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辺野古移設の合理的理由は存在しない
新外交イニシアティブが名護市でシンポ

寄稿:NPJ編集部 田場暁生

2014年1月17日

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2014年1月10日、 沖縄県名護市・市民会館大ホールでシンポジウム 「普天間基地返還と辺野古移設を改めて考える」 が開催された。 主催は、シンクタンク・新外交イニシアティブ(ND/New Diplomacy Initiative)

柳澤協二ND理事(元内閣官房副長官補・元防衛庁官房長)の基調講演に続いて、柳澤氏、稲嶺進氏(名護市長)、 仲里利信氏(元沖縄県議会議長・元自民党沖縄県本部顧問)、 前泊博盛氏(沖縄国際大学教授・前琉球新報論説委員長)らによるパネルディスカッションが行われた。 コーディネーターは猿田佐世弁護士(ND事務局長)。 シンポでは、抑止力論、交付金や日米地位協定の問題、辺野古移設に関する名護市長の権限等多角的な論点について議論がなされた。

2013年12月27日、仲井眞弘多沖縄県知事による辺野古埋め立て申請の承認を受けての開催であったとのこともあり、 約 1200人(主催者発表)の参加で立ち見も出るなど関心の高さがうかがえた。

冒頭の基調講演で、日本政府の安全保障政策を担当していた防衛省出身の柳澤氏は、 「抑止力維持のために沖縄に海兵隊が必要である」 とする日本政府の主張は、軍事的合理性を有しないと指摘した。

柳澤氏は、2010年以降アメリカの戦略は、アジアは重視するが兵力は集中しないというものであり、 沖縄への米軍基地の集中はアメリカにとっても合理的でないという状況が現れている、 この十数年の間にアメリカの軍事戦略は変化しているにもかかわらず、日本政府は抑止力として米軍基地が重要だ、 との説明のみしかしていない、と述べた。

 

続けて、柳澤氏は、「脅威があるから抑止力が必要」 という従来の考え方は、冷戦後の今、もはや成り立たない、 抑止というのは正面衝突を避けるためにお互いブレーキを踏むという論理であるが、現代において国家間などにおいて摩擦はあるものの、 相手を滅ぼさなければ自分の存在が脅かされる、というような脅威はもうほとんどない、と論じた。 そして、少なくとも米中の間にその関係はなく、アメリカが海兵隊を中国との間に投入するということはありえない、と指摘した。

さらに、柳澤氏は、在沖海兵隊は、中国の短距離ミサイルの射程に入っており、中国に近すぎて中国に対する抑止力とはならない、 アメリカの当局者は沖縄の海兵隊は中国のミサイル3発で全滅するという認識を持っており、 米軍はむしろ、グアムやダーウィン(オーストラリア北部)などその射程外に出ようとしている、と述べた。

加えて、柳澤氏は、「県外移設の軍事的条件は、既にある県民の利益のためにそれを実現するのが政治の役割である」 と語った上で、 「普天間ならダメだけど辺野古ならいいのか。より抵抗が少ないところ、より人が少ないところにやっかいな問題を集中させるサイクルを止めない限り、 沖縄は基地の中で暮らしていかなければならない矛盾から抜け出せない」 と指摘した。

続けて、ワシントンDCのマイク・モチヅキND理事(ジョージ・ワシントン大学教授)からビデオ・メッセージが寄せられた。
モチヅキ氏は、仲井眞知事の辺野古埋立て申請承認にもかかわらず、 「辺野古埋め立ては反対意見があるうえに、土砂の運搬など埋め立てについての技術上の問題も多く、困難だ。」、 「米軍にとってこれから、アジア太平洋地域における安全保障の責任遂行という観点から、 埋め立てによるV字型の航空基地はますます必要ないと見なされるようになる。」、 「長期的には、海兵隊員のほとんどはグアム、ハワイ、米国本土といった場所に配備されていくことになる。 そこから沖縄やアジア太平洋地域の他の戦略的地点に行けばいいため、沖縄に本格的な恒久基地を置く必要はない。」 と指摘した。

パネルディスカッションでは、前泊氏が、沖縄振興予算は、 地方財源の少ないところへ再分配することになっている交付金というシステムの中で他の都道府県と同じように受け取ることができるお金である、 と説明し 「沖縄だけは言うことを聞かないともらえない。なぜ沖縄だけが恫喝されなければならないのか。」 と述べた。

続けて、仲井眞知事が基地と引換に3400億円の予算を手に入れたということが言われているが、1997年は4700億円であったこと、 そのときには沖縄が一番基地移設に反対したからこの数字がついた、その後右肩下がりで落ちていたが、 仲井眞知事が県内は無理だと主張したときから金額があがった、と論じた。 他方、知事が作った基地の跡地利用についての調査報告書では基地返還の経済的効果は1兆円であったことを指摘した。

2013年12月、辺野古移設に反対して、自民党沖縄県連顧問を辞任した仲里氏は、「辺野古に基地が作られてしまうと、沖縄が今後も要塞とされてしまう。」 との危惧感を表明した。また、地位協定の問題について、「これまで何度も抜本的な改定を訴えてきたにもかかわらず、何も変わっていない。」 と語った上で、 「日本は主権国家として、日本の憲法を適用するという姿勢でなければならない。」 と述べた。

さらに、「移設を強行しようものならオール沖縄でもっと大きな動きが出てくると思う。そういう時にはその先頭に立っている。」 と決意を述べたうえ、 「オスプレイの飛ぶところに観光客は来ない。キャンプシュワブを撤去し、多様性の海を返してもらい、2万人の雇用を生むところにしたい。」 と語った。

仲井眞知事の承認に対する怒りからであろうか、 「知事を追い込んだ」 日本政府に対する憤りからであろうか、冬であることを忘れるほどの熱気が会場を覆い、 登壇者の言葉を聞きもらすまいとの参加者の意欲が伝わってくるシンポジウムであった。

昨年末、仲井眞知事は、安倍晋三首相との会談において、何ら具体的担保のない 「条件」 などと引き換えに、辺野古埋立て申請を承認し、 「良い正月になる」 などと述べた。しかし、多くの沖縄県民は屈辱を味わい、やるせない思いで正月を過ごしたに違いない。

辺野古移設については数多くの問題が残っている。シンポ終了後、時を置かずして、 沖縄県議会で仲井眞知事の辞職を求める決議が賛成多数で可決された。1月15日、承認の取消しや承認の執行停止を求める裁判も提起された。 普天間基地返還と辺野古移設の問題はまだまだ終わらない。

*柳澤ND理事の沖縄タイムス論壇 「普天間撤去 原点に戻ろう」 論文
*ND事務局長猿田佐世弁護士の琉球新報論壇
「広がる辺野古移設不同意 埋め立て承認と米国の変化を考える」 論文

を紹介する。

 

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