使は許されないとするこの「政府見解」を、安倍政権は「見解の基本的論理を維持する」といいながら、文章を恣意的につぎはぎして、「わが国をとりまく安全保障環境の変化」を理由にして「集団的自衛権の限定的行使は許される」と、全く逆の結論を導き出した。これは全くの牽強付会だ。中国、韓国、朝鮮などに対する嫌悪のナショナリズムの感情を煽り立てながら、「安全保障環境の変化」という錦の御旗、徳川印の印籠で、「違憲」を「合憲」にすり替える手口はとうてい認められるものではない。

東京新聞の半田滋記者は21日付の同紙で以下のように指摘している。

「2007年の第一次政権当時も『安全保障環境の悪化』を主張していました。それほどの危機ならなぜ、その後の首相たちは無視したのか。安倍氏が首相のときだけ、毎回、日本は危機に陥るのです」と。これは痛烈な皮肉だ。「(安倍首相は領空侵犯に対する空自機のスクランブルが10年前の7倍に増えたと言うが、943回だ)、冷戦期の84年には944回あり、当時800回、900回を超えるのは珍しくありませんでした」「(防衛白書を比べてみても)冷戦期のほうが緊迫していたという見方」だ、と。

安倍政権の論理はすでに破綻している。肝心のところでの歴史の偽造は明白だ。街頭をはじめ、あらゆる可能な場所でさらに徹底して暴露し、たたかっていこう。

<全力で、たたかおう>

文字どおり正念場がきた。

6月18日、作家の瀬戸内寂聴さんが総がかり行動実行委員会の国会前木曜行動に参加してこういった。「また戦争がいまにもはじまりそうな気配になってきている。いまの日本の状況は昭和16、7年ごろの雰囲気だ。……(今の日本も)表向きは平和だが、すぐ後ろの方に軍靴の音が続々と聞こえている。そういう危険な感じがする」と。

この戦争法案を廃案に追い込み、安倍政権を打ち倒すことは、いまを生きる人間の歴史的使命ではないだろうか。

なりふり構わず3ヶ月という異例の長期延長を決めた安倍政権の思惑を打ち砕き、延長に踏み切ったことを後悔させるようなたたかいをつくりだそう。

いまから、戦争法案廃案、安倍政権倒せの約100日の長期連続闘争になる。千載に悔いを残さないよう、全力でたたかおう。(許すな!憲法改悪・市民連絡会 高田健)

 

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